曼珠沙華の道
ある日の昼過ぎ。お昼ご飯を食べてお腹が落ち着いてきた頃。私は、散歩に出掛けた。
近所の森林公園を歩く。今日私は仕事が休みで。天気がよくて風が心地良いこんな日は、森林公園で散歩している。
平日の森林公園は静かで。日曜日は親子や子供たちがワイワイしてるけど、今日はほとんど人がいない。
ひとりゆるゆると散歩していると。
「あれ?こんなところに道なんてあったかな?」
鬱蒼とした木々の間に、細い道があった。
知らない道だ。
昔から何度もこの森林公園を利用しているが、こんな道見たことがない。確かにその道は、人目につきにくい森林公園の端っこに然り気無くある感じだけど。でも、何度も歩いているのに気づかないなんてことあるだろうか?
私は気になって、恐る恐るその道に踏み込んだ。そこだけ何故かアスファルトが引かれておらず、砂利道になっていて。その砂利道の両側には、真っ赤な曼珠沙華が咲いていた。まるで、私をこの道の先に誘うかのように咲く曼珠沙華。美しいけど、でもどこか不気味で。
曼珠沙華続く道を歩く。
すると、目の前に小さな池と古びた橋が見えてきた。曲線を描く橋の向こうには、びっしりと曼珠沙華が咲き乱れていた。
私は得も言われぬ恐怖を感じつつ、でも恐怖心よりも好奇心が勝り、その橋を渡ろうとした。
その時。
「─行ってはならぬ」
背後から男とも女とも言えない声がして。後ろを振り向いたけど、人どころか人の気配も無く。
「…やっぱ、橋渡らないで帰ろう」
私は気味が悪くなり、もと来た道を引き返そうとした。
その時だった。
ア ト ス コ シ ダ ッ タ ノ ニ …
背後から、耳元で。
さっきの声とは違う誰かが囁いた…