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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第22章 血戦
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第457話 レストランの血戦1

「よし、行くよ。姐さんが安心出来るように少佐のやつをぶっ殺すんだ!!」


 モルガーナが叫ぶと、転移魔法陣からレストランの通路に飛び出す。

 ルイーザは騒ぐようなことはしないが、やはり普段よりもずっと緊張した顔で後に続き、トパーズもしなやかに魔法陣から躍り出る。


 まずは少佐を片付ける。

 とっさにそう作戦変更した。トパーズは皇太子夫妻の護衛に回す手もあったが、相手が少佐となると油断は出来ない。全力で片付けてから、皇太子夫妻のもとに駆けつけようとモルガーナが決心した。

 

 あらかじめ、出現場所に予定されているレストランは建物の間取りと主要な場所の内装などはねずみ型ロボットが画像を撮影してきて、それを頭に叩き込んであるので、もともとの予定の出現場所とは違っていても、さほど迷うことはない。

 それにセバスチャンの誘導もあるし(スマホ型魔道具から進歩してイヤホン型魔道具を作成して使い始めたのだった)、不安はない。


「おっと、ごめんよ」


 いきなり現れた2人組の異形の姿(P90もどきを構え、現代日本の戦闘服を模した戦闘服に身を包み、さらに顔をマスクで隠している)と黒豹の姿に、たまたま通路を歩いていたウェイトレスは持っていたお盆を落として、口をパカンと開ける。

 そして、2秒ほど固まっている間に2人が通り過ぎ、それから「キャー!!」という悲鳴をあげる。

 これでレストラン内で騒ぎになるだろうが構わない。どうせ、少佐と銃撃戦になれば、大騒ぎになるのだ。


「トパーズ! ひと型になっている方が良いよ」


「そうか。そうかもな」


 フロリアのお供としての黒豹は一部で有名になっていることは、トパーズも自覚しているので、フロリア達の関与を隠したいのであれば、変化している方がよいのは賛成だった。

 スルリと若い頃のアド(アダルヘルム王)の姿になった。


「皆様、他の人間も転移してきました。少佐の転移魔法を使っている様子で、現在、7……9……全部で10名です。あちらがわの世界の武装をしています」


 セバスチャンの緊急連絡。


「げげっ!!」


 すでに少佐がいるはずの通路には曲がり角一つというところまで接近していたモルガーナはとっさに立ち止まる。

 同じ内容の連絡を受けているソーニャも止まるが、トパーズに止まるように指示する暇がなかった。


 トパーズは大きな身体に変化しながらも、まったく動作が鈍くなることはなく、2人の前を走っていたので、さすがの霊獣の運動神経を持ってしても、後ろで娘たちが止まるのを察知して、自分も止まるのが一歩遅れて、その分身体が角から出る。

 もっとも、トパーズとしては小娘2人を守ってやるつもりで、モルガーナと連動はするつもりでも、部下として指示に忠実に従う積りはなかったので、その"つい一歩"を踏み出してしまったという面もあるのだけど。


 そして、そのトパーズの身体に向けて、銃撃が集中する。

 もとより、ウェイトレスの悲鳴の前に少佐は大きな気配が3つ急速接近しているのは察知していた。

 それで、つれてきた部下たちに戦闘を命じていたのだ。


 耳をつんざく銃撃音。

 この部下たちはC国で作ったカラシニコフのコピーを使っていた。

 一瞬で数百発の弾丸が襲い、トパーズは慌てて角の奥に引っ込んだ。

 その一瞬で数十発程度は命中している。

 残りは壁にあたり、土煙を上げながら砕けていく。


「驚いたな」


 数十発の銃弾に引き裂かれたアドの姿はボコボコに変形し、半ば人の姿をとどめていない。さすがにこの霊獣は出血もせずに、粘土のかたまりに小石が沢山ぶつかったみたいに凹んでいる程度だが、服装の方はズタズタになってしまったのだった。


 銃撃が止んだタイミングで、今度は小石ぐらいの塊が転がってきて、ズタズタの壁にあたり停まった。

 手榴弾である。


 トパーズは以前にグレートターリ帝国の後宮であるアリスラン大宮殿で、少佐と遭遇戦になった時に、この武器のことは知っていた。

 

「爆発するぞ!」


と言いながら、その身体を黒い膜のように広げて、モルガーナとソーニャの前を覆い隠すようになった。

 

 ギリギリのタイミングで間に合い、膜が張った次の瞬間に手榴弾は爆発した。

 爆風の逃げ場は無く、少佐達のいる方向と、モルガーナ達のいる方向に分かれて襲いかかる。


 少佐のほうはわかっているので、ドアの影なりに隠れている。


 モルガーナはブルーレイなりで見ていたのでこの手榴弾のことは知識としては知っていたが、実感としては知らなかった。

 トパーズがついていなかったら、ここで2人の魔法使いは即死するか、戦闘不能に陥り少佐とその部下たちに殺されていたことだろう。

 薄い膜にしか見えないトパーズの身体は、一瞬のうちにモルガーナ達の一歩手前で通路をほぼ塞いで手榴弾の爆風も爆炎も、わずかに塞ぎ切れなかったところから漏れたのみで、肝心の少女たちに怪我をさせるようなことは


「く、く、クソぉお!!」


 爆発から1秒後、モルガーナがおよそ女らしくない叫び声をあげる!!


「トパーズ! 通して!!」


 まだ爆発の余波も収まっておらず、煙で視界も悪いというのにモルガーナは反撃にうって出ようとしていた。


 トパーズは、フロリアも戦闘時にはこのぐらいの殺意を持って戦って欲しいものだ、と思いながら、要望に応えてやる。


「二発目、三発目が来るかもしれぬぞ」


と警告は出したが。


「私だって少しは防御魔法ぐらい使えるんだから!」


 モルガーナはそう怒鳴ると、通路の角(あっという間に、銃撃と爆風に晒されて、ボコボコになっていたが)からP90を突き出して、一斉射を放った。


 軽快な発射音が連続したかと思うと、モルガーナがヒョイと身体を角から戻して、身を隠す。

 それと同時に、複数の連続した銃撃音が響き、手榴弾の威力で建物が崩れ大穴が空いた壁のあたりに、着弾の小さな土煙が幾つもあがった。

 

「簡単に当たるもんか!」


 モルガーナはそう言うとちらりと後ろを見て、ソーニャに頷くと、再び銃声がやんだ通路にP90を突き出して、数十発程度乱射する。

 いくら魔法による補正が掛かっていても、さすがに碌に見ないで撃っていては当たるわけもない。

 だが、その間にソーニャは少し通路を後ろに下がると、個室に入る引き戸を開けて中に飛び込む。

 その個室は、モルガーナ達のいる通路と直角に交差する両勢力の銃弾が飛び交う通路、さらに少佐達が隠れる角の奥の通路が、部屋の三方を区切っているという配置になっている。

 あらかじめ、レストランの間取りを頭に叩き込んであるソーニャにはそれがわかっている。そして、このレストランの部屋の壁は厚みも無ければ、耐魔法、耐物理衝撃の魔法も掛かっている訳でもなかった。

 そればかりかどちらかといえばパーテーション程度の頑丈さしか持ち合わせていない。きっと宴会などで参加人数に合わせて移動出来るようにしてあるのだろう。


 ソーニャは素早く一歩踏み出す。

 一歩以上は踏み出さない。

 少佐はこちらがわの魔力は感知している筈。あまり部屋の奥まで入ると意図を察知される。

 少佐の部下は魔力感知が出来る者がいるのかいないのか、こちらを探ってくる気配は一つきりであるが、油断は出来ない。


 ソーニャは薄っぺらな壁に向かってP90を構えると斉射を加えた。

 無属性の魔力弾は壁を突き抜け、その奥の敵に襲いかかっていく。


いつも読んでくださってありがとうございます。



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