あとがき:中国の死神
――勾魂使者――
勾魂使者とは、中国の民間信仰における死神の一種[であり、寿命を迎えた人間の魂を捕らえる冥界の役人であると言われている。福を招く財神とされる場合もある。
その起源は、はっきりしないが、六朝時代(222年 - 589年)に書かれた奇怪な話を集めた小説集『志怪小説』には既にその記載が見受けられる。
地域によって呼び方・特徴が異なる場合があるが、共通的に見られる特徴として以下がある。
・白と黒の二人組である。
・白は長身、黒は短身。
・高帽子を被っており、白の高帽子には「見吾生財」(我に出会えば財を成す)「天下太平」といっためでたい言葉、黒の高帽子には「見吾死哉」(我に出会えば死ぬ)といった不吉な言葉が書かれている。
・白は傘・扇子・元宝、黒は魂を捕縛するための鎖を所持している。
・白は口から長い舌を出している。
・白は福を招く財神とされる場合もある。
などなど。
――無常との関係――
清代中期の乾隆年間頃、「勾魂使者」の別名に「無常」が加わった。それ以降、無常が勾魂使者の新種として独立し、現代に至る。今では死神と言うと、「無常」の事を指すことが多い。
元々は「無常」は仏教の概念であり、「この世の一切は生々流転する」という意味である。だが、中国ではこの宗教概念があるときから徐々に通俗化し、「この世の一切は生々流転する」→「人はいずれ死ぬ」→「無常=死」という解釈がなされ、さらに死の象徴である勾魂使者を無常と呼ぶ習慣が定着したと言われている。