16 私は一向にかまわん!
「彼女、もう死んでるよ」
クロモが告げた衝撃の真実。死んでるって?ま、まさか私がタックルしただけで死ぬスペランカー体質とか?あ、でも普通に今も抵抗しようとしてるわね。生きてるじゃない!
「うーん、言葉が悪かったかな。正確にいえば、彼女は人間としては死んでる。でも魔法少女としては生きてる」
「ど、どういうことなの……」
「つまり、魔力によって死んだ体を無理矢理動かしているってこと」
「え、えとつまり……」
マウントポジションで私の下敷きになっている少女は抵抗をやめたのか、力を抜いた。私は彼女の腕をそっとのけて隠されていた彼女の顔を見た。
彼女の顔は、顔の右半分が……腐っていた。
「……ゾンビ?」
私がつぶやくと、彼女は泣きそうな声で言った。
「だから見られたく……なかったのに……」
うぐ、なんか罪悪感が。私は相手がゾンビだからって気にしないんだけどなぁ。と、とりあえず励まさねば!
「あ、あのさ、元気出していこうよ!ほら、生きながら死んでる人間なんかより、死にながら生きてるゾンビの方が素晴らしいわよ!」
「よしこ理論は毎度意味わからないなぁ」
「うるさい!とゆーか本名いうな!」
あーいかん、彼女がまだ泣きそうだわ。ゾンビなのになんでこんなに打たれ弱いんだ!
「と、とにかく!あなたがゾンビだからって私は嫌ったりしないし、むしろそこがいいというか!うん、ゾンビばんざい!」
あーもう、テンパりすぎて何を言ってるのかさっぱりだ!
「ね!とりあえずお話しましょ!大丈夫、怖くないから!」
「よしこ、マウントポジションで言っても説得力ないから」
「だめ!この体勢解いたら逃げられるもん!」
ここで逃げられたら、たぶんもう彼女は捕まえられない気がする。だからこの体勢は意地でも保持する!
すると彼女はおずおずと口を開いた。
「あの、私に触ったら……汚いから……」
「汚くなんてないわ、全然」
「腐ってるし……臭いし……」
「鼻炎気味だから気にならないわ」
「もう人間じゃない、化け物なのよ……」
「ちょっと腐ってるけど、ちゃんと可愛い顔した魔法少女じゃない。化け物とは思わないわ」
私はいちいち自己否定を繰り返す少女を真っ向から論破した。完全論破である。それに、彼女が可愛い顔をしてるのは事実だ。うん、問題ないね
「ねぇ、名前聞かせてよ」
「私は……むつき」
「むつき……いい名前ね」
やっと名前が聞けた。長かった……いつまでも「三角帽子」と呼ぶのもアレだったしね。むつきちゃんか。あースッキリした。
「あの……そろそろどいて……」
「逃げないって約束するならどくわ」
「約束する、逃げないから……」
「絶対よ。絶対に絶対よ」
私は何度も念押し、彼女が何度も頷いたのを確認した後、マウントポジションを解いてどいた。逃げるなよ~逃げるなよ~
「あのさぁキミたち。ここ異空間だよ?いつまでも遊んでないで、そろそろ悪魔を退治しに行かないと」
なんかクロモに正論言われると腹立つな。
「じゃ、いきましょ。むつきちゃん」
「え、よしこちゃん……」
私は彼女の手を引いた。逃がさんと言っただろう?
「一緒に戦うわよ!」
そして悪魔がいる職員室の扉を開けたのであった。




