幸せな結婚式の日に
年が明けて親友のエリザベスとマーティンが結婚式を挙げた。
背中の大きく開いた無駄な飾りのないドレスはエリザベスのスタイルの良さを引き立てている。
大ぶりなネックレスも彼女によく似合う。
長い長いヴェールがなんて素敵なんだろう。
(でも初々しさがない)
マーティンがエリザベスの腰に回す手付きや誓いのキスに至るまでお手付き済み感が満載なのだ。
まるで熟年夫婦のようだ。
(あーあ、私達もこれだわ。やっぱり我慢すれば良かったな。)
エリザベスの前に式を挙げたサリー達は手を繋ぐだけで顔を赤らめて見ている参列者の方がドキドキした。
誓いのキスのなんて神聖なこと!
うっとり見入ってしまった。
「何を考えている?」
「・・・何も。サリーが可愛いなって思ってただけよ。」
「お前も可愛いから安心しろ。」
「私達も無事に式が終わるかしら。」
「あぁ、ないとは言い切れない不安要素があるからな。あの義姉がしつこくない事を祈る。式には呼んだのか?」
「呼ぶわけないわ、あの人の父親もね。お母様と離縁してるから他人でしょう?私ほとんど話した事もないし。」
「お前は好き嫌いがはっきりしているからなぁ。」
「久しぶりにノエルにも会えるわ。お母様が一緒に来るって言っていたもの。それにしては旅に出たきり連絡もないけれど。式には間に合うかしら。」
友人の式が終わると今度は自分の番がやってくる。
ドレスはいつものようにラインハルトに任せっきりだ。
ヴィヴィアンの要望など聞いてもこないし見せてもくれない。
(聞かれても困るけど)
「当日までのお楽しみだ。それまでは隅々まで磨いておけよ。まぁ痩せすぎなくらいだからな。特別にする事はないと思うが。」
お楽しみにされるのは普通新郎の方だと思うが彼の趣味を奪うわけにはいかないので大人しく待っていようと思う。
(あと2日だわ)
ラインハルトとヴィヴィアンは王族のしきたりに従い厳かに式を挙げた。
臣籍降下はせずに兄である王太子の補佐として名乗る事にした為にヴィヴィアンはティアラを賜った。
これはサプライズな出来事でティアラとドレスが合わないと言ってラインハルトはご機嫌斜めになったりもしたが概ね順調に式は終わった。
始まる寸前まで母の姿もノエルの姿も見えず気を揉んでいたのだが何とか間に合ったようだ。
「お母様、ノエル。」
「ヴィヴィアン、ティアラを頂いたのね。ラインハルト様は臣籍降下して名を頂くか、グリフィス侯爵家の婿養子になるか迷ってらしたから。王太子殿下が最後まで反対したと聞いたわ。」
「そうみたいね。私は婿養子は反対だったわ。ね、ノエル。久しぶりね、大きくなっちゃってー。」
「おめでとう、お姉様。僕も反対です。だって僕が後を継ぐから。」
ヴィヴィアンは自分が継ぐと決めてそれを目標に頑張ってきたのだがラインハルトの事もあり弟のノエルに任せようと思った。
「老朽化が進んだ屋敷の修理費は私がだすわ。あのめちゃめちゃにされた部屋も元通りにするし。だから後はお願いね。学校を卒業したら屋敷に戻れるようにするから。」
「貴方は根に持つタイプよね、もうあの部屋は忘れてノエルの好みに合わせてあげなさいな。」
絵姿が飾られたその部屋は特別だった。何代も続くグリフィス侯爵家当主の絵姿を始め亡き祖母やヴィヴィアンにそっくりだったという曽祖母の絵姿も飾られていたのだ。
大切な品々は王宮で預かってくれていたしイミテーションとすり替えたりしたのだがまさか絵姿を売りはしないだろうとその部屋だけはそのままにしておいた。
屋敷に住むようになった義姉はこっそり品物を盗んでは売ったり誰かにあげたりし始めた。
ヴィヴィアンがそれを指摘した翌日部屋を破壊したのだ。
大袈裟ではなく文字通り破壊だった。
絵はナイフで裂かれ泥水で復元も出来ない程でそれを見たヴィヴィアンは階段から突き落として上から腹に飛び降りてやろうかと思ったがそれ以降一切無視する事にした。
「まだ許していないし一生許すつもりはないから。」
「・・・もうこの世にいないから恨むのはやめなさい。」
「え?」
どういうこと?




