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ヴィヴィアンの計画

いつもよりゆっくりと目覚めて窓の外を見ると冬に耐えうる花達が盛大に風に吹かれている。

今日はとても寒いに違いない。

ヴィヴィアンは何を着て行こうか考えながらベッドから降りた。

母の部屋の続き部屋になっている為忌まわしい自称義姉も此処には入れないし中がどんな作りになっているかも知らないだろう。

ラインハルトがくれたのはドレスだけではない。

普段に着るワンピースやコートやブーツまで全てだ。


(赤いコートが可愛いかな。クリスマスっぽいかしら。エリザベスが派手だからやっぱり赤にしよう。ワンピースは絶対この茶色のチェックだわ。)


ラインハルトの見立ては完璧なのだ。

どれを着てもヴィヴィアンによく似合う。

そして好きなものも熟知している。

自称義姉の悔しがる顔を横目に出掛けよう。

そう思うと思わず笑みが漏れた。



「ヴィヴィアン、こっちよ。1番暖かいテーブルをキープしておいたわ。朝は食べた?私は此処で食べたくて抜いてきたわ。」

「おはよう、エリザ。私も食べてないわ。フルーツとパンケーキが食べたくて。」


久しぶりに会うのに昨日も会っていたかの様に2人はいつも自然に会話を繋いでいく。

婚約者と結婚間近のエリザベスはいつもより落ち着いた色合いの服を着て髪も下ろしている。


「ヴィヴィアン、何よその可愛らしい髪は?私が老けて見えちゃうじゃないの。赤いコートも可愛いわね、また彼から?」

「そ、彼からよ。いつもの事じゃない。それより今日は地味ね、奥様になるから浮かれた服はやめたの?」

「そ、お母様が煩くて。子供っぽい服やドレスは従姉妹にあげたわよ。ねえ、そのチェックいいわね。生地から作らせたんじゃない?彼ならあり得るわ。あんたの為ならやりかねないわね。王子を辞めてファッションの道にすすめばいいのよ。」

「でもあの頭脳をファッションだけに使うのは勿体無いと思わない?その代わりにヤツのイミテーションを作らせてあげてるわ。」


エリザベスはあぁアレねと可笑しそうに微笑んだ。



ヴィヴィアンは自称義姉(名前など呼びたくもない)の噂を知っていた。

同じクラスになった事はないが手癖の悪さや男癖の悪さは噂になるのは早い。

子爵家や男爵家の間で話題に上っており顔は知らなかったが名前は覚えていた。

まさか屋敷で暮らす事になるとは。


だからヴィヴィアンは母親と屋敷中のメイドを集めて会議を開いた。

そして屋敷中の装飾品を偽物に変えたのだ。

その話を面白がったラインハルトはヴィヴィアンの衣装部屋を王宮に作り家に置いておくようにイミテーションの安いドレスや宝石を態々作らせた。


「絶対にしれっと盗むに決まっている。安物だがあの女には見分けなどつかないだろう。内側の見えない部分にお前の名前とデザイナーの名前を刺繍しておいた。いつか役に立つかも知れないからな。お前の父上の形見の品も王宮で預かっておく。」


そうして我が家にやってきた親子は我が物顔に振る舞うようになったのだ。

侯爵家の事業は母が受け継いだのであの男がする事などひとつもない。唯の穀潰しを養わねばならない。

その日からヴィヴィアンは猛勉強をする様になった。

少しでも母の役に立てるようにと。

今となってはその成果は侯爵家ではなく王子の秘書として役立っている。



「この前街で見かけたわよ、あんたの家の居候。友人を引き連れて歩いてたわ。普段からあんな宝石を着けてるのね。それを指摘しない友人も同類ね。」

「指摘出来るような子はいつまでもアレと付き合わないでしょうよ。だから最近は同じ顔ぶれのはずよ。夜会が楽しみね、私の部屋のドレスはもう貰う気らしいから。」

「アレのお相手の方知ってるわ。安っぽいドレスなんか着せたら破談しちゃわない?夜会だけはまともなドレスを着せてとっとと追っ払いましょうよ。でないとヴィヴィアンが結婚出来ないじゃないの。第2王子とは言えもう決めないとやばいでしょ?」


やはりラインハルトの相手は自分だと思われているのだと改めて痛感した。


「まずはあの親子を追い出さなきゃ。全てはそこからよ。」


何もかもお見通しのエリザベスは可愛いヴィヴィアンをぎゅっと抱きしめた。


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