表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ない王女の剣闘譚  作者: リル
1/2

プロローグ

 望まれない命、私に存在価値は無かった。

 けれど……今はある。

 私にしか出来ない事があるから……


「進軍せよ!軟弱な東の国々の兵どもが退いているぞ!!」


 数十万は優に超える軍勢を率いる将軍が号令をかける。

 それに呼応し、兵士達が前進していく。次々と東の兵士達を数の力で討ち取っていき、進んでいる。

 西大陸を統一した国、サルザルト帝国が一週間程前から、東大陸への攻勢をしかけてきていた。

 快進撃を続け、東大陸の砦を数多く帝国軍は落としている。

 大した障害も無く順調に進んでいた帝国兵達の士気は高い。

 だが、それもここまで。私は二つの剣を持ち、空へとあがった。

 それを見て帝国兵達は叫び出す。

 現れる筈のない者が現れたのだから。


「馬鹿な!?探知は怠っていない筈。なぜここに!?」

 「攻勢をかけている部隊を戻せ!本陣に防御結界を展開!!」


 私が現れた事により、帝国兵は攻勢を辞めた。

 指揮官達が急いで部隊が引かせていく。兵士達も、全員が慌てて退いていく。

 正しい判断だが、もう遅い。


「魔剣〝神隠〟」


 私は薄く輝く剣を一振りする。

 黒い影が浮かび上がり、帝国兵へを飲み込んでいく。

 直後数十万の帝国兵は一瞬で影に飲み込まれ姿を消した。


 「東の英雄〝剣神〟これが東最強の守護神の力!?」


 生き残りの帝国兵達の誰かが呟く。

 残った帝国兵達は、状況を飲み込めないまま恐怖に包まれ、統率もなく撤退していくのだった。

その様子を確認した私は、姿を消す。

〝縮地〟高速で動く剣士の移動法を私は極めている。

 国をまたぐ移動も私ならば可能だ。だから私はこの場所に援軍に来られた。

 私は戦場から少しの時間で城に戻る。 

 自分の部屋に戻るとすぐに姿を変えた。

 先程までしていた両眼を隠していた包帯と、黒いコートを脱ぐと、すぐに私は姿を変える。

 髪をボサボサにし、眼鏡をかけると、朝食へ急いで向かう。

 急がなければ無くなっているから……

 廊下を走っていると、一人の少女とぶつかる。

 転んだ私が見上げると、笑っている少女がいた。


 「痛っ……」

 「あらごめんなさい、姉様がいるなんて気が付かなくて」


 わざと踏んだな……コイツ。八つ裂きにしてやろうか。内心での気持ちを抑えながら、弱々しい様子で振る舞う。


 「あ、あぁ…ごめん、なさい」

 「相変わらず気も小さければ、王族としてのプライドも無いのですね、アテーナ姉様」


 この女は私の妹、シルビア。私の嫌いな家族の一人だ。

 元々は優しかった筈なのに。いつの間にか家族は皆、私を忌避していた。

 妹を無視して食堂につくと、待っていたのは八人の兄妹達と……父上。


 「あ、えっと…おはようございます、父上」

 「出来損ないが、よくもまぁこんな遅く来るものだ。我々との時間の価値を差を理解しているのか?」


 周りにいる兄妹達は一人を除いて嘲笑や軽蔑の視線を向けてくる。

 これが剣神でない時の私の日常。

 東大陸三強と呼ばれるガラティア王国の第三王女だ。

 その中でも私は出来損ないと呼ばれ蔑まれている。

 剣術の才も無く、代々強力な魔導師を輩出してきた一族としての魔法の才も無い。

 実際には東最強の剣士にして、大陸中の剣士の頂点に君臨しているのだが。

 そんな私は家族から差別されてきた。ただ一人を除いて……

 軽蔑や嘲笑の視線に晒されながら食事をしていると、弟と目があった。

 ニヤリと笑う弟を見て顔を歪める。

 そのまま私は食事を急いで終わらせると、足早に去っていく。



■■■


  城の隠された一室、歴代の皇帝が秘密の部屋として隠したそこは、本来なら誰もいない部屋である。

 だがそこに、二人の人物がいた。


 「姉様はもう少し人嫌いを治すべきだと思いますよ。病気かと思う程ですから」

 「うるさい……私は必要最低限しか他人と関わらないの」


 そこにいるのは私ともう一人、第四王子サテナ。

 末弟でありながら次期国王にして剣神に迫る剣術と魔神に迫る魔法をもつ英雄。

 家族の中で唯一私の正体を知り、弟子でもある。


 「つまり僕は特別という事ですね!」

 「師匠辞めようかな……」


 そしたら東大陸中に正体を明かしちゃうね。

 笑いながらそう告げる弟を睨みつける。

 厄介な男にバレたものだ。

 Oを縦に割った東西の大陸、オーラシア大陸の東大陸には常に三人の英雄がいる。

 剣神・魔神・賢王。

 武の象徴である剣神と魔神に、それを率いて東を統率する賢王。

 いつの時代も賢王が剣神と魔神を従え、西から大陸を守っていた。

 ただ今は賢王は不在、剣神も魔神も気ままに動いている。

 最強の剣士と魔導士である剣神と魔神は、力こそあれどそれを指揮するものが不在。

 そんな時期に西、神帝連邦は統一をしてしまった。統一を成し遂げた皇帝は東に攻める好機が今と捉え、全勢力で侵攻をかけていた。

 そんな東が不安定な時期にガラティア王国の王族が剣神だと露見してみろ、私は祀り上げられ自由はなくなる。

 それに万が一西に負けた場合、私は処刑されてしまう。

 私は馬鹿にされたままで良い。誰とも接したくないし、静かに暮らしたいのだから。


 「その時は私はお前を斬り、自害するわ」

 「それは困るね、大好きな姉が死ぬのも西に滅ぼされるのもご免だ」

 「なら黙っている事ね。そして早く賢王か剣神になりなさい、貴方には素質があるのだから」


 そう言って私はその場をあとにする。

 サテナには武力も知力もカリスマもある。恐らく賢王に最も相応しい人物だろう。

 早くサテナが賢王か剣神になれば東も安定に向かうのに、そう思いを馳せながら今日も外を巡る。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ