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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第20章 雨の中の激闘
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第410話 魔物津波1

 まず最初はアドリアとルイーザ。


「悪いけど、年寄りから先に休ませて貰うよ」


 フロリアの元に戻ると、すぐに亜空間に入る。

 ただ、状況が変化したらすぐに呼び出すように言うのを忘れたりはしない。

 

 これでマジックレディスはフロリアと魔物討伐に復帰したモルガーナとソーニャが外で戦闘に従事する。

 魔道具の笛を使った魔法使いは、モルガーナの手からおっつけ到着した機動歩兵に渡され、その際に双方向収納袋を通じてベルクヴェルク基地から届いた、魔法使いでも昏睡させる魔道具によって眠らされたのだった。

 

 マジックレディス以外の戦力としては、機動歩兵。ベルクヴェルク基地で用意出来る機体数の半分を戦場に投入しており、残り半分は待機させてある。

 戦場の機体に魔力切れが近づくとともに、入れ替えていく予定である。


 フロリアのゴーレム達はもうすぐリキシくん達は魔力切れになる。

 フロリアが出向いて回収するのは無駄が大きいとして、こちらも魔力切れに伴い、ねずみ型ロボットが回収してベルクヴェルク基地に移動して、魔石を交換する。

 リキシくんは機動歩兵に比べると、作りが単純故に魔石を取り替えてごく基本的な整備をすればすぐに戦線復帰が可能である。

 機動力に欠けるため、2つの町の大門の防御程度しか出来ないが、これもある程度の長時間稼働に寄与している。


 そして、トッシンは少しだけアルザーレンで使ったが、それ以降はまあ収納に仕舞ったままである。

 トッシンの持ち味はローラーダッシュを使用した機動力にあるが、これを使うとだいたい数分から10数分程度しか魔力が保たない。

 それでいて、機動歩兵には機動力で及ばない。

 

 トッシンはフロリアとアシュレイが心血を注いで作り上げた、革新的なゴーレムだったのだが、古代文明の技術レベルをそのまま維持したベルクヴェルク基地の製造品に比べるとどうしてもかなり見劣りしてしまうのは避けられなかったのだ。


「なあに、奥の手、奥の手」


 フロリアは半ば悔し紛れにそう自分に言い聞かせていた。


 そしてトパーズとその眷属たち。

 トパーズはフロリアの影に潜んだままで、魔物の群れにフロリアが突っ込む時だけ外にでてくると、フロリア以上に暴れまわり、死骸の山を築くと「雨は好かぬ」と言ってまた影に潜んでしまう。


 眷属たちは基本的に2つの町の周囲に居て、リキシくんを抜いて城壁に接近する魔物を屠り続けている。

 最初は、眷属たち自身も魔物ではないかと恐れられていたが、次第に町を守っていることが周知されるとむしろ城壁の上から声援が送られるようになっている。

 

 もちろん、町の住民たちも送るのは声援だけではなく、城壁の上から弓矢はほとんど矢が無いため使えないが、投石のための石が鉱山町らしくたっぷりとあって、城壁に取り付いた魔物にとってはかなりの脅威になっている。

 さらに、大門が歪んでいて、大きなすき間があるローレンブルクの方では衛士と決死隊に志願した坑夫が手に手に得物を持って、すき間から出て城外で魔物との戦闘も行っているのだった。 


 モンブランとその眷属は流石に豪雨の中ではその実力が発揮できないので、一時送還してある。モンブラン自身は、フロリアの大仕事中に送還されるのを嫌がったが、やがて晴れてから活躍してもらうので、それまでは体力を消耗しないように、というフロリアの説得に応じた形になっている。


 ねずみ型ロボットの調査により、魔物が集まってくるポイントが出来上がる度に、近くにいる、マジックレディスのメンバーか機動歩兵が急行して叩く、このパターンでスタンピードに対応していく、という形が出来上がっていった。


 そして、数時間。

 いくら魔物が比較的弱いゴブリンやオーク、魔狼ばかりで、思い出したようにオーガがいるという程度であっても、寒さと雨、暗さの中で東京23区の2倍程度の広さの場所を駆け回るのはやはりキツイ。


「ふええ。もうそろそろ限界だよお」


 モルガーナがセバスチャンにギブアップを連絡したことで、交代の潮時となった。


「ご主人様、亜空間を開いて下さいませ。ご主人様はちょうど、モルガーナ様、ソーニャ様の中間程度に居られますので、そのままその場所に。お二人を誘導致します」


 セバスチャンの言葉で亜空間の扉を出して開くと、アドリアとルイーザがすぐに飛び出してくる。

 服装は新しい戦闘服に着替えている。ダークグレーの戦闘服に魔法付与したヘルメット、タクティカルベストを模したベストなど実用本位の装備である。

 流石にベテランの冒険者らしく、数時間の休憩で効率よく疲労を取っていて、万全の状態に見える。


 2人はそれぞれ、モルガーナとソーニャと守備範囲を入れ替わるべく、二手に分かれてたちまち夜の闇に消えていく。


「少し小降りになってきたっぽいね」


「はい。明け方には雨も止むものと思われます」


「そうしたら、けっこう楽になりそう」


 そんなことを話している間にモルガーナが戻ってきた。


「いやいや、フィオちゃん。しんどい戦いだよ」


 しんどいしんどいという割りには余裕のありそうなモルガーナが亜空間に入り、ほどなくソーニャも戻ってきた。


「ああっ!! ソーニャ、ひどい!」


 思わず叫ぶフロリアにソーニャは不思議そうな顔をする。


「私にばっかりこんな恥ずかしい衣装を着せて、自分はちゃっかり着替えてるじゃないですか!!」


 あ、そう言えば、寒さに耐えかねて魔法少女のコスチュームから戦闘服に着替えたのだったと思い出す。


「フィ、フィオちゃんは、しっかり魔法少女してるのね。ほとんど雨にも濡れてないし、魔力が凄いなあ……」


「ごまかさないで下さい!!」


 そんなことを言いながら、2人も亜空間に入っていく。


「少し待て、フロリア」


 フロリアが亜空間の扉をくぐる前に、トパーズがフロリアの影からでてくる。


「おまえが休んでいる間、私が少し暴れてやろう。安心して寝てくると良かろう」


 そう言い捨てると、トパーズの黒い体があっという間に夜の闇に消えていった。


 こうして、フロリア達3人は亜空間に入るとすぐに衣服を脱ぎ捨てて、風呂場に直行。

 大きめに作ったお風呂は3人入っても問題なく、十分に温まるとくつろいだ格好になって、ブラウニーが作る軽食を食べて、すぐに眠る。

 3時間から4時間程度は眠れる計算になる……。


***


「ご主人様、ご主人様!!」


 セバスチャンの声。

 驚いて飛び起きる。

 セバスチャンの念話である。


「いったい、どうしたの?」


 無理に起こされた所為か、枕から頭を上げる時にズキンと頭痛がした。


「ご主人様、ワイバーンが4頭、襲来しつつあります」


「ワイバーン!! 空、飛んでるの?」


 思わず、当たり前のことを聞いてしまう。


「はい。カラスくんだけでは対応に時間が掛かると存じます」

いつも読んでくださってありがとうございます。



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