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19 むつきの気持ち

 どうしてこうなったのだろうか。

 私は魔法少女シュガー……本名 佐藤良子に無理矢理連れて来られて、彼女の家で夕食を食べることとなった。


 本当はしばらく彼女を陰ながら手助けするつもりであって、あのとき接触する予定じゃなかった。どうせ、会ってもこの半身が腐ったような体では、怖がられると思っていた。

 ……結論。彼女はいきなりタックルをしてきてそのまま私をマウントポジションに持ち込んだ。あんなの予想できないし、意味がわからない。あのとき偶然、異空間で鉢合わせしたのが運のつきだったとでも言うのだろうか。


 良子は私が人間じゃないと分かったあとも、全く怖がらずに、むしろ励ましてくれた。ゾンビでもいい、と肯定してくれた。……うん、確かにゾンビみたいなものなんだけど、そこまでハッキリ言われるとちょっとへこむ。

 その後も彼女は私に逃げないように何度も念押しし、私の手をつかんで離さなかった。……多分ばれてるんだと思う。私の空間魔法にはワープする魔法があるということと、そのワープ魔法では接触したものも一緒に移動してしまうこと。おかげで彼女につかまれてる間は逃げられなかった。


 そして私はそのまま良子の家にお邪魔することになった。来なければ私の写真をツイッターで拡散すると脅されたので、逃げられなかった。どうしてそこまで私に執着するんだろう。ちょっと怖い。こんな……化け物みたいな私に。


 今、食卓には4人座っていた。良子と、良子のお母さんと、良子の弟のリュータくん、そして……私。どこにでもある一般家庭の食卓に、一人だけ私みたいな化け物が混じっている。場違いだ。私はここにいていい存在じゃない。

 そう思ってると良子がこちらをじーっと見てることに気付いた。


「ん? どうしたのむつきちゃん。食べないの? それともあーんしてほしい?」


 良子はにっこり笑い、また臆病な私の逃げ道をふさいだ。本当にいい性格をしていると思う。


「た、食べるから! いただきますっ!」


 私はハンバーグをぶすっと箸でさした。肉汁がじゅわっと溢れてくる。そのまま箸で肉片を切りだし、デミグラスソースをからめて口に運ぶ。

 ハンバーグはとても柔らかくて、噛むとじわ~っと口の中で熱が広がってきた。・・・あたたかい。とても……おいしい。


「ど、どうしたの!? 何かキライなもの入ってた!?」


 良子がこちらを見て慌てふためいている。いつのまにか、頬を何か熱いものが流れていた。これは……涙? この体になって、もう冷たい涙しか流れないと思っていた。そっか……あたたかい気持ちで泣くときは……涙もあたたかいんだ。死んだ体でもまだ、こんな涙で泣けるんだ。


「大丈夫……ただ……おいしくて……こんなあたたかいものを食べたの、ほんと久しぶりで」


 大丈夫だよって笑おうとしたけど、出来なかった。今まで我慢していたものが……人のあたたかさに触れてぷつりと切れてしまったかのように……涙が溢れて止まらなかった。私は本当に泣き虫だ。

 良子も、良子の母さんも、弟くんも、泣いてる私に何も声をかけずに、ただ泣き止むのを待っていてくれた。


 良子……私は彼女に伝えなければならないことがある。だが、伝えた瞬間、彼女の日常が壊れてしまうような気がして、いままで逃げ回っていた。

 いずれは話さなきゃいけないこと。……でも、今はまだ早い。まだ、話せない。

 いつか全てが終わる……そのときまで……もう少しだけ、この世界にいてもいいですか?

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