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宇宙(そら)へ

申し訳ございませんでした。

 2421年。


 人類は生息圏を宇宙そらへも拡げていた。


 2100年代初頭に1人の科学者が偶然に偶然を重ね、尚且つ残りの人生全ての幸運を使い、とある物質を発見した事から全てが始まる。



 ヴァルジウム



 金属の性質を持つ粘土。


 ただしその性質はあまり知られる事は無く、特定の条件下に限り「今までの燃焼系エンジン」とは比較にならないエネルギーを、発生させる性質が広く浸透して行く流れとなっていった。


 そして、無尽蔵とも言えるエネルギーを手にした人類は、本能が欲するままに宇宙そらを目指した。



 ユーラシア大陸に2基。

 北アメリカ大陸に1基。

 南アメリカ大陸に1基。

 オーストラリア大陸に1基。


 そして……日本にも1基。


 こぞって世界の国々はヴァルジウムの生み出すエネルギーを糧に軌道エレベーターの建造に本腰を入れる。



 魔法の物質と評されるヴァルジウムの恩恵は凄まじく、各分野の技術水準は驚くべき速度で発達発展をしていくのであった。


 軌道エレベーターの建材マテリアル等。


 軌道エレベーターを建設する為の重機。


 燃焼系エンジンに代わる「ヴァルジウムリアクター」。


 当然これらの物を構成する部品パーツに対する技術革新も凄まじく、人類は化石燃料の時代から次の時代へ進んで行った。



 そして人類は2129年。

 全6基の軌道エレベーターを完成させる。

 人類最大の功労者ユンゲル・ハウアーは、人類の進路を決定付ける一節を残した。



「「人類よ。宇宙そらは目指すべき場所では無くなった。これらの宇宙は楽園。夢でも欲望でもいい。掴み取れ」」



 大航海時代を彷彿とさせる発言を受け、国連は公式に発表する。



「「宇宙移住」」



 これまでシャトルでの打ち上げのみに頼った資材運搬とは違い、軌道エレベーターを使っての輸送は宇宙開発を加速度的に進めていく事となった。



 2136年。

 軌道エレベーター完成から僅か7年で、人類は火星への移住及び資源開発をスタートさせるまでになっていた。


 それに合わせて環境整備テラフォーミングも開始され、火星は第2の地球として生まれ変わっていく。


 そしてテラフォーミングと資源開発に伴い、軌道エレベーター建設時代に発達発展した重機も又、変化し羽化していった。



 動殻どうかく。通称MS(move shell)

 日本人が基礎理論と試作機を手掛けた宇宙汎用型外骨格。

 小型ヴァルジウムリアクターを装備した人型ひとがたの強化スーツ。


 更にその日本人は突き進む。


 鋼殻こうかく。通称HS(hard shell)

 MSをベースに大型化を実現。

 大出力ヴァルジウムリアクターをエネルギーコアにした機体は資源開発、建築建造にと瞬く間に動殻と共に普及していく。従来の重機を遥かに凌ぐ馬力だけではなく、人型で細かな作業も兼務できる鋼の外骨格を手にした人類は、火星を驚くべきスピードで地球色へと染めていく。



 そうして地球人は宇宙での生活を手にしたのであった。



 2200年代に入る頃に人類は、次なる計画を推し進める。


 大規模循環型コロニー。


 火星のテラフォーミングに一定の成果を納めた人類は、来るべき太陽系外への超長距離宇宙航行を想定し、補給無しでも人類が生活する事が出来る人工空間の開発建造に本腰を入れた。


 月や火星開発のノウハウを基軸として、順調に進むコロニー開発だったが、それでも幾つもの大きな事故が起こり、決して少なくない犠牲者が出た。



 しかし人類は歩みを止める事はしなかった。



 そして2222年。

 人類初の大規模循環型コロニー「ラグランジュ・ポイント」が太陽系内の、どの惑星にも影響を受けない宙域に完成した。


 それを皮切りに「ラグランジュ・ポイント」を中心とした、衛星コロニー6基が建造された。


 宇宙に咲く大輪の華に魅了された人々は思い出す。


「「宇宙は楽園だ」」


 ユンゲル・ハウアーの一句を。



 ただそれは幻想だったかも知れない。

 何故なら。宇宙に上がっても尚、人類は権力に魅せられ争ったのであった。





 *





 時は進み冒頭の2421年。


 場所ポイントは日本軌道エレベーター搭乗口付近。


 そこに1人の日本男児、六木むつきれき

 そこに1人の大和撫子、千代島ちよしま陽輪ひのわ


 偶然か必然か、2人の出会いがスタートの合図だった。

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