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18 三角帽子、お持ち帰り

 悪魔を倒した私たちは、無事デビルエレメントを回収し、これから帰るところだった。


「……うん、今から帰るから。それでね、母さん。晩御飯一人分増やすことできない?……うん……うん。そう、友達。とてもいい子だから母さんも気に入ると思う。それじゃあね」


 私は電話をぷっつんと切ると、三角帽子のゾンビっ子ことむつきに向き直り、がしっとその肩をつかんだ。


「え、あの、シュガー。今の電話は……」


 戸惑うむつきに、私は最上級の笑顔で言い放った。


「喜びなさいむつきちゃん。あなたを我が家に招待することが決定したわ!」

「え、えええええええええええ!?」


 夕方の校舎にむつきの絶叫が響き渡った。


 ーーーーーーーーーーーーーー


「ただいまー」

「おかえりー」


 リビングから母さんの声が響いた。我が家において「ただいま」と「おかえり」は絶対のルール。どんなに暗い気分でもただいまを言わなければならないし、相手が遠かったり2階にいたりするときは、聞こえる音量でただいまを言わなければならない。

 ああ、それにしてもなんと気分のいい「ただいま」なのだろうか。いつもの一人で帰って言うただいまではない。私のすぐ後ろには魔法少女のゾンビっ子がいる。それだけでとても気分がいい。母上!私は友達を持って帰ったよ!


「お、お邪魔します……」


 遠慮しがちにむつきが言う。彼女をここまで連れてくるのは大変だった。その苦労した会話の詳細を、脳内再生するとこんな感じ。


『しょ、正気とは思えないわ!私みたいな化け物を……』

『私はいたって正気よ』

『ご家族の方にも迷惑を……』

『うちの母ならむしろ大喜びね』

『えと、腐ってるし、臭いし……』

『皮膚病と言い張れば大丈夫。あ、お風呂も入る?』

『お、お風呂……そうじゃなくて!その……』

『あ、今日はハンバーグだって』

『は、ハンバーグ……いや、でも……』

『何?他に問題でも?』

『えと、腐ってるし……』

『それはさっき聞いた。あのね、バイオハザードみたいなドロドロの腐り方だったら私も少しは躊躇するわよ。でも貴方のは黒ずんで壊死してるだけじゃない。そこまで汚いとは感じないわよ。それに体の左半分は腐ってないし、美人だと思う』

『び、美人?あの……でも……』

『あんまりぐだぐだ言うと貴方の写真ツイッターに載せて拡散させるわよ。空間斬(くうかんざん)ってしてるところのカッコイイ写真』

『い、いつの間に!?わ、分かった……行くから拡散はやめて……』


 ……うん、最後脅しが入ってたわ。ちょっと悪いことしたかもね。

 あ、写真撮ったのは嘘ね。そもそもあのとき後ろにいたから撮れても後ろ姿しか撮れないし。でもむつきはあっさり騙されてくれた。

 それでも逃げない保証はないので、家に着くまで手をつないで帰った。それで何となく分かったんだけど、この子のチートとも思える空間魔法には致命的な弱点があるんだと思う。そうじゃなければ、そもそもマウントポジション取って押し倒したときにあっさり抜けてるはずだし。


 リビングに行くと母上が気合いの入ったディナーを用意してた。ハンバーグ、ポテトサラダ、コンソメスープ、アスパラのベーコン巻き……おいおい、私の好物ばかりじゃないか。むつきの分もちゃんとある。連絡してから30分くらいしか経ってないし、元々多く作ってたのか、父親の分が犠牲になったのか……


「あなたが良子のお友達?すごい綺麗な子ね!」


 母は私が友達を招いたことで大喜びの模様。ふっふっふ、美人さんだろう、うちのむつきは。体の右半分がちょっと腐ってるけど、いい感じの黒髪美人なのだよ。


「その帽子と黒いマントもとても似合ってるわ。魔女っ子のコスプレ?」

「えと、あの」

「コスプレよ。可愛いでしょう?理解力のある母上でとても助かる」


 うん、また明らかになった新事実なんだが、なんとむつきは変身状態を解除できないらしい。クロモの言ってた「人間としては死んでいる」とはそういうことだったのだ。一応魔法少女状態でも着替えは可能らしいが、魔法少女の服は洗濯がいらないし、破れたら再生するので、むつきは普段着として使っているらしい。実に合理的である。

 とはいえ、帰り道に人目につく場所を魔法少女の姿で私と手をつないで帰ったのはかなり恥ずかしかったらしい。しきりにきょろきょろそわそわして落ち着きがなかった。あ、ちなみに私は変身解除している。恥ずかしいし。


「ささ、今晩御飯出来たから冷めないうちに頂いちゃって。あ、良子。リュータも2階にいるから呼んできて」

「はいはい。ごはんだぞ弟よー!」

「はーい、今行くよー」


 リュータというのは私の弟だ。佐藤隆太郎(さとうりゅうたろう)。私のいっこ下の生意気で奇行が目立つ友達の少ない弟だ。全く誰に似たんだか。


『よしこにそっくりだよね、弟くん』

『顔は似てない。あと私にはむつきとみちかちゃんっていう友達が二人もいる。ぼっちの弟とは格が違うのだよ』

『最近までゼロだったんじゃん!』


 クロモが念話で話しかけてきた。なんか思考が漏れてるのがヤだなこれ。ちなみにむつきは念話に参加できない。あくまでマジカルチャームを通しての繋がりなのだ。


「うわ、姉ちゃんが友達連れてきてる。珍しい」

「こら、お客様に挨拶はどうした弟よ」


 弟が下りてきた。お前が友達連れてくる方がもっと珍しいことだと思うんだが。

 弟はむつきを見ると、驚いてこう尋ねた。


「こ、こんばんは。もしかして魔法少女の方ですか?……その帽子、とてもお似合いですね」


 うん、余計なことを言うな弟よ。アニメの見すぎじゃないのか?魔法少女なんているわけないじゃないか。そろそろ現実を見ろ。


「あ……あ、はい、こんばんは。お邪魔してます」

「友達のむつきちゃんよ。見ての通り、魔法少女だわ」

「本物!?すごいなぁ!」


 うん、私の嘘にあっさり騙されおって。馬鹿な弟だ。魔法少女なんてお前の妄想の中にしか存在しないよ。……あれ?


「あの、体の右半分がなんか黒ずんでるのは悪魔と契約した代償ですか?」


 また変なことを言ってこの弟は!やめろよな!むつきちゃんのメンタルは泣くほど弱いんだからな!


「えっ?えっ?」

「むつきちゃんごめんね。こいつの深刻な中二病に付き合わせちゃって」


 私と弟のやりとりを見て、クロモはこう言った。


『君達姉弟に友達がいないのがよく分かる会話内容だね』


 失礼な!私は弟と違って時と場合をわきまえるぞ!

母と弟の容姿描写は考えてないのでご想像にお任せします。

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