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マリスとその友人

マリスは背中を丸めて退店はしたのだが店から離れると案の定憤慨した。

友人2人に思いつく限りの暴言を吐き地団駄を踏んだ。


「あの人が第二王子なのね、初めて見たわ。王太子殿下と全然違うから解らなかったじゃないの!王子っぽくないと思わない?でも実際王子なんでしょう?アイツとどんな関係なのかしら。憎たらしい、奪ってやりたいわ!」


友人2人は少し呆れた顔でマリスを見た。

確かに甘い顔の王太子殿下と第二王子は全く似ていない。

大きな瞳の中性的な王太子殿下に対してラインハルトはキリッとした男らしい顔をしている。髪も短く着飾る事が苦手でシンプルな服を好んで来ている為1人で歩いて市井に溶け込めるのだ。


「奪うのは無理じゃない?見たでしょう、あなたの妹を溺愛しているのが丸わかりじゃないの。」

「あぁ、愛されてるわね。私は王太子殿下よりも第二王子のが好みだわ。背も高いしスマートだし男らしい顔が好きよ。あの2人に割り込むなんてどんな罰があるか考えただけで恐ろしいわ。」

「王家に呼び出されるなんて恐ろしい。大人しくしていなさいよ。」


マリスは怒りと憎しみで友人の会話など聞こえていない。


「いいじゃない、マリスは婚約が決まりそうなんでしょう?お金持ちに嫁げるなら爵位がなくたってお釣りがくるわよ。」


友人2人にも漸く婚約が決まりつつあり顔合わせの際のドレスを見にきていたのだ。

3人とも同じような状況で先程までは浮かれてドレスを試着していたのだがマリスだけは気分が一転してしまった。


「・・・お金持ちが何よ、10も歳上なのよ?絵姿を見たけれど好みじゃないわ。アイツが王子となんて許せない。」


憎しみが隠しきれないマリスにいつもなら適当に同調する友人なのだが今日は違った。


「たったの10歳じゃないの。学園の友人には15も離れた方に嫁いだ子もいるわ。お茶会で会ったけれど歳の差なんて気にならなかったわよ。私のお相手も7つ離れているけれど寧ろ歳上で良かったと思うわ。なんて言うか安心感があるの。」

「私は反対に年下なのよ。でも体躯も大きくて頼れる方よ。歳なんて関係ないわ。」


学園を出てから働きもせずにふらふら遊び回っている仲間だと思っているのはマリスだけで友人達は家で花嫁修行を身に付け下級貴族らしく同等の茶会に参加して交流を深めていたのだ。


「茶会?貴方達は招待状を貰っていたの?私は貰ってないわ!」

「私達は男爵家だから子爵家との交流はあるのよ。もしかしたら貴方は侯爵家と認識されているんじゃない?あのお屋敷に住んでいるし。」

「きっとそうよ、私達とは格段に違うお屋敷だもの。タウンハウスであの大きさだもの、領地のお屋敷は想像を絶する大きさに違いないわ。」


マリスはふと考えた。自分には下級貴族からの招待状もなければ上流層との交流もない。

侯爵家なのに誰かを招いてパーティーをした事もない。

ならばあの女は?

ヴィヴィアンは家と王宮を仕事で行き来するだけで着飾ったのを見た事はない。

年に一度だけ全貴族が招待される王宮の宴でも人が多すぎて見かけた事など無かった。


「あの女のドレスも宝石も片っ端から奪ってやったから茶会にも夜会にも行けないんだわ。」


ブツブツと不穏な事を呟くマリスに友人は疲れてきてしまった。


「マリス、王子殿下は怖いって噂よ。ドレスも宝石も返した方がいいわ。謝るべきよ。どう見たって貴方の妹は愛されてるじゃない。罰される前に謝りなさいよ。」

「そうよ、あの2人はお似合いだったわ。王家と親類になれるならいいじゃないの。」


愛する相手の出来た友人は心穏やかで理性的だ。

愛を知らないマリスには到底理解できないのだろう。

以前なら味方してくれた筈の友人に裏切られた気分になり益々眉間の皺が深くなる。


「私達はもう帰るわ、忠告したからね、マリス。貴方が盗みを働いた件は私達には関係ないから。」

「マリス、薄々感じてはいたけれど貴方の髪にも肌にも合わない宝石やドレスは妹のものだったのね。私ももう春には結婚するの。だから盗人の友人がいるなんてマイナスにしかならない。けれど貴方の良いところも知ってる。今のうちに謝ってきなさい。そうしたらずっと友人でいられるわ。」


マリスは友人を睨みつけたまま無言で帰って行った。


(アイツのドレスも宝石も売ってしまえば証拠は残らないわ。ドレスも普段着も新しく買えばいい。お金はお父様から貰おう。)


知恵の回る自分にニヤけていたマリスだったが後にこれが大誤算になる事をまだ知らない。

早急にヴィヴィアンのドレスを売り払い父親に新しいドレス代をせがんだが王宮からの呼び出しを受けた後だった為にマリスは自宅謹慎を言い渡された。

あんなに優しい父が自分に怒鳴るなんて。


何も見えていないマリスはベッドに潜り込むと眠りが襲ってくるまで王子と近づきになり、ゆくゆくは王太子殿下の愛人に収まる夢を見ていた。

奪うのではなく愛人なのが実に彼女らしい考えだった。

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― 新着の感想 ―
友人ちゃんと友人なんだな。 ここでの会話だけなら、普通にそこそこいい友人なんだが。 義姉も友人の忠告聞けばな、、、。
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