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ラインハルトの部屋で

「ラインハルト様がお待ちですよ。」


よく見知ったラインハルトの執事が待ち構えていた。


「沢山お買い物をされましたね。私が運びましょう。」


「ありがとう。でもそんなに重くないのよ。」


「お持ちしますよ。さ、坊ちゃんがお待ちですから。」




ラインハルトの部屋のある階には他には誰もいない。

王太子殿下のご家族は下の階を全て使っているし陛下は最上階にいる。

ヴィヴィアンが来た事により執事も侍女も気を利かせて誰も居なくなってしまった。

その気遣いで心臓がうるさいのだが湯浴みをしていないので大丈夫だろうと気を落ち着かせる。



「遅かったな。お前たちのお喋りは相変わらず長い。」

「お待たせしました。お喋りも確かに長いけれどお買い物が楽しくって。」


ラインハルトは湯浴みを済ませたばかりなのかまだ髪が濡れていてリラックスした部屋着を着ていた。


「それ楽そうで素敵ですね。寝巻きとは違うんですか?」

「あぁこれか。俺は裸で寝るからなぁ。」

「こんな寒い季節もですか?」

「部屋が暖かいから問題ないだろ?それよりお前も湯浴みしてこいよ。」

「え?」


突然そんな事を言われてヴィヴィアンは動揺してしまう。

ちょっとだけ顔も赤くなったのか気付いたラインハルトが笑って言った。


「そんなつもりじゃない。夜会用のドレスを着てもらいたいんだ。俺の湯殿を使えばいい。侍女に言ってあるから行ってこいよ。」

「びっくりさせないでください。」

「そんなに驚く様な事でもないだろう?」


ラインハルトが手を伸ばしかけたのでヴィヴィアンは急いで部屋を出た。

まだ顔は赤いままだろう。

あの手に捕まっていたら絶対キスをされただろうし決定的な事を言われたかも知れない。


(待って、まだ返事は出来ない)


するっとすり抜けたヴィヴィアンの後ろ姿を見てラインハルトもまた心臓が早鐘を打っていた。

今にも気持ちを伝えたくて口から飛び出てしまいそうだ。


(まだ駄目だ。もう少しの我慢だ)


心を落ち着かせる為にソファに座ると執事が置いて行ったヴィヴィアンの買い物の袋や箱が目についた。


(服も靴も有り余るほど贈ったが何をこんなに買ったんだ?)


こっそり中を覗くと可愛らしい下着がいくつか見えたが手に取って見るのはさすがにまずいと思いまた座り直した。


(何故下着を?)


悶々としながら待っているとホカホカと湯気を立てたヴィヴィアンが戻って来た。


「ちょっとラインハルト?湯上がりのガウンしかなかったじゃないの!先程まで着ていたワンピースは?」


プンスカと怒るヴィヴィアンが子供のようで悶々気分が一旦鎮まる。


「俺のガウンだから脚まで隠れるから問題ないだろ?すぐ試着するぞ、こっちの部屋だ。」


手を取られ続き部屋の扉を開けるとそこはもう一つの部屋になっていて壁一面にドレスが収められている。


「・・・なんなの、この部屋。」

「衣装部屋だよ。」

「女装するの?」

「はい、言うと思った!お前のに決まってるだろ。」

「はい、言うと思った!・・・こんなに作ったの?」


よく見ると初めて贈られたまだ少し小さい懐かしいドレスもある。あの淡いピンクは春の茶会で着たはずだ。学園のパーティーで着たのはこのラベンダー色のふわふわのドレス。どれもヴィヴィアンに良く似合ってみんなが褒めてくれた物だ。


「いつもありがとう。大切に保管してくれてたのね。」

「俺とお前の思い出だからな。ひとつも捨てていない。」


ラインハルトはチャンスとばかりに後ろから腕を回し抱きしめた。

髪をアップにして結んでいる為に露わになった首筋にそっと軽いキスをすると理性が壊れそうになる。


「新しい夜会のはどれ?」

「あれだ。着てみてくれ。」


ヴィヴィアンはするっとガウンを脱ぐと下着姿になりドレスに袖を通す。

後ろ側はひとりで着られないためにラインハルトが優しい手付きでボタンを留める。

屈んで靴を履かせると立ち上がりドレスの仕上がりを見ている。

彼は王子などという立場で無かったらファッションの道に入るべき人なのだ。

思えば幼い頃からお洒落な人だった。派手でも地味でもなく洗練されていた。

今でもそれは変わらない。

離縁したが自国に戻られた王妃様であるお母様に似たのだ。

この国にない服を身につけていたりするからまだ交流があるのだろう。

だからドレスを着る時はモデルに成り切り下着姿を見せる事も抵抗はないのだ。

ヴィヴィアンを背後から抱きしめながら鏡ごしに満足そうな笑顔だ。


「力作ね。いつも今回が1番素敵って思うの。」

「グラデーションいいだろ?」

「うん。とっても綺麗。夜空のドレスね。」

「今回の夜会もお前が1番美しいに決まっている。」


ラインハルトは自信満々だ。


「私もそう思うわ。でも知ってる?陛下が私のお母様にドレスを贈ったって。」



夜会の為にドレスを贈るのは婚約者や妻にだ。

まだ夫のいるお母様に贈るとは思ってもみなかった。


「知っている。父上は自分の事しか考えていない。ダイアナ様が欲しくてたまらないんだ。だが名ばかりでも夫がいる。混乱を招き兄上にも迷惑がかかる。だからその前に呼び出したんだ、子爵殿をな。今日はあの娘と会えて偶然にもちょうど良いチャンスだった。ヴィヴィアン、お前に言いたい事がある。全て上手く終わらせたら俺の話を聞いて欲しい。」


ヴィヴィアンは複雑な気持ちが入り混じり頷く事しか出来なかった。


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