愛なき結婚から逃げたいなあ
500文字制限企画に参加予定の物語です。
地元では有名な豪邸のベランダで、貴子は月を眺めている。
貴子は、真という名の男性と明日、結婚式を行う。
23才の貴子より3才年上。外見、普通。性格、優しい。収入、高。
嫌いじゃない。好きでもない。
今どき、親が結婚相手を決めるなんて……。
お嬢様の私には、おぼっちゃんの真があてがわれた。両家の力関係や思惑があるのだろうが、もうどうでもいい。
悪くはないけど、つまんない男。私はつまんない男と結婚して、つまんない人生送るんだな。
ため息をつく。
かと言って、映画みたいに駆け落ちしたり、結婚式の最中に私をさらってくれる男性もいない。
「そんな男捨てて、俺のとこ来いよ!」
私には無縁の言葉。
ベランダから自室に戻って、ベッドに横たわる。
私には、全てを捨ててしまえるほどの勇気も理由もない。諦めよう。
✩
翌朝、目を覚ますと屋敷は大騒ぎになっていた。真の両親が来ているようだ。父の怒声も聞こえてくる。
貴子は枕元のスマホを見た。
メッセージ1件。
「すまない。やっぱり愛がない結婚なんか出来ない」
ゆっくり起き上がり、ベランダに出た。背筋を伸ばす。
「捨てられたのは私かあ」
何故か笑顔になっている。
「……やるじゃん」
朝日が心地良かった。
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