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大人の世界を知る

ランチが終わるとラインハルトは王宮に戻って行った。

別れ際に耳元で意味深な事を言っていた。


「今日は家に帰るな。俺の部屋に来い。」


そんな事を言われた気がする。

実際言われたのだが気がするだけにしておきたい。


「護衛も付けずにふらふらと。付けると目立つから嫌なのはわかるけれど。付かず離れずでこっそり付けてるのかしら。まあいいけど。あのお店に戻ってもいいかしら?」

「えっ、あ、勿論よ。食べたら暖かくなったわね。」

「そうね、顔赤いものね。」


多分エリザベスは気付いている。

恋愛に長けた彼女にはお見通しなのだ。

ならば聞きたい事は全部聞いてみようではないか。


「ねえ、彼とはもうした?」

「ストレートに聞くわねぇ。どっちだと思う?」


恋愛上級者で学園一モテ女だったエリザベスは会話のやり取りも上手い。

小悪魔な目の輝きもあの頃のままだ。


「したでしょう?しかも最近じゃなくて卒園する前じゃない?」

「惜しいわね。ヴィヴィアンにしては中々いい線いってるわ。卒園してすぐの時よ。」

「やっぱりー。腰に回す手がやらしいのよ。婚姻前にしても怒られなかった?」

「あのお堅い両親に言う訳ないじゃない。でも婚約したから遅いか早いかの違いでしょ。避妊はしてるわ。ドレスはぺたんこのお腹で着たいもの。」


エリザベスはヴィヴィアンの異変に気が付いていた。

明らかにラインハルトに何か言われたに違いない。

学生の頃からヴィヴィアンを妃にと虎視眈々と狙っているのをクラスメイトなら誰しも知っているだろう。

だが賢いクラスメイト達は誰にも話さなかったし話題に出す事も避け温かく見守る事にした。

何故ならヴィヴィアンの家庭事情は複雑だったし母親の為に必死で勉強に励む姿を見ていたからだ。


「婚姻前にしたとして破談になったらどうするの?」

「私達は大丈夫だけど無い話ではないわね。今はもう昔と違ってあまり煩くはないわ。家柄によっては厳しい所もあるだろうし自分は遊んでいるのに嫁は生娘を望んだりね。」


お店の中でエリザベスがドレスを試着しているのをぼんやり眺めていた。

ブルーのドレスを着たエリザベスに見惚れているのは店主だけではない。

付き添いの男性達も目を輝かせている。

後から連れの女性に叱られるに違いない。


(ほんとに綺麗)


何度も何度もキスをしているけれどその先を望んでいるんだろうか。

好きと言われた事も言った事もない。

唯の友人にするキスとどう違うのか?

もし望まれたら?


「ねぇヴィヴィアン。もし殿下が他の人と結婚したらって考えた事ある?いつも貴方の為に仕立てられた美しいドレスや宝石を他の人が着る事になったらどう思う?それでも秘書として側で働ける?」

「・・・考えた事ない。」

「良い機会だから考えてみたら?貰って当たり前になってちゃだめよ。何故ヴィヴィアンだけが貰えるのかしらね。ね、私はドレスも買うけど下着を買いましょうよ。このお店最初は下着から始まったのよ。」


ドレスの並んだ部屋の更に奥に入ると美しいスイーツのような下着が並んでいた。


「わぁー、か、か、かわいいー。」

「でしょう?殿下は下着まではくれないでしょ?」

「そうね、下着は貰った事ないわ。貰ったドレスに合う下着を探すの大変だから一緒に作ってくれればいいのに。今日会ったら言わなくちゃ。」


エリザベスは今日また会うのねと知りながら聞かなかった事にした。

下着をおねだりする意味はわかってるのかしらと笑いを堪える。

心の中で殿下の応援をする事にした。


(サイズを把握できるといいわね、殿下。)


無邪気なヴィヴィアンは下着の試着をしながらエリザベスにどうかしら?と聞いてみた。


「それよく見た?ここ穴があいているでしょう?上級者向きよ。見た目は可愛いけどね。」


こんな大人の世界があるのだとヴィヴィアンは素直に感嘆したのだった。

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