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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第18章 魔境で
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第375話 最奥部

 グレートボア、双頭蛇、バジリスク、ピュトン、サラマンダー(火属性の妖精とは同名だが、こちらは妖精ではないトカゲの魔物)グリーンリザード……割りと蛇系、トカゲ系の魔物の割合が多いのは、大黒龍の影響がいまだに残っているからなのかも知れない。

 

 もちろん、それだけにとどまらず、オルトロスやケルベロス、ハルピュイア、タランチュラ、ビッグビーなど様々な魔物が湧き出てくる。

 普通は魔物の森の中では食物連鎖の頂点に立つオーガも、この森の最奥部では小さくなっていて、あまり見かけない……筈であったが、


「あ、またオーガだ。今度はオーガジェネラルだね」


 本来は群れを率いる上位種が単独でうろついているのを何頭か狩ったのだった。


「やっぱり異常だね。前に来た時にはさすがにオーガの上位種が単独行動なんてしてなかったし、そもそもこんな数は居なかったよ」


 アドリアも首を捻っている(狩りの手は休めないが)。


 新しく武器として加わったグロッグ型の拳銃の魔導具の威力は絶大で、すでに多くの魔物を絶命させている。

 

「これ、魔力消費量も抑えられるし、凄い武器だよ。うっかり、外国に広がったら冒険者って言うよりも、軍隊が欲しがるだろうね」


「そうですね。他の人がいる場所ではちょっと使えない武器ですよね」


 そんなことを言いながら、グロッグが加わった場合の戦闘スタイルを検証していく。


 もっともトパーズはあまりそんなことに興味は無いらしく、フロリア達の探知魔法の範囲から外れるようなことはしないが、別行動で魔物を狩りまくっている。

 そろそろ休憩に入ろうか、というころに戻ってきて、首輪に付与した収納袋を開いて、ドサドサと魔物の一山を出して見せる。


「良い運動であった。ここは気に入ったぞ、フロリア。一年ぐらい、ここで過ごそうではないか」


「さすがにそれは勘弁して欲しいかな」


 トパーズの獲物を自分の収納に移しながら、フロリアは苦笑いする。

 一通り、近くの魔物を狩り尽くしたし、別のパーティの気配が探知魔法の端っこに引っかかってきたので、そろそろ休憩を取ることにする。


 それで、亜空間に入ろうとしたところで、


「あ、待って。なんか凄いのが居る。あっちの方だ」


 モルガーナの声に皆、探知魔法を飛ばす。


「これは驚いた。モルガーナ、これなんだと思う。私も出会うのは2度めだ」


 アドリアも興奮している。


「えー、分かんないよ。大物なのは判るけど」


「トロールだ。久しぶりにトロール狩りだぞ、フロリア!!」


 トパーズがあっさりと答えを言ってしまう。


「トロール!! って、ホントに居るんだ!?」


「トロールの魔石がフライハイトブルクの買取表に有ったじゃないですか。さすがに伝説上の魔物の素材に値段はつけませんよ」


 ルイーザは落ち着いている。


 一行は、あまり声を落とすこと無くトロールに接近していく。相手は極めて強力な人型魔物の頂点である。人間の声程度におびえて逃げることなどありえないのだった。


 アドリアやルイーザは以前にもトロールを討伐した経験があるので落ち着いている。そして、実はフロリアもトロールを討伐した経験がある。というよりも、フロリアがアシュレイとともに作り上げたゴーレムのトッシンの性能確認のために、アオモリの奥で見つけたトロールをひき肉にしたことがあったのだ。

 そして、トロールの魔石を単結晶魔晶石に変換させた事がある。

 ああ、そう言えばその単結晶魔晶石が無かったらベルクヴェルク基地に到達することも無かったのだった。

 

「あ、見えた。でかいねえ」


 木々の合間から、土色の胴体が見える。

 動作はゆっくりしているが、のろまではない。その気になれば、巨体にもかかわらず、けっこうな速度で動けるのだが、人間ごときにその気にならないということなのだろう。


 ゴーレムのトッシンは万全の整備をした状態で時間停止状態の収納に入れてあるので、それを使えばあっという間にケリがつきそう。いや、この最奥部はアオモリとは違って、地面が軟弱であるし、木々の密集度も違う。これではトッシンの体当たりは出来ないであろう。もっとも、体当たりが使えなくとも負ける気はしないが。


「それじゃあ、ゴリゴリ削ってくよ」


「はあい」


 今回はマジックレディスの戦闘訓練も兼ねての事である。トッシンの出番は無い。

 フロリアを除くメンバーはサッと四方に散る。


「よし、私も」


「トパーズ! 1人で倒しちゃダメだよ。まず、みんなが攻撃するまで待ってね」


「うっ。……まあ、よい。次に出たときには私にやらせろよ、フロリア」


 そう言うと、トパーズはゆっくりとトロールに歩を進める。

 フロリアは1人になるが、攻撃に参加せずに防御魔法と不意打ちに備えた探知魔法に魔力を集中するので、まずは危険は無いであろう。

 それが分かっているのでトパーズもフロリアの傍を離れるのだった。


「それじゃあ、行くよ」


 アドリアの号令で、マジックレディスのメンバーは一斉に攻撃魔法を放つ。

 比較的、攻撃魔法の不得意なモルガーナだけは最初からグロッグを撃つ。

 アドリアが全力の雷撃を放てば、一撃でトロールを倒せる公算は高いが、その一発で自身が戦闘不能になるし、素材が傷むので使わずに倒したいところである。


 トロールは身長10メートルほどの巨体で、全裸。オーガのように武器を持つ習慣は無い。

 体は岩石で出来ているのかと見紛うほど、ゴツゴツした土色の皮膚で個体によっては背中あたりから蔦が生えていたりする。

 人型の魔物の中では群を抜いて大きく、強い。体は横に広くてどっしりとしていて足は短足であるが、その分、腕は太く長い。

 この腕を振り回すのが、トロールの攻撃法であり、細い木の幹など一撃でへし折れる。もちろん、人間に直撃したら即死を免れないであろう。


 しかし、トロールの武器はこれだけではない。

 本気になれば、その体型、そして普段の動きからは想像も出来ないほど早く走れるのだ。いわゆるナックルウォーキング的な走り方になるのだが、強靭な脚力と腕力を活かして、跳ぶような走り方であっという間に敵との距離を詰めることができる。


 そして、奥の手とも言うべきなのが、土魔法を使うことである。

 ただし、ロックランスを作って敵を撃つ、……といったような繊細で複雑な魔法の使い方は出来ない。

 石と言うよりも岩と呼んだ方がふさわしいほどの大きさの塊を掌の中に発生させて、それをぶん投げるのだ。

 オーガは腕の構造上、ものを投擲することは出来ないが、トロールは投げることができる。いや、腕が長くて強いだけになまじっかな人間よりも投擲能力は上だと言っても良いであろう。


 魔法とグロッグの攻撃を受けて、トロールは怒りの表情を浮かべて、雄叫びを上げる。

 周囲の木の葉がビリビリと震えるほどの迫力で、トロールの怒りの程が伺える。

 マジックレディスの方は森の中であることを考慮して、火魔法系の攻撃魔法は使っていない。ウォーターカッター、エアーカッターあたりをソーニャ達が連発し、アドリアは軽い電撃を入れている。

 もちろん、合間合間にグロッグを撃っているが、魔力弾では分厚いトロールの皮膚を貫くことが出来ず、ダメージは与えていない。


「魔導具は顔を狙え」


 アドリアの指示が飛ぶ。

 それで顔面に魔力弾が集中するようになり、いよいよ怒りのボルテージが上がったトロールは掌に魔力を集中して岩を錬成し始める……。


いつも読んでくださってありがとうございます。



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