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婚約指輪?結婚指輪?

婚約破棄が異様に流行ったのは馬鹿馬鹿しいが小説が売れに売れていたせいだ。

王子や身分の高い男性の婚約者になりたくてお相手の女性を嵌めるのが筋なのだがマリスはそれとは少し違っていた気がする。

持ち物を略奪するのも男性に対してだらしないイメージも悪役令嬢と呼ばれるそれに近いものがあったがラインハルトに言い寄ったのはごく最近だった。

学生でもなければ王子の立場であるラインハルトに近寄ることが難しいので仕方がないが同じ学園だった時には何も言って来なかったはずだ。


(私とラインハルトは幼馴染で友人だったけれど恋人でもないし婚約者でもなかったから?ドレスや宝石が欲しかっただけ?)


「何を考えているんだ?」


側に寝転んだラインハルトは足でヴィヴィアンをつついてきた。


「足でやらないでよ。」

「足が長いからなあ。」


そう言いながらラインハルトは両足を使ってヴィヴィアンの腰を引き寄せる。


「ぐえっ、ちょ、腰ぐきってなっ、いったぁーい」

「はははっ、すまん。何を考えていたんだ?」

「婚約破棄の事よ。どうして誰も止めなかったのかなと思って。明らかにおかしいじゃない?騙されて結婚した人は今どうしてるのかしら。」

「結局離縁したパターンが多いと聞いたな。ハリントン伯爵は裁判まで起こしたそうだ。」

「破棄された女性達は?」

「賢い誰かの妻になっているよ。簡単に騙されるような男に嫁がなくて良かったと思っているはずだ。」

「ふぅん。」 

「気分あげてやろうか?ちょっと待ってろ。」


ラインハルトはベッドから降りると反対側にある棚から何かを手にして戻って来た。

小さな箱から出てきたのは美しいブルーダイヤモンドの指輪だった。


「ベタだけど俺の瞳の色にした。ちょっとゴツいけれどカッコいいだろ?ほら、俺のもある。」

「自分の趣味を前面に押し出したわね。ありきたりな指輪より素敵だけれど。」

「気に入った?ネックレスも作ろうか迷ったけれどピアスにしようと思ってる。穴を開けるけどいいか?」

「いいよ。え、いま?」


ラインハルトは針を熱してヴィヴィアンの耳朶に器用に穴を開けた。


「これで暫く冷やしておけ。あんまり痛く無かっただろう?初めてのアレよりは。」


確かに初めてのあの経験よりは痛く無かったが。


「だからってみっつも開けなくても良いじゃない!私左側を下にして眠るのよ!」

「あほう、心の臓を下にしてどうする。右向きで寝ろ。お釈迦様みたいに。何かの本に書いてあったぞ。」


お釈迦様が何かは知らないが全裸で指輪をはめてくるとは思わなかった。


「こんなに早い段階で羞恥心が無くなるなんて知らなかったわ。いつまで全裸なのよ。」

「覚えておいてくれ、俺は寝る時は裸族だ。羞恥心などない。」

「服大好き人間のくせに裸族なのね、覚えておくわ。」

「あほう、お前も裸族の仲間入りだ。」

「嫌よ。これ可愛いもの。着心地も良いから気に入ってるの。ラインハルトがデザインしたんでしょう?」

「またあとで着ればいいじゃないか。」


なるほど、それもそうかと思っているうちに簡単に脱がされてしまう。


「デザインしたのは俺だからな。」


今日も長い夜になりそうだ。

灯りを消してふたりはふかふかの布団にもぐりこんだ。


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