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17 初めての共闘作業

 私が職員室の扉を開けたら、そこには普通に先生方が席に着いていた。


「あれ?悪魔は……」


 私が戸惑っていると、魔法少女(ゾンビ)のむつきが冷静に言った。


「よしこ、騙されては駄目よ。あれは全て人間じゃない」

「ちょ、それ本名……」


 私はクロモをキッと睨んだ。こいつがよしこよしこ連呼するせいで、私の本名がばれてしまったじゃないの!

 むつきはハッと気付いたように名前を言い直す。


「あ、シュガー……だったわね」

「いや……うん。もう好きに呼んで」


 私は諦めて好きに呼ばせることにした。


「気をつけなさい……来る!」


 むつきが警告を発すると、職員室にいる先生方が一斉にこちらを向いた。うわ、びっくりした!凹凸のないのっぺりとした黒に染まっている顔。人間の顔じゃない!


「悪魔が……10体以上も」

「悪魔じゃない。悪魔の眷属よ。本体を倒さなきゃ意味がない」

「眷属……こんなの初めてだわ。今まで一体だったから」


 というか、なんかむつきの雰囲気がさっきまでと違うんだが。


「めんどうね、蹴散らすわ。危ないから私の前方にでないで、シュガー」

「わ、分かった」


 なんかさっきと違ってクールな雰囲気なんだが! さっきまで泣きそうなほどメンタル弱かったのに! えーと、あれだ。クーデレならぬクーヘタレ。私が今名付けた。 

 ガタガタガタッ! 突然悪魔の眷属たちが席を一斉に立って、こっちに向かってきた。規則正しく動きが揃ってて怖い!

 それを見てなお、むつきは取り乱すことなく冷静だった。むつきは左腕を水平に上げ……その左手には、刃渡り20cmほどの包丁が握られていた。


空間斬(くうかんざん)


 むつきが包丁を大きく真横に振ると、それをなぞるかのように前方の空間が真横に裂けた!そして一瞬裂けた空間が、また元通りに戻ると、悪魔の眷属達の体が真っ二つになった。ずるっと上半身と下半身が綺麗に分かれた眷属達は黒いモヤになって消滅した。何この魔法強すぎ。

 呆然としている私に気付いて、むつきが解説してくれた。


「今のは空間ごと相手を斬る魔法よ」

「空間ごと? あなたは空間魔法の使い手なの?」

「そうよ」


 彼女はクロモが言ってたように、空間魔法とやらの使い手だった。……だが思っていたよりもとんでもないなこの魔法。何このチート。私が初めて会った魔法少女が強すぎなんだけど。一方私は一切魔法が使えません。もうこの子だけでいいんじゃないかな……?


「もうよしこいらないんじゃない? これ?」

「クロモに言われると何かむかつくわ」


 すると彼女はこちらを見て言った。


「まだ本体を倒していないわ。今度はシュガーの魔法を見せて頂戴」

「え? でも私は魔法使えなくて……」

「いいえ、使っているわ。ただ認識出来てないだけ」

「へ? どういうこと……?」


 認識できない魔法? それはどういうことだろう?


「魔法を使えない女の子が自分より体の大きい悪魔を倒すことができると思う? あなたはそれをやってみせたのよ」


 それは確かに疑問に思っていた。筋力が上がっていると感じないのに、ステッキでぶん殴るだけで悪魔を倒せることが。むつき……彼女は私の魔法の正体に気付いているのだろうか?


「で、悪魔の本体はどこ?」

「あそこ。一人だけ座ったままの教師がいるわ。あれがおそらく本体」


 むつきが指を指した場所は職員室の一番奥……教頭席。そこに座っている教頭だけ、他の眷属と違って黒くてのっぺりとした顔ではなく、普通の冴えない中年男性の顔をしていた。痩せてて頭髪が薄い教頭先生そのままだ。

 やがて教頭先生が立ち上がり、こちらを見て憎々しげにこう言った。


「馬鹿な餓鬼ども……教育的指導をしてやる……」


 しゃ、喋った!人間の言葉で喋ったよ!今まで会った悪魔はろくに喋らなかったのに!


「悪魔だって時間が経って自我を持ち始めると、喋るようになるんだよ、よしこ」

「それって……今回の悪魔って結構強いってこと?」

「感じる魔力は普段の2、3倍ほどかな。キミが感受性高ければ気付いただろうに」


 言えよ!そういうのは言えよ!

 そのとき、突然ゴポゴポと音を立てて教頭の姿が変形し、膨れ上がってきた……ワイシャツは裂け、その下から赤黒い筋肉が隆起して、どんどん巨体になっていく教頭。一体どんな恐ろしい姿になるのだろうか。

 ……ん、変形してる今、隙だらけじゃない?そう思ったとき、私は白いステッキを握りしめ、悪魔に殴りかかった!


「ちょ、よしこ!?」

「とりゃあああああああああ!」


 大上段からステッキを振り下ろし、悪魔の脳天に一撃!ドガッ!と鈍い音を立てて、頭がメコッと変形した。


「グアアアアアアアアア!!」


 苦悶の叫びをあげる悪魔。そうか、まだ叫ぶ余裕があるのね!なら追撃しないと!

 私は一心不乱にステッキを振り回した。


「オノレ、小娘ガアアアアア!!」


 悪魔が腕を振り下ろし、襲い掛かってきた。私はステッキで迎撃する。ザシュッ!と音を立てて、悪魔の腕がちぎれとんだ。もう反撃されたくないので、このまま勢いで押し切る!

 私はステッキを悪魔の胸に突き立てた。人間であれば心臓の位置!悪魔の心臓の場所が同じとは限らないけど。


「ウガアアアアアアアアア!!」


 そのままステッキをぐりぐりする。そう、シチューをかきまぜるようにぐるぐる回すのだ。消えろ! 消えろ!

 ぐちゅぐちゅと音を立てて、ステッキに触れた悪魔の肉が消滅していく。やがて、悪魔の胸に大きな風穴が空いた頃、悪魔の体は黒い霧になって消滅した。悪魔は死んだ。


「はぁ……今回も強敵だったわね」


 私はそうつぶやいてくるりと後ろを振り向くと、三角帽子のゾンビっ子と黒いマリモの神獣がガタガタ震えて口々にこう言った。


「バーサーカー……」

「ざ、残虐超人……」


 ……あれ?おーい、クールな仮面が剥がれてますよ、むつきちゃん。

変身前に倒されたので悪魔の姿はわかりませんでしたが、恐ろしい巨大な鬼のような形態になる予定でした。

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