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マーティンのお母様

ラインハルトとヴィヴィアンはマーティンの屋敷に来ている。

約束どおり夜会の翌日にやって来たのだ。

朝方から降り始めた雪は昼過ぎに目覚めた頃には積もっていたがどうしても話が聞きたかったヴィヴィアンは馬車を出してもらった。


ラインハルトは暖かいコートをヴィヴィアンに着せるとマフラーをぐるぐる巻いた。

本当ならば毛皮の襟巻きを合わせたいところだが残念ながらヴィヴィアンはアレルギーなのだ。

動物の毛で目が痒くなり鼻水とくしゃみが止まらなくなる。

孔雀の羽のようなブルーグリーンのコートは金色の髪によく似合っている。

柔らかな毛糸で編んだマフラーは庶民的だが肌触りが良くヴィヴィアンが好んでいつも巻いているのだ。


「寒くないか?」

「うん。平気よ」


起きた時は恥ずかしくて目を合わせれなかったけれど背後から優しく抱きしめられると此処が自分の居場所なのだと思った。

彼もまた真新しいコートに身を包みシックな帽子が短い髪によく似合う。


「ラインハルトは着痩せするのね」

「皆んなの前では言わないほうがいいぞ」

「あ」

「お前は見たまんま細くて折れそうだった」

「貧相すぎかな。好きじゃない?もう少し太るべき?」

「だめだ、今のままがベストだ。胸が大きすぎると服が美しく着られない。そのままでいてくれ」


ヴィヴィアンからしたら大きな胸でセクシーな胸元を強調したドレスを着てみたいのだがラインハルトの好みではないようだ。

王宮から近いマーティンの屋敷にはすぐ着いた。



「あらあら、こんな雪の中大変だったでしょう。来れないと思っていたのよ。さ、暖かい部屋へ行きましょう」


マーティンの母親がにこやかに迎えてくれる。

コートを脱ぐと着ていたワンピースを褒めてくれた。


「今日のワンピースも素敵ね、その編み上げのブーツもいいわ。女の子達のスカートの丈がどんどん短くなってるわね。もう普段からドレスを着る時代じゃないもの。そのうち女の人もスラックスを着るかも知れないわ。おちおち太っていられないわね」


お話好きの明るい夫人も昨日とは全く違う装いの落ち着いた茶色の服を着ている。

髪もふんわり結ってとても若く見えた。


部屋には暖炉を囲むように低いソファーやカウチが並び寝そべったマーティンの横にエリザベスが座っている。


「よ、寒かっただろ。お茶か酒か選べるぞ」

「殿下が来てくださったんだからお酒はもうやめなさいよ。ヴィヴィアンは紅茶でしょ?」

「いや、俺は紅茶にブランデーを少し」

「私は紅茶を頂くわ。雪はやんでたけれどすっごく寒いわよ、外は」


昨夜途中で夜会を抜け出して戻って来なかった事をマーティンもエリザベスも知っているはずだがなにも言って来ないのは大変有り難い。


(さすが経験者は違うわー)


「貴方達あんまり時間がないでしょう?今はまだお茶の時間だけれど夕食までに戻らなくちゃね。毎年恒例の宴よね?」

「はい、父上主催の家族の特別なディナーがあるんですよ。今回はヴィヴィアンも加わります」

「ふふふ、ヴィヴィアンだけじゃないわよね、ダイアナ様もでしょう?」


昨夜ふたりが抜け出した後に陛下はダイアナの手を取り優雅にダンスに加わったらしい。

誰がどう見ても特別な仲で間違いないと解釈したが結局再婚の発表は無かったらしい。


「そりゃそうよ、まずは息子と娘からに決まってるじゃない!」

「でもお前達って兄妹になるんじゃ?」

「お母様はもう旧姓に戻っているの。グリフィス侯爵の戸籍からも抜けているわ。抜けないと母方のお祖父様が財産を狙っていたそうだから。だから私はグリフィス姓なの。戸籍は問題無いけれど世間的にはどうなのかしら」


マーティンの母親がにっこり笑って話し始めた。


「問題ないわよ、私達世代はみんな知っているから。陛下が既に離婚していた事もダイアナ様に想いを寄せていた事もね。同時にラインハルトの母君にも好意を持っていたわ。お二人ともそれぞれ違った魅力があるんですもの。陛下はどちらかを側妃に迎えると発表したの。けれどダイアナ様はグリフィス侯爵様とすぐに結婚したわ。だから貴方の母君の他にも側妃を迎えたのよ」


その側妃に選ばれた女性は子に恵まれずにそっと城から出されたそうだ。

その出来事をきっかけに貴族の間で愛人を第二の妻として迎える事が当たり前になった時期があった。

これが愛憎劇を生む始まりだったのだ。


「だからいまだに愛人を囲う殿方もたくさんいるのよ。でも何年か前に一夫多妻制は王太子殿下が廃止したの」


後からラインハルトに聞いて知ったのだが王太子殿下がそれを廃止した訳はただ戸籍がややこしくて面倒だからという理由だった。

死んだ後の財産分与やら相続権やら妻同士の争いが絶えなかったかららしい。


マーティンの母親は面白い婚約破棄話をいくつも教えてくれた。あの人とあの人にそんな繋がりがあったとか、だから仲が悪いのかと色々腑に落ちたのだ。


「今では笑えるお話もあるけれど国から追放された方や爵位を失った方もいるの。けれど陛下がそんな理由で国から出されたと他国に知られる方が恥だって事で追放は禁止になったわ。ダイアナ様のお口添えだそうよ」


いかにもお母様の言いそうな事だと思った。



「もうすっかり暗くなってしまったわね、またいつでもいらっしゃいな。公務もお休みに入ったんでしょう?お茶会にもいらしてね。女性だけのお茶会もあるわよ。さ、お腹を冷やさないように、この毛布を持って行きなさい。お酒は飲んではだめよ」


夫人のウインクの意味は?


お腹に子が宿っているかも知れない事を察知した上での気遣いだ。

馬車の窓から手を振ると3人は同じような顔をしてにやにや笑っていた。




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