少女は魔法を使う
コクヨウを手に入れたユリネは、蛇型のコクヨウを首に巻き神殿から出てきた。
神殿の外ではメデューサが待っていた。
「無事にウルボロス様の所へは行けましたか?」
「はい、魂の解放に成功しましたよ。」
ユリネの言葉を聞きながらメデューサは、ユリネの肩へと目をやる。
『このヒューマンはヘビなんて連れていなかったはず…
このヘビから感じるオーラ…まさか…』
「あの、その肩のヘビはまさか?」
この質問にユリネではなくコクヨウが答えた。
「妾は魔剣コクヨウ。蛇神ウルボロスの魂の絞りカスみたいなものじゃ。
妾の魂のほとんどは女神様のもとへ帰れたのじゃ。だから我が分身メデューサよ、そなたも、もうこの地を守る必要はない。今までありがとな。」
「え、メデューサさんはコクヨウの分身だったの?」
ユリネのこの質問に
「神々の戦争の時、妾は仲間だと思っておった者の裏切りにあって殺されたのじゃ。その際、この地を守るように死ぬ直前に魂の一部を切り離して作ったのがメデューサだったのじゃ。」
「私もこれでこの土地に縛られることはなくなりましたの。
私の魂もそろそろ女神様のもとへ行くみたいですの。
あなた、いや、ユリネと言いいましたっけ。ユリネさん、どうかウルボロス様に、ウルボロス様が命を賭して守ったこの世界を見せてあげてくださいね。」
そう言い残すと、メデューサは光に包まれて消えていった。
「コクヨウ、メデューサさんとはあんなお別れでよかったの?」
「いいのじゃ。今の妾は魔剣と一体化したことで、ウルボロスとは別人格みたいなものだらかの。」
「女神様からの任務も完了ってことでいいのかな?
では、この世界を謳歌してみようかな。」
ユリネとコクヨウはとりあえず森を出ることにた。
「ユリネよ、お主は剣術は得意かの?」
「剣なんて握ったことないよ。前の世界は剣で戦うとか魔法とかなかったし。」
「なら、この森を歩いて行く中で剣術と魔法の練習でもするのが良いじゃろう。
この森はそれなりに強い魔物が多いそうじゃよ。」
「コクヨウは何でそんなこと知ってるの?」
「メデューサの知識の一部が流れ込んできたのじゃ。
お主のステータスはヒューマンのそれを遥かに超越しているらしいからの、町へ入る際は気をつけた方が良さそうじゃと、この記憶は言っておるぞ。」
「隠蔽できる魔法とかないのかな?」
「光魔法の中には結界術があっての、結界にも何種類かあるのじゃ。
攻撃を遮断する結界の他に、外からの認識を誤らせたり、阻害するといった類の結界も存在する。」
「なるほど。その魔法を使えばステータスの改ざんもできそうね。」
「お主のレベルの高さなら、すぐにできるだろう。」
「でも魔法なんて使ったことないし…」
「魔法なんてのはイメージの世界じゃ。頭の中でイメージすればいい。ただそれだけじゃ。」
ユリネはイメージする。ステータスの文字が変化するのを。
「ステータス」
名:ユリネ(Lv20)
種族:ヒューマン
年齢:15歳
生命値C
攻撃力C
防御力C
速度C
魔力C
スキル:剣術スキル5、体術スキル3、サーチスキル3、魔力操作スキル5
獲得魔法:火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、重力魔法、空間魔法
光魔法、闇魔法
装備:魔剣 コクヨウ(B)
『できた。』
「このくらいのステータスなら目立たないよね?」
「ほら、魔法使えたじゃろ。
ステータスもおそらく大丈夫じゃろ。」
ユリネもコクヨウもわかっていなかった。
ユリネの化け物ステータスであったからこそイメージだけで魔法が使えたことを。
普通ではれば、しっかりと魔法詠唱が必要なところ、魔力SSS、魔法操作スキル15により力技で可能になっていることを。
さらには、Fからランク付けされるステータスにおいてのCは上位であり、スキルレベルは普通5が最大値であることを。
低く偽装したはずの剣術スキル5、魔法操作スキル5は達人クラスであることを。
つまり、偽装してもユリネのステータスは驚かれるレベルには高かった。
しかも、それが見た目が可愛らしい少女であるから尚更である。
『一通り魔法の練習してみようかな〜。』
ユリネは森を散歩しながら、魔物と出くわす度に魔法を試した。
『昔読んでた漫画の登場人物を思い出すだけでいろんな魔法使えるな。』
そう考えながらユリネは魔法を色々試してみた。
その結果、ユリネの通った後には、死屍累々と魔物の死体が転がっていた。
「ユリネよ、そろそろ剣術も試さないか?
妾も一緒に戦いたいのじゃ。」
「そうだね。じゃコクヨウ、一度剣に戻ってもらっていい?」
「もちろんじゃ。」
軽く剣を振ってみるユリネ。剣術スキル15は伊達じゃなく、その剣筋はまさに芸術と呼ぶべき美しさだった。
「ユリネよ、前からデスベアーが来るぞ。」
デスベアー
討伐難易度C
普通なら4人以上のパーティーで討伐に挑む強敵であるはずのデスベアーも
シュ
ユリネの一閃の前になす術なく切り伏せられるしかなかった。
『魔法だと威力が強すぎで周りまで大変なことになってたから、私には剣の方が合ってるかも。』
そう、ユリネの魔法は災害級の威力であった。
「せっかくコクヨウと一緒に旅をするんだから剣術磨いて行くべきだよね。」
「現状でお主の剣術はかなりのものではあるけどな。
せっかく魔法の操作スキルも高いんじゃから、剣術に魔法を掛け合わせるのも面白いそうじゃの。」
「なんにせよ、まずはこの魔物の死体どうにかしないとね…」
ユリネはそう言って周囲の死体の山を見る。
「ではこの死体の山を片付けたら、一旦野宿の準備でもするかの。」
そうコクヨウは返した。