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出来損ない王女の剣闘譚  作者: リル
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第一話 東の学び舎と少年

いつも通りの日常、私は剣神として働きそれ以外は出来損ない王女として生きる。

暇な間に趣味の読書や絵描きをしているのが幸せなのだが、問題はいつも起きるものだ。

今、私の前には弟がいる。第四王子サテナ、齢16にして次期国王の傑物。そして私の正体を知る弟子だ。


「何の用?私は束の間の休息を楽しんでいたのだけれど」

「可愛い弟の頼みでね。〝東王学園〟に来てよ、剣神として」


東王学園。王公連盟が西大陸の侵攻を防ぐため、人材を確保する為に作った育成機関。

別大陸から流れてきた知識人の元、作られたその機関は現代まで続く東の最重要機関とも呼べるだろう。

祖国のため、東のために強くなる意志を持った若者たちが集うのだ。

そんな学生達にとって、剣神の様な実力者の力を間近で見れるのは良い経験になる。

弟は東のために私を学園へ呼びたいということだ。

だが私の答えはこうだ。


「嫌だ」


そもそも私はあの学園が嫌いだ。

なぜ自分をいじめていた人間にものを教えなければならないのか。


「実力者を呼びたいならサテナが行けばいい。〝賢王八雄〟の一人なのだから」


東には魔導師、剣士その両方の強者のみが名を連ねる〝賢王八雄〟という英雄達がいる。

席は八。その中でも最強の剣士と魔導師が剣神と魔神を名乗れるのだ。

サテナはその中で第五席。

剣士の中で言うならば二番目に位置する剣士だ。

ちなみに私は第一席、サテナとは格が違う。


「実力者を呼びたい訳じゃないんだ」

「………?」

「〝剣神〟に見てもらいたい少年がいる。特異な魔剣で正直僕の手には余る」

「………名は?」

「アーサー・アレクトル、ロロリア公国から来た少年だ。僕は彼が剣神になれる器だと確信してる」

「引退して自由になれる、か………」


正直行きたくないが、次期剣神が期待できるならば仕方が無い。

私は早く引退して、自由を謳歌するのだ。



■■■


後日、私は剣神として学園にいた。

周囲の学生達がざわめいているが、私にとってはどうでもいい。


「け、剣神殿。本当にいらせられるとは思いもしませんでした。本日の剣士科の指導、よろしくお願いいたします」

「剣士科の指導?」


まさか、と思いながらサテナの方を見る。

そこにはニヤついたサテナがいた。

嘘をついたな、と思いながらも諦める。


「サテナ君が剣神に直談判してくれたと聞いております。剣神殿は快く引き受けてくださったと」

「………承知しているが、それよりも先にアーサー・アレクトルという少年に会わせてくれ」

「アーサー君ですか?」


教師が疑問の声を掛けてくる。

特異な魔剣ならば教師も知っていると思うのだが………


「彼が特異な魔剣を持つと聞いた。興味が湧いてな」

「残念ですがアーサー君の魔剣は身体強化の一般的なものです。特異などでは無いですが……」


ふむ。嘘はついていないか。

だがサテナが嘘をついているとも思えない。一度会ってみるか。


「すまないがアーサー・アレクトルに会わせて欲しい。30分程時間をもらいたい」

「どうぞ構いません。それならば午後からの実技実習に参加してもらっても?」

「承知した」


暫く待っていると、一人の少年が現れた。

見るからに気が弱そうでオドオドした様子の少年。

正直弱そうだし、普段の私に近いものを感じる。


「おいおい、何であんな無能が剣神様に」

「魔剣も満足に使えない奴が」


彼を見た生徒達が言葉を浴びせている。

嫌いな光景だ。昔の自分を思い出すから。


「君がアーサー君か?」

「は、はい!高等部一年、剣士科のアーサー・アレクトルです」

「少し来てもらえるか?話がある」

「分かりました……けど、僕なんかと話しても剣神様のお時間を無駄にするだけです」

「それを決めるのは私であって、君ではない。私は一度興味を持ったならば飽きるまで見るのでな」


そう言いながら彼を連れると、私は生徒達が来ないであろう建物までいく。

特異な魔剣ならば近くに人がいるのは危険だからだ。



■■■


「驚いた、まさかそのレベルの魔剣とは」

「あ、ありがとうございます」


このレベルの魔剣が私以外に存在しているとは思わなかった。

鍛えれば私にも届きうるその魔剣は、確かに剣神になれる能力を持っていた。


「えっと……身体強化しか出来ない魔剣ですけど……」

「君の魔剣は私の目には三つの能力が映るわ。それもどれも規格外な」


私には魔剣と剣の腕の他に特殊な才能がある。

〝全知の瞳〟私を剣神たらしめる能力の一つ。

能力は全ての能力、効果、情報の全てを見抜く事にある。

それは潜在能力すら見抜く事も出来る最高の魔眼。

そんな私は数多の魔剣を見てきたが、彼の魔眼は私の持つ切り札の魔剣に次ぐ力を持つ能力だ。


「君は今、その魔剣を使いこなすレベルにいない。だからまずはその身体強化をものにするんだ」

「はい!け、けど……身体強化は波があって上手く伝えなくて……」

「提案があるのだが」

「け、剣神様から僕に何か!?」

「弟子にならないか?君は有望だ、このまま放置するには勿体ない程」


アーサーは驚いている。

それは当然か、今まで馬鹿にされてきた自分が突然剣神の弟子になるのだから。

ただ返ってきた答えは期待とは違ったものだった。


「ごめんなさい。僕は、遠慮します」

「……なぜだ?」

「え、えっと……言えません」

「……そうか、分かった。だが弟子になる気になればいつでも言うが良い。私は歓迎する」


そう言うと私はその場から立ち去る。

これ以上は無駄だからだ。

彼にやる気が無いなら鍛えようとしても無駄。

惜しいな。

そのままサテナのところに向かうと、道中で数人の生徒達を見かけた。

何やら私達を見ていたようだが……


「その様子じゃ断られたかい?」

「……予想してたのか?」

「そりゃあね、彼はいじめられているから」


それを聞き私は眉を顰める。

私にも無関係な話ではないから。


「彼はロロリア公国の公爵家の長男に虐められていてね。そこの長男が女好きでアーサーの妹を狙っているのだが、邪魔されて虐めているんだ」

「よく分かった。私が斬りにいこう」

「落ち着いて姉様。苛つくの分かるけど、剣神が公爵家の次期当主を斬ったなんて最悪の評判だよ」


人の妹に手を出そうとして、それが叶わないから邪魔する兄をいじめる。

そして未来まで断とうとする奴など斬ってしまえばいい。


「彼がさっきアーサーにこう言っていってね。魔法で剣神の弟子になれば妹を滅茶苦茶にするぞ、と。お前如きが調子に乗るなと」

「ごめん、本当に斬っていいかしら?」

「駄目だよ姉上。けどあの男は執着も激しければ頭もおかしい。アーサーは怖いんだろうね」


それを聞き私は考える。

頭のおかしい人間の対応ならば慣れているから。

考えていると、一つの案が浮かんできた。これならばその男を排除できそうだ。


「サテナ、協力しろ」

「はぁ…姉様、悪いこと考えたね?」

「ああ、取り敢えず聞け」


そう言うと、私はサテナに作戦を話す。

それは聞いたサテナは笑いながらそれを承諾するのだった。

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