Next stage 溶融サテライト
(ラニアケアの彼方から→溶融サテライトに続く小話)
目を瞑れば思い出す、惑星エライユの青と紫の空に散らばる色とりどりの星々。
沢山の空を見てきた。
故郷の惑星ティースの砂色の空。
エライユは向かう船から見た宇宙。
惑星ゼノン、ナルフの空。
そしてエライユの…………なんかちょっと、ゆめかわな空。
「変じゃないかな……」
リリーは自信なさげに鏡に映る自分の姿を見つめた。
「変じゃない。よく似合っている」
リリーの両肩に手を乗せ、ヴィントが肯定する。
海色の制服は、魔法都市ロマネストの学園の制服だ。
春から数えて、夏、秋とエライユで過ごし、重い腰を上げてようやくロマネストまで来た。
「いじめられたらどうしよう……」
ここに来て不安が募るリリーは下がり眉で呟いた。
「画鋲と手袋があるだろう」
「もう!そんなの使わないです!」
リリーはぷんぷんしてヴィントに軽く拳を当ててじゃれた。
エライユに残るメイドたちは「靴箱の靴に画鋲を入れられたら、入れ返すのよ!」と山ほど画鋲をくれた。
……入れられるのも怖いが、入れ返すのも怖い。
エライユの王・ラーニッシュは「嫌な奴はこれで殴りつけろ」とつけると何か拳がトゲトゲする手袋をくれた。
……ケンカに行くんじゃないんだから。
本当はリリーはそんな事しないという事が分かっていて、分かっていてもそうやって渡してくるのだ。
彼らなりの餞別と分かってしまうほど、付き合いは濃くて長い。
「……用事が済み次第なるべく早く追いかけるから」
ヴィントはそう言うとリリーの胸元のリボンを正し、そのままそっと指先で頬に触れた。
リリーはふふ、と笑って頬の手に自分の手を重ねると、
「来るまでに私が学年で最強になって出迎えますね」
と言った。
頼もしい、と目を伏せて優しく笑うヴィントが愛おしく、また、離れてしまうのも寂しい。
行きたくない、同じくらい、行きたい、の気持ちもあった。
クルカンから送られた留学推薦書を持って行くことを決めたのは、言いたい事が山ほどあるからだ。
「まず、緊急時に困るので古代語で本を書くのはやめてって会って言わないと」
「手袋をつけて言わないとな」
「もーっ!」
ふたりでひとしきり笑って。
向き合って、口付ける。
「……なるべく早く、来てくださいね」
「すぐ行く」
沢山の空を見てきた。
でももう、惑星ティースにいた頃の、孤独で胸が押しつぶされそうな日々に見上げていた空とは違う。
ロマネストの空はどんな空だろう。
ヴィントに名残惜しげに別れの挨拶を告げ、リリーはロマネストに降り立った。
(更新しようと思って忘れてたやつ……!)




