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自称義姉のマリス・アンドリュース

ヴィヴィアンは机の上を片付けるとラインハルト王子に渡す書類を纏めて席を立った。


「殿下、これは殿下のサインが必要です。こちらは急ぎではありません。目を通して頂ければ充分です。それから書類に混じってこれが。」

「またか、家名だけ控えて捨てろ。」

「捨てる前にご覧になられては?」

「何故だ?」

「まぁ騙されたと思ってどうぞ。」


ラインハルト王子は嫌そうに釣書を開いた。


「ぶっ、ぶ、ぶははっ、紅茶を吹き出す寸前だったぞ、何だこの盛り具合は。」

「ふふふっ、ね、可笑しいですよね。誰も可笑しいって言わなかったのかしら。」

「俺たちが執務で忙しくしている間にどうやら髪を盛るのが流行っているのかも知れないな。今度の夜会は笑いを堪えられるだろうか。」

「あら、盛り髪が生で見れるなら私も出席しようかな。そんな面白いもの見逃したくないもの。」

「お前はとっくに出席だ。ドレスも用意してあるからな。何度も言うが部屋を移れ。会いに行くのに遠すぎる。」

「考えておくわ。では失礼します。」


仕事を終えて敬語じゃなくなったヴィヴィアンを名残惜しく見送るラインハルト王子は残りの仕事を片付ける為に座り小さく溜息を吐いた。


ヴィヴィアンは王宮の離れに部屋を借りている。住み込みのメイドや侍女が暮らす棟なのだが時々ラインハルト王子がお忍びでやって来るので渡り廊下から1番近い部屋をあてがわれているのだ。仕事が忙しく侯爵家へ帰るのが面倒な時に利用するのだがヴィヴィアンはなるべく家に帰る事にしていた。



「お帰りなさいませ。お嬢様。」

「ええ、変わりはない?お母様は書斎かしら?」


執事とヴィヴィアンの侍女は荷物を受け取ると奥様は変わりなく書斎ですと返事をした。

いつも自室へ向かうよりも先に母親に会いに行くのだが途中で同居している自称義姉に必ず鉢合わせるのだ。


「あら、ヴィヴィアン、お仕事お疲れ様ね。お義母様なら書斎にいらっしゃるわ。ねぇ、貴方にも夜会の招待状は届いたかしら?」


母が再婚した相手の娘のマリスはヴィヴィアンよりも3つ歳上でそろそろ行き遅れの年齢に差し掛かっている。

茶色の髪も瞳も高くも低くもない背で特筆すべき点は見当たらないほど平凡な娘だ。

今日も苛つくにやけた笑顔を向けて来た。

案の定ヴィヴィアンのドレスを勝手に着ている。


「貴方がお仕事ばかりしてドレスが埃を被ってしまうから私が着てあげたのよ。あのクローゼットの奥の1番豪華なドレスは今度の夜会で着てあげるわね。感謝してよね。あれに合う靴を用意する様にお義母様に伝えてちょうだい。当日は貴方の侍女に髪をやって貰うわ。手袋やなんかも揃えておいて。」


いつも一方的に捲し立てられるがヴィヴィアンは一言も返さなかった。


「あー、やだやだ。またダンマリなの?まぁいいけどね、ドレスを着ても何も言わないし。もうあんたの宝石はひとつもないからね。私が有効的に使ってるから。」


ヴィヴィアンは笑いを堪えてその場を後にした。


(馬鹿なマリス。宝石の真贋もわからなければドレスの見分けも出来ない偽物貴族だものね。働きもせず毎日こってりした食事と甘いお菓子ばかりでブツブツの出来た肌を厚塗りしているのね。もう化粧と言うより油絵みたいだわ。ある意味芸術なのかしら。)


全てを偽物で身を包んだマリスを階段の上から見下ろしヴィヴィアンは満足そうに執務室に入って行った。

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