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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第20章 雨の中の激闘
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第411話 魔物津波2

「あとどれぐらいで町に到達するの?」


「10分ほどになります」


 フロリアは慌てて起きると「私も出る。着替えだして!」と叫ぶ。それでモルガーナ、ソーニャもパッと目を覚ます。


「どしたの、フィオ?」


「あ、ええと……ブラウニー、どれぐらい経った? え、1時間? うん、何でもありません」


 道理で頭痛がしたはずである。


「なんでも無いこと無いでしょ。ここまで来て、隠し事なんてヤメてよ!」


「実は、ワイバーンが襲来してきたんです」


「へえぇ! そりゃ楽しそう!!」


 モルガーナの気楽さは、切羽詰まってきた時には逆にありがたいのかも知れない、とフロリアは思った。


「ご主人様。ご用意いたしました」


 双方向収納袋にベルクヴェルク基地から直送の新しい戦闘服が届き、フロリアが開けてみると……。


「セバスチャン、なにこれ?」


「戦闘服でございます」


「ますます、裾が短くなってんじゃない!! でレースとか刺繍とかハートマークとかリボンとか戦闘に必要無いし、色合いもますます鮮やかになってんじゃないの!!」


「うわぁ~、かわいい!! フィオちゃんに似合いそう」


「てか、背中のそれって羽根だよね。半透明ですごくキレイ。ホントに精霊みたい。精霊女王だね!」


「ほ、他の服を出して! あ、そうだ、グレートターリ帝国の首都を攻撃した時の戦闘服有ったでしょ。あれが良い。ヘルメットも有ったし」


「既にご主人様は、それぞれの町の方々に視認されております。あまりに印象が変わるのはいかがなものかと。こちらのコスチュームは最初のものの強化フォームをイメージしてデザインされておりまして、背中の羽根がポイントでございます。

 どちらの町でも妖精かと思われておりますので、そのままの印象を保った方がよろしかろうと存じます」


「妖精はちっちゃいんだよ! 人間大じゃないよ!」


「普通の人たちはそんなコト知らないよ! よく似合ってるじゃない」


「……」


「あと7分でワイバーンが到着します」


「よおし。私とソーニャは先に出るよ! でも、姐さん達を含めても、空を飛ぶ連中と戦えるのはフィオちゃんだけだからね!」


 そう言うと、モルガーナはソーニャを伴って、飛び出して行ってしまった。


「みんな、ひどい……」


 結局、フロリアはいつかきっと仕返しをしてやると深く心に刻みならが、セバスチャンから提案されたコスチュームに着替えて、亜空間をでたのだった。


 外は流石に1時間前に引っ込んだ時と変わらない。夜が明けだすにはまだ3~4時間は掛かるだろう。

 雨も一時は小降りになってきたかと思ったのだが、また本降りになってきている。


 これ、大鷲は飛べるのかな?


 フロリアはモンブランを召喚して、聞いてみる。

 飛べないとなるとかなり困る、と思ったのだが、どうにか大丈夫だろうとの返事。

 ただ、いつもの様に軽快な機動は無理だと思う、とのこと。


「それで構わないからお願い。ありったけの防御魔法と攻撃魔法を集中して、一気に片付けるんだ!」


 大鷲を召喚して貰い、いつものように背中に乗る。大鷲はすぐに飛び立つが、やはりいつものような力強さが感じられない。

 そもそも、同じ猛禽類でもフクロウやミミズクとは違い、鷲は夜行性では無いので夜間視力は良くない。そしてかなり激しい雨。

 この状況でワイバーンと戦闘とはかなり分が悪い。


「ごめんね。他に手段があれば良いんだけど」


 鷲の背中を撫でる。この大鷲は魔物の一種なので、普通の鷲と同列では無いが、それでもやはり不利な条件であることは変わり無い。


「ご主人様。カラスくんがワイバーンの中の一頭と接敵しています。残り3頭のうち、1頭は戦闘域を抜けてこちらに来ます。やはり町の明かりに引き寄せられているようです。残り2頭は多少遅れ気味ですが、数分程度で到着する模様です」


「判った。まず最初の一頭からだ!!」


 遠くの空で光が輝き、炎の奔流が走る。

 あの場所でカラスくんが戦闘しているのだろう。


 そして、その戦闘域を抜けて滑るように接近する黒い影。

 大鷲はその黒い影にまっすぐに向かう。

 ワイバーンはすぐに気がついたようで、魔力がブワッと膨らむのをフロリアは感じた。


「怒ってる、怒ってる!」


 フロリアは背中がゾワゾワしてくるのを感じた。

 いきなりブレスは放たずにその強靭な肉体で体当たりをカマそうという積りなのだろう。確かにいくら大鷲でもワイバーンと正面衝突したら勝ち目は無い。


 だが、フロリアは「お願い、こちらもまっすぐ突っ込んで!」と大鷲に頼む。

 大鷲はフロリアを信じていて、躊躇せずにワイバーンに突っ込む。

 フロリアはベルクヴェルク基地で以前に貰った魔導書を収納から出すと、パラパラと開いて、魔法の威力を増加して、展開する場所を自分自身から離れた場所を選べる魔法陣のページを出す。

 モンブランは当初はその脇を飛んでいたが、フロリアとの念話した結果、すっと上空に上がる。元より、モンブランは全体を俯瞰して効果的に眷属を指揮するのが得意である。もっとも、今は大鷲しか眷属を召喚していないが。


 ワイバーンは大きく口を開けて、金切り声のような叫び声を上げる。威嚇のようだ。

 まだブレスを撃つ積りは無いようであった。

 

 真正面からの衝突。

 フロリアは大鷲の前面に分厚い防御魔法を複数、展開する。

 防御魔法の先端を尖らせる。


 その先端部分にワイバーンがまともにぶつかる。

 フロリアの膨大な魔力を更に強化した防御魔法だが、流石にワイバーンを簡単に停められない。


「マジ!?」


 防御魔法の1つ目、2つ目が砕け、3つ目も砕ける寸前で、ワイバーンが斜め方向にそれて行く。

 防御魔法の形を先端を尖らせたおかげで、傾斜装甲のような形でワイバーンがそれていった。


 フロリアを乗せた大鷲は反転する。ワイバーンの方もやや降下したものの、その場に留まり反転して、その頭は上を睨みつけている。

 大鷲は基本、空中に停止は出来ないが、ワイバーンは停止可能。だが、敵よりも低い位置にとどまるのは我慢できないらしい。

 

 翼をバサバサを羽ばたかせて、高度を稼ぐ。

 口のあたりに魔力が高まっていくのが判る。

 交差したことで、現在の両者の配置だとワイバーンの方が、2つの町に近い。だから、ワイバーンが当初の目的どおり町に直行してブレスを吐かれると一発で大被害が出る。

 その方がよほどフロリアにとってはダメージだったのだが、ありがたいことに魔物は魔物らしく眼の前の敵しか見えないのだった。


「次はブレス? こっちもどんどん行くよ」

いつも読んでくださってありがとうございます。



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