杉原から叛する。【短編・テスト投稿】
テスト投稿用の作品です。
10年以上前に教育番組で見たうる覚え知識で書いているので
もし間違っていてもご容赦ください。
「貴様ら、本当に我ら裸子植物に逆らうつもりか!」
「その通り! 花を付けるならばまだしも、受粉に虫や鳥を使うなど言語道断! その罪、万死に値する!」
シダ、松、イチョウ、ソテツ、メタセコイアなど、様々な裸子植物たちが、自分達よりも更に背の低い植物を口々に責め立てる。小さな黄色い花を付ける背の低いその植物は、このたび中生代ジュラ紀後期に新しく誕生した新種――被子植物である。
被子植物は裸子植物から分化した種で、今までの風によって花粉を遠くまで運ぶ裸子植物とは異なり、鳥や虫を利用することで花粉を遠くまで運ぼうとする植物である。
その新しい受粉方法に、その時代、大繁栄していた裸子植物は、新しく進化した彼ら被子植物を嘲笑った。あまつさえ、それを今まで子孫を残していた裸子植物に対する謀反と見なしたのだ。
しかし、小さな被子植物は決して屈することはなかった。今、ここで彼が屈してしまえば、これまでの進化は全て無駄な物となってしまうのだ。
それだけは、許されぬことだった。
故に、小さき彼は自らの何倍の大きさもある裸子植物の大木達に、果敢に立ち向かっていった。
「もはや、時代は変わった。風により花粉を散布する時代は終わりを迎えた! これからはより確実に遠くまで花粉を運べる我ら被子植物の時代なのだ!」
しかし彼の必死の言葉も巨木達の前では、一匹の蟻にも満たなかった。裸子植物たちは口々に彼を罵倒した。
初めから、勝てる戦いではなかったのだ。
「待て」
その一言で、裸子植物たちは罵ることをやめた。否、やめねばならなかった。
そして、その声の主は被子植物の前に姿を現した。
それは杉の群生だった。同時に、一つの植物であった。
突然の大物の出現に、裸子植物たちはざわめき合った。
「その者に何の責もない」
「しかし、杉殿!」
「黙れ!」
口答えしようとしたメタセコイアを、杉は一喝する。
そして杉の群生は小さき被子植物を見下ろし、ゆっくりと語りかけた。
「行くがよい、被子植物よ。お前達が望むように、進化し、生き抜くがよい。しかし、それは茨の道だ。我ら裸子植物は一切の容赦はせん。これは生きるか死ぬかの戦いだ。敗者に与えられるのは、絶滅への道だけだ。ゆめゆめ、忘れるでないぞ」
その言葉に、被子植物は小さく咲き誇る黄色い花を揺らして応えた。
「恩に着る、杉殿」
今から、一億四千万年前の出来事。被子植物が、裸子植物から決別した、歴史的瞬間であった。