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20 魔法ガールズトーク

 むつきが私のパジャマを着て部屋にいる。濡れた長い黒髪が、なんか色っぽい。

 彼女が食卓で泣き出したときには焦ったが、まぁ彼女にも色々と事情があるのだろう。その後、むつきが一人暮らししてるって聞いた私の母上が張り切って、なんやかんやでむつきを泊めることに成功した。ありがとう、母上。あと弟も喜んでた。モテ期の来ない弟よ、お前にむつきはやらんから安心しろ。


「別に気にしなくてよかったのに。湯船にざぱって入っちゃえば」

「いえ、そういうわけにもいかないわ。私はあなたに甘えすぎた」


 むつきはシャワーだけ浴びて上がってきたらしい。本人はしきりに腐った体を気にしているが、別に私は気にしないのに。


「ねぇ。見ず知らずの私にどうしてここまでするの?」


 むつきがこちらをじっと見つめて聞いてきた。馬鹿なことを聞く子だ。私はニヤリと笑ってこう返した。


「私が優しさや親切、ましてや同情心でこんなことしてると思う?」

「……違うの?」


 むつきが首をかしげる。やだ。答えてやらない。


「それより、むつき。私たち、お互いのことを知らないでしょ? まずは自己紹介から始めようじゃない」


 私はむつきにカルピスを出した。さぁ、ガールズトーク……否、魔法ガールズトークの始まりだ。うん、なんか黒いマリモが混じってるけど。


 ーーーーーーーーーーーーー



「私は佐藤良子。見てのとおり、一般家庭の平凡な女子高生よ」

「ねぇよしこ。平凡って何かな? 君の奇行を見てるとその概念がわからなくなるんだ。あ、ボクは神獣のクロモだよ」

「こいつの言動は人をイライラさせるけど、気にしないでね」


 むつきがクロモをじっと見つめて言う。


「クロモ……そう。あなたに聞きたいことがあるわ。何が目的で動いてるの?」

「世界を……平和にしたい……とかどう?」


 なんで疑問系? 実際そんなことこれっぽっちも考えてないだろうが、性悪神獣め。


「むつき、こいつはまともに答える気はないわ。今までもそうだった」

「そう。まぁそうね」


 なんか納得したっぽい。


「ボクも君に質問があるんだけど……どうして魔法少女なのに神獣を連れてないの?」


 クロモの質問にむつきが口ごもった。私はそもそも他の魔法少女を見たことないので、神獣がいないことに疑問を持ってなかったけど、いないと何かまずいのだろうか?

 いまいち分かってない私に、クロモが説明を始める。


「よしこ、神獣のいない魔法少女ってのは二通りあるんだ。元々神獣なしで魔法を使える特別な人間であるか、もしくは神獣の力を奪ったか」


 へー、神獣無しで魔法を使える人間もあるんだ。むつきは答えない。クロモは続ける。


「ねぇ、あれだけの魔法を使える魔法少女なんてボクは見たことがない。とても人間が独力で辿りつけるレベルじゃない。むつき……キミは『神獣喰らい』でしょ?」


 え?神獣って食べれるの?


「……私には言えることは少ない。この体になったのは、私自身も分かってないことは多い。でも、元は普通の人間だったことは確か」


 むつきは言葉を選びながら言っている印象だった。何かトラウマでもあるのかな? この件についてはあまり聞き出せそうにないね。

 ま、聞きたいことはたくさんある。別の質問に変えよう。


「ねぇ、空間魔法ってどんなことが出来るの?」

「……私ができるのは、空間を切ったり歪めたり、空間を移動したりできるわ」


 なるほど。便利な魔法だ。まごうことなきチート魔法である。


「ねぇ、私につかまれてたとき、移動して逃げなかったのは、私を巻き込んじゃうから?」

「……やっぱり分かっててやってたわけね。正解よ。つかまれた状態だと、あなたごと移動してしまうか……あなたの腕の先だけ移動してしまうか」


 こわ!腕もげるってこと!?空間魔法こわ!


「あのさ……むつきちゃんは私の魔法って何なのか分かる?私って特に魔法を使ってる実感ないんだけど……」


 私の戦い方はステッキで殴るだけの原始的な戦いだ。我ながら、とても魔法少女とは思えない。でもむつきは私が魔法を使ってるって言ってた。


「悪魔を倒すのは相応の力が必要よ。ただステッキで殴るだけで倒せるのは……恐らく強力な強化魔法ね。それがステッキだけでなく全身にかかっている」

「えと、全身に?」

「でないと、悪魔の攻撃をステッキが受けたときにあなた自身にもダメージが行ってるはず」

「ふむ、なるほど……」


 確かに受けたときに全く反動がないからなぁ。


「ねぇねぇ、よしこが他の魔法を使えないのは何でだと思う?」

「おそらくその魔法1つに全てのリソースを使っている」

「なるほど、使えないな……」


 うんうんとうなづくクロモ。ちょっと待て。私はこれからも撲殺スタイル決定なのか?


「しかし解せないな……強化魔法ならボクにも感知できるんだけど何も感じたことないや。もしかして、なんか特殊なやつ?」

「そうね……魔法については判らないことが多いから。それに、私はそういうことを聞ける人もいなかった。だから私はこの町に来たの」

「ん? この町に何かあるの?」

「……魔王ブラックモアという存在を知ってるかしら?」


 魔王ブラックモア。その言葉を聞いたとき、クロモは明らかにビクッと反応した。何か知ってるのか、こいつ。


「……この呼称は一般的では無かったわね。でも当時は世界中の多くの人がこの存在を知っていた。15年前、世界中の人々を恐怖に陥れた存在。世界に滅びをもたらす大悪魔。またの名を……」


 一呼吸置き、むつきは言った。


「恐怖の大王アンゴルモア」

え?恐怖の大王の予言は17年前だって?

そこは作中が2014年設定だと思っててもいいし、恐怖の大王2001年説を信じてもいい。

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