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再々々婚

陛下は開口一番お前たち2人は呼んでいないから帰れと言った。

まるで親しい友人に話すような口調を陛下がするとは思わなかったし明らかに嫌そうな顔は拗ねた子供のようだ。

ヴィヴィアンは退席しようとしたがラインハルトに腕を引かれて留まるしかない。

陛下からの声掛けをじっと待つだけだ。


「父上、ヴィヴィアンとの婚姻の許しを得たく参りました。」


婚約をすっ飛ばして婚姻なのはどうかと思うがラインハルトは本気なんだなと思う。

今までは冗談なのか本気なのか解らなかったが陛下に告げるならば本気なのだろう。

母の事も忘れてラインハルトがいつから自分を好きだったのかぼんやり考えた。

ハッと現実に戻ると陛下とラインハルトが低い声で話し合っている。


「いつから決めていたのか知らぬが早い時点で婚約していれば良かったものを。お前が決めぬから私は入念に準備をしてきたのだ。ダイアナを妃に迎える。これは譲れぬ決断だ。」

「父親なら子供の幸せを優先するべきかと思いますが。」

「ならぬ。私がどれだけダイアナを欲していたか知らぬ訳ではなかろう?」

「さぁ、存じ上げませんね。何しろ激務続きですから。これだけ朝から晩まで一緒にいるのです。恋心を抱かぬ方がおかしいでしょう?優秀なヴィヴィアンのサポートあってこその業務です。兄上よりも何倍も仕事をしていますからね。婚姻が許されないならば私もヴィヴィアンも共に王宮から辞します。」


(おおっと、切り札を早々に出したわね。どう出て来るかしら。正直ラインハルトがいなければ回っていかないでしょうに。)


これには王も絶句している。ラインハルトの執務能力の高さを知っているからだ。

王太子には出来っこない。あの人は優しい外交をする役割だから。


(あれ?兄上?陛下って母が結婚してしまったから泣く泣く他国のお姫様と結婚したんじゃ?ラインハルトと王太子殿下は異母兄弟?)


「陛下、大人気ないですわよ。陛下と結婚するならば私も再々婚になりますし、陛下は再々々婚になりますわね。子供達の幸せを優先して差し上げたら如何ですか。お側に侍れと言われれば従いますし私ももう最後にするつもりですので白髪になるまで睦まじく暮らしましょう。」

「ダイアナ、だが私は其方を妃にしたいのだ。優秀な其方なら反対を唱えるものなどいないだろう。側に侍るだけなら愛人と認知されてしまう。それだけは嫌なのだ、わかってくれ、ラインハルト。」


ラインハルトは呆れたように大きな溜息を吐いた。

白けた顔も隠しきれていないというより隠そうともしていない。


「優秀なダイアナ様を妃に迎えて兄上にその座を譲るのを遅らせるおつもりですか。もういっそ兄上に譲っては如何です?ならば私もこのまま王宮に留まりましょう、ヴィヴィアンを妃に迎えて。父上とダイアナ様は誰にも咎められずに新婚生活を満喫出来るでしょうし。それとも兄上では不安ですか?父上がその座を離れたくない理由があるのですか?」


成る程、ラインハルトは自分自身が切り札なのだ。

王宮を出てもあの頭脳ならば引くて数多だろう。

なんなら国を出て実母の国へ行く事だって可能だ。


(私は行きたくないけど。・・・旅行なら行きたいけど。)


「私が引退を表明すれば国が荒れる。まだ早いのだ。」

「いいえ、父上。早くもなければ荒れもしません。私が下地を固めました故。安心なさって下さい。私が学生時代に東の隣国の王子、西側の国の王太子、北の双子の姫と友好関係を結びそれは今も変わらず続いています。南は母上の国ですしね。」


(そうだ、留学に来ていた王子達と仲良くなったっけ。今でも時々手紙が届くわ。双子はラインハルトを気に入ったけれど。)


貴方がいるから隙がないわねと言って国に帰って行ったのを思い出した。


「すぐに答えは出せないでしょう。父上、私から提案があります。父上はダイアナ・アンドリュースと結婚を、私はヴィヴィアン・グリフィスと結婚をすれば戸籍上の問題はないと思います。ダイアナ様はグリフィス侯爵家の戸籍からは抜けていましたからね。」

「だが世間は面白おかしく噂をするだろう。お前たちが兄妹で結婚をしたと。」

「構いませんよ、私達は。その案を飲めば父上の引退はもう少し後でも良さそうですね。但し結婚式は我々が先です。初婚ですからね。」


ヴィヴィアンは一言も発せず話し合いは終わった。

母はまだ話があると陛下に止められたのでラインハルトと部屋を後にした。


「笑われるのは父上だけどな。国王のくせに再々々婚なんてあり得ないだろ?」

「有り得なくはないですが珍しいでしょうね。ところで王太子様の母君はどなたなんですか?あ、極秘でしたら言わなくても。」

「極秘ではない。最初に婚姻した妃の子供だ。学生時代のやらかし婚だそうだ。兄上だけを引き取りその後離婚している。結婚式もあげていないので知っている人は少なく暗黙の了解みたいになっているそうだ。だから俺の母上が初婚と思われている。その後に俺も知らない誰かと入籍したのだが妃に相応しくないと密かに離縁をしたそうだ。だから陛下がまた結婚したいと言い出せば周りは慎重に成らざるを得ない。だから俺たちが優先される。」


ヴィヴィアンの手を何度も固く握り直すのは何故だろう。


「で?母君はどなたなんですか?」


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