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ヴィヴィアン・グリフィス

(結構貯まったな)


王宮の書庫の奥まった古いソファに座りヴィヴィアンは一冊のノートをじっと見ていた。

片手にはお昼ご飯のサンドイッチを持ちだらしなく足を投げ出している為今にも卵が溢れそうになっている。

卵がひとかけらスカートに落ちて漸く食べ始める。


とても寒い冬の午後なのだが王宮なだけあって窓も厚く陽当たりは良くないがそこまで寒くはない。

だがすっかり冷めてしまった紅茶を飲み干すと膝に掛けていたショールを丸めて枕にし横になった。

この古い書庫に入る者はいない。

皆新しく出来た図書室を利用するからだ。

ヴィヴィアンは休憩中にこの部屋を利用する許可を貰っていた。何故なら彼女は王子の秘書だからだ。

学校を卒業して秘書になってからの2年間はほぼ毎日この部屋で昼休憩をとり同じ事を考えながら目を閉じている。

だがそろそろ考えを纏めなければいけない時期に差し掛かっているのだ。

1時間程してヴィヴィアンは重い腰を上げ執務室に戻って行った。



「ヴィヴィアン、寒そうだな?暖炉の薪を足してもらえ。」

「殿下、寒くありません。お気になさらず。」

「あまりに細いから寒そうなんだ。ちゃんと食べてきたか?俺の横に机をうつせ、ここの方が日当たりが良いからな。」

「大丈夫です。頂いたショールもありますし。あんまり暖かくなると眠くなってしまいますから。」

「お前が寝たらこっそりキスするぞ。」

「起きてても偶にするじゃないですか。」

「・・・あぁあれなぁ、反省している。キスし過ぎて最近のお前は照れる事もなくなってしまったからなぁ。最初の頃の初々しい反応が懐かしいなぁ。」

「どう反省しているのかさっぱり解りませんが。私達はお付き合いしている訳でも婚約している訳でもありませんので自重してください。殿下もそろそろ婚約者を決めないと。」


ヴィヴィアンにピシャリと言われたラインハルト王子は優しく微笑み返し彼女の頬にキスをした。

同級生だった2人はもう2年近くも同じ部屋で執務をこなし同じようなやり取りを繰り返している。

執務室の文官達の出入りは激しく王子もヴィヴィアンも常に忙しくしている為2人の仲を疑っている者はいない。

寧ろ働き者の2人が将来結婚して国を支えてくれればと思っている者が多いのだがそれには色々な障害があるのだ。


ヴィヴィアンがラインハルト王子の事をどう思っているのかは誰にも解らないが王子が彼女を少なからず想っている事は王子の執事だけが気付いている。

だからラインハルトは全ての婚約話を断っているのだ。



「ヴィヴィアン、お前の姉君に婚約話出ているだろう?来週の夜会で発表するのか?」


ラインハルト王子は走らせていたペンを止めて話しかけた。

ヴィヴィアンは一瞬王子と目を合わせたがすぐに読んでいた書類に目線を戻す。


「どうでしょう、またお話だけで終わるかも知れませんし。とっとと嫁に行って欲しいんですけど。」

「同性にはともかく異性となら上手く接する事が出来るんだろう?」

「どうでしょう、私は異性では無かったので上手く行きませんでしたし。あの香ばしい性格だか性質が異性に向かない事を祈るだけです。あ、姉ではありません。10年近くは一緒に暮らしましたが戸籍上私の家族ではありませんし姓も違いますので。」

「すまんすまん。お前はグリフィス侯爵家の姓のままだったな。だからあの家はお前の物だもんな。」

「そうです。だから早くあの人にお嫁に行ってもらいたいのですが、殿下があの人を遠ざけたりするから貰い手がないんですよ!」

「ははっ、だがお前にきつく当たるような奴を冷遇するのは当然だろう?俺の周りの子息達はそれを感じ取ったまでだ。命令などしていない。まぁ見目は悪くないから歳の離れた御仁がその内求婚するだろう。早くしてもらわないとな。な?ヴィヴィアン?」


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