知的粘体と生存会議の年表
知的粘体と生存会議の年表
約7億年前
知的粘体の発生
脳も器官も持たない群体状の生命。
電気信号と分子で「群れの意思」を形成し、常に問いを繰り返す。
議題の基本は「保持するか/忘却するか」。
約6〜5.5億年前
長期議題:進むか/留まるか
海洋で捕食と被捕食の循環が激化。
「渡せ/渡すな」「結べ/切れ」といったネットワーク形成の議論が始まる。
一部の群れは「自己進化の実験」を開始した。
約5.4億年前(カンブリア爆発)
自己進化の実験の結果、動物群が爆発的に出現
「顎/刃/眼」といった捕食と感覚の仕組みを設計。
しかし“速さ”や“硬さ”は消耗が大きく、生存コストが高いと判明する。
議題は「静かに残る」方向へ傾いていった。
約4.5〜4億年前(陸上進出)
重大議題:越境せよ/形を変えよ
海を出るかどうかの合意が繰り返される。
結論:「動きを捨てよ/光を食え/根を張れ」。
粘体の大部分が植物化を選び、陸上に広がった。
その後の数億年
植物文明の確立
森林や草原として地球を覆い、繁栄を続ける。
「保持」「忘却」「渡せ」「切れ」といった議題の結論は遺伝子に刻まれ、他の動物群にも“本能”として残った。
約20万年前以降(人類の登場)
実験の副産物としての人類
カンブリア実験の被捕食側から進化。
知的能力は、粘体が残した「議題の記憶」を再利用している。
人間の本能や行動原理は、古代の「生存会議」の名残である。
現代(物語の舞台)
国際ゲノム解析プロジェクトで「拍子の揃った配列」が発見される。
研究者たちは「議題の断片=会議録」を呼び覚まし、粘体の正体に辿り着く。
最後に示される結論:
「ここで残れ/光で食え/渡せ」
世界は、この決定の上に築かれている。
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