13 みちかちゃん
朝は斎藤さんと一緒に登校せねば。そう思い立った私はちょっと早めに家を出て、昨日斎藤さんと別れたところで待ち伏せしてた。
『良子、その行動思いっきり不審者だよね』
『そんなことない!……ないはず』
そのまま5分くらいクロモと雑談してたら、斎藤さんがトボトボ歩いてるのが見えた。
「おはよう、斎藤さん」
「お、お、おはよー……ございます」
斎藤さんは最初の一音でどもるなぁ。緊張してるのか。
『良子が怖いんでしょ。だって目つき悪いもん』
『うっさい』
とはいえこれから先もこんな感じだと困る。できればもう少しフレンドリーな関係でいたい。
斎藤さんが歩くスピードはとても遅い。私は自転車を押しながらゆっくり歩いた。
「あの斎藤さん……斎藤と佐藤って紛らわしいから、下の名前で呼んでいい?」
「あ、あの、別にいいです、けど」
「あと敬語もやめてタメ口でいいわ」
「は、はい」
『おーぐいぐいいくねぇ』
『まどるっこしいの苦手だわ』
会話の途中でクロモが茶々入れてくるので念話で返す。全く、でばがめ神獣め。ところで、あの斎藤さん……
「……斎藤さんの下の名前なんだっけ?」
『覚えてないんかい!』
『仕方ないでしょ!自己紹介のときの一回しか聞いてないんだから!』
そう、私は人の名前も顔も覚えるの苦手なのだ。漫画のキャラ名だったら覚えられるのに。
「美智花と言います……」
「みちか、か。いい名前ね、みちかちゃん」
私は名前を忘れてた失点を取り戻す勢いで彼女の名前を褒めた。でも彼女は浮かない顔をして首を振った。
「名前負けしてます……美しくて智恵のある花とか……全然そんなのじゃないのに」
どうやら名前ネタは地雷だった。
「か、漢字にするからいけないのよ!私だってよしこって名前だけど、漢字にすると良い子よ!あ、そうだ、ひらがなで呼べばいいわよね!みちかってひらがなで呼ぶわ!」
『よしこ、ひらがなで呼ぶって意味分からないから』
『うるさい!私だって意味わからんわ!』
とりあえず自分でも何を言ってるか分からない。いや、分かるわよね。要するに漢字を意識せずに音として名前をとらえるってことだから!
「ひらがなで……か。ふふ、そんなこと言ったの佐藤さんがはじめて」
みちかちゃんは少しはにかんだ笑顔で笑った。よし、分かってくれた。信じてたわ、みちかちゃん!
「分かってくれて嬉しいわ。私のこともよしこって呼んでいいわよ。全然良い子じゃないけど」
「わ、分かった。よ……よしこちゃん、よろしくね!」
彼女はちょっと戸惑いつつも、私の名前を呼んでくれた。少しは距離は縮まっただろうか。
『やれやれ、キミたちは付き合いはじめのカップルかい?』
なんかため息まじりでクロモに言われた。すかしたような態度がちょっとむかついたので、あとでしばく。




