少女は皆を驚かせる
「ユリネちゃん、お待たせ〜」
受付のお姉さんがユリネにギルドカードを渡してきた。
ユリネ(15歳)
F級 剣士
「最初はF級からのスタートね。依頼をこなしてクエストポイントが貯まれば次のランクに昇級できるから。」
受付のお姉さんはユリネに冒険者ギルドのシステムを一通り説明してくれた。
冒険者ランクとクエストランクがあり、その冒険者ランクと同等までのクエストランクの依頼しか受けることができない。
パーティーでのクエストの場合、3人以下のパーティーではメンバーの中で最高ランクと同等までのクエストランクの依頼を受けることができ、4人以上になると最高ランクの1つ上のランクまで受けることが可能になる。
依頼達成で報奨金の他にクエストポイントがつき、依頼失敗で罰則としてクエストポイントが引かれる。
このポイントの増減でランクが上がったり、下がったりするシステムである。
「無くしちゃうと再発行にお金かかっちゃうから気を付けてね。あと再発行時にはランクも2つ下がっちゃうから。」
「説明ありがとうございます。」
ユリネは受付のお姉さんにお礼を言う。
「あとは素材の買取だっけ?
カウンターに出してもらってもいいかな。」
そうお姉さんに言われてユリネはカウンターの広さを見る。
『どうしよう。絶対にこの狭さじゃ乗らない…』
この時、受付のお姉さんは思っていた。
ユリネが持ってきた素材は薬草の類だろうと。
聖騎士団長マイルスが実力は保証するって言っていたが、所詮は普通の少女。戦えるといっても、よくて討伐難易度E級のホーンラビット1、2匹くらいだろうと。
しかし、規格外のユリネに対してこれはあまりにも甘過ぎる考えであった。
「たぶん、そのカウンターでは置ききれないかと…」
ユリネは恐る恐る言う。
「あら、そうなのね。じゃあ、解体場に直接持って行きましょうか。」
ユリネはお姉さんの後について解体場へ行く。
なぜかマイルスとエリザベートも着いてくる。
そしてなぜかギルド内にいた他の冒険者もぞろぞろと着いてくる。
『あれ、てっきり荷車か何か取ってくると思ってたのに手ぶらで着いてくるの?』
お姉さんはそう疑問に思っていた。
『わざわざ解体場まで行くなんて、ユリネさんは何を討伐したんだろう?』
マイルスはそう思っていた。
『何か知らないけど面白そうだから着いて行こう。』
エリザベートはそう思っていた。
『あの聖騎士団長マイルスにブラッディーエリーの2人が着いて行くぞ。何が起きるんだ?』
冒険者たちはそう思っていた。
『2人とも着いて来てくれるなんて、なんて親切なんだろう。』
ユリネはそう思っていた。
皆が皆、思いを心のうちに秘めながら解体場に到着した。
「ユリネちゃん、ここなら大丈夫そう?」
「はい、ありがとうございます。」
そうお礼を言いながら、亜空間から討伐した魔物を取り出す。
他の者たちにしたらそれはもうかなり異様な光景であった。
否、それは地獄絵図であった。
小柄な少女は笑顔で空を掴むと、次々に討伐難易度B級、C級の魔物を取り出し、あっという間に少女の目の前には魔物の死体の山が出来上がっていた。
ユリネの亜空間にはホーンラビットではなく体長2mを超えるデスベアーが1、2頭。それだけではなく、さらには聖騎士たちが襲われていたシルバーファングの上位種である討伐難易度B級のヘルフレイムファングすら入っていた。それ以外にも討伐難易度B級、C級クラスの魔物がごろごろと入っていたのである。
それもそのはず、ユリネとコクヨウはA級冒険者でも普通は近づかない危険な死の森から来たのである。
それどころか奥に行けば行くほど魔物の難易度が上がるはずの森の最深部から旅を始めていたのだから尚更であった。
流石に討伐難易度A級やS級ともなるとユリネとコクヨウの異様な潜在能力に恐れて襲って来なかったが、B級以下になるとその潜在能力を見抜くことはできなかったらしい。
その結果がこの有様であった。
「あの…ユリネさん…これ、あなたが全部討伐したの?」
本来なら収納魔法だけでも腰を抜かすレベルで驚かなければいけないはずなのであるが、事切れた魔物の山のインパクトがそれを上回った。
いつの間にかユリネちゃんからユリネさんに呼び方が変わってしまった受付のお姉さんのこの質問い対して、ユリネは
「1人じゃないですよ、コクヨウと一緒にです。」
『コクヨウってそのヘビでしょ。戦う時は剣だよね。実質1人じゃない。』
お姉さんは心の中でそう突っ込みを入れながら
「こんだけの数を討伐するって、ユリネさんこの街に来るまで何日旅してきたの?」
「え?1日ですよ。昨日1日です。」
「昨日森の中で目が覚めて、街道目指して森の中歩きながら討伐してきました。」
真実を語っているはずのユリネの発言がお姉さんには意味不明過ぎて、お姉さんはキャパオーバーになってしまった。
『うん、これ以上考えないことにしよう。』
他の冒険者も
『うん、意味がわからない。』
そんな中、マイルスだけは
「うわ〜さすがユリネさんだ。」
とユリネの発言を全面的に受け入れていた。
「いやいやいや、おかしいでしょ。」
エリザベートが突っ込む。
「こんなことA級冒険者ですらできるかどうか、しかも1日でって。
そんなの死の森にでも行かない限り到底無理だって。」
エリザベートのこの発言に
「確かそんな名前の森でしたよ。」
とユリネは答える。
「確かにユリネさんに助けてもらった街道は死の森から近いな。」
とマイルスはつぶやいた。
「助けてもらってどういうこと?」
エリザベートのこの質問に
「聖女様の馬車が街道でシルバーファングの群に襲われたんだよ。
通常の群より大規模でね、正直ユリネさんが助けに入らねければ最悪の事態も…」
そうマイルスは答えた。
「僕はその時のユリネさんの戦闘を見ているからね。あれは最低でもB級冒険者の実力はあると思っていたけど、これほどとは。」
この3人のやり取りを聞きながら受付のお姉さんと周りの冒険者たちの気持ちは一致した。
『うん、意味がわからない。』




