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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第3章 ビルネンベルクへ
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第34話 町の衛士たち

「はい」


「私は、この町の衛士隊を預かっているアロイスだ。お前のことはギルドマスターのガリオン殿から、代官様を通して聞いている。――ふむ。魔法使いに絡まれているのか。良かろう、一緒に町に戻るぞ」


「はい。ありがとうございます」


 こうして、フロリアは衛士達と一緒に町の大門に向かう。

 彼らは、町の治安維持が仕事であるので、基本的に町の外には職務で出ることはない。町の外の盗賊や魔物の害は、冒険者が対応し、それで足りない時には領軍が出動することになっている。

 今回は、仕事で近隣の村を回る文官を護衛する任務であったそうだ。

 普通は、そんな仕事に隊長自ら出張ることは無いのだが、今回はその村の中の1つが隊長の出身地であったことから、里帰りを兼ねていたのだ。


 街道沿いに魔法使いのカイの姿が見えたが、男たちに囲まれたフロリアに近づくことはなく、道を逸れて森の中に入っていった。


「ふむ。確かにこちらを意識はしているようだな。跡をつけられたのは間違いないのだな」


「はい。私は少しだけ、魔法使いの気配はわかりますので」


「なるほど。町に戻ったら、すぐに冒険者ギルドに行って、ギルドマスターに報告したまえ。私も代官様に報告を上げておこう」


 大門の門番のフランツさんは採取に出て、すぐに衛士達と帰ってきたフロリアを見て不思議そうにしていたが、衛士隊長が特に何も言わないので黙って通した。

 そのまま、フロリアは冒険者ギルドに行って、ソフィーを見つけて、ギルドマスターに報告したいことがあると言う。

 ガリオンはフロリアをギルドマスターの執務室に招き入れ、事情を聞くとうんざりとした表情を浮かべた。

 これまでにもたびたび、カイは他の冒険者といざこざを起こし、そのたびにギルマスが裁定してきたのだが、この魔法使いは心得ていて、グレーゾーンのかなり黒っぽいところまでやらかすのだが、無条件で処分されるような真似はしないし、証拠も残さない。

 それでガリオンは、カイに対しては警告だけで放置せざるを得なかったのだ。

 カイが貴重な攻撃魔法使いだという点もあって、どうしても処置が甘くなる。


 冒険者ギルドが国際組織として、王国の中で一定の地位を得ているのは、攻撃魔法使いを抱えているから、という側面が大きい。

 しかし、そうした攻撃魔法使いの冒険者は王都や大きな直轄都市、大貴族の領都といった場所に偏在している。伯爵領のさらに領都でもない小さな町にCランクとは言え、魔法使いが居るのは貴重なのである。


「もはや、そんなことを言っていられないか。しかし、カイに付け回されたというのが、お前の勘違いでなければ、どこかからお前が魔法使いだとバレた、ということになるな。

 ま、お前が町に来た時に同行した交易隊はけっこう大所帯だったから、そのうちの誰かから漏れたんだろう。

 当分、町の外には出ない方が良いな。今度こそ、ポーション用の薬草はうちかイザベル婆さんのとこのストックから見繕って貰うぞ。

 それと、カイ以外の冒険者もお前さんが"金のなる木"だと知ればちょっかいを掛けてくるかも知れねえな。町の中なら、どうこうということは無いと思いたいが、やっぱり1人で人気の無いところに行っちゃいけねえ。日が落ちる前には宿に戻って出ないようにしろ」


「はい。ただ、薬草採取を完全に止めてしまうと、それはそれで勘ぐられます。森の街道沿いのところだけで済ませますので、採取自体は続けたいのですが」


 ガリオンはとても渋い顔で考えていたが、「分かった。カイの奴には俺からキツめの警告を出しておこう。それと、目くらましの採取だけなら、2時間程度で良いだろう。採取に出るときには、朝に出かけて、昼迄には戻るようにしろ。もし戻らなきゃ、門番からすぐに俺のところに知らせが来るようにしておく。あと、誰か同行してくれる奴を考えておく」と言った。

 2時間程度で薬草採取などほとんどできないと思うのだが、フロリアは承諾した。

 ともかく町の外にさえ出かけられれば、カイをおびき出すのは簡単である。問題は同行者だが、おそらくはすぐには用意できない。衛士やハンスさんのところの店員という訳にはいかないだろうから、冒険者になるのだが、未成年の見習い冒険者ではカイに対する牽制にはならない。

 一人前の冒険者を充てると、さすがに不自然であるし、それだけの依頼料をギルドの運営費から出せるものでもないのだ。


 とにかく、これで準備はできた。

 カイを叩きのめした結果、讒言でもされたら、ギルドマスターのガリオンと衛士隊長のアロイスからの口利きが期待出来る。真偽の水晶の出番である。


 翌日は朝から小雨が降っていたので、ギルドに行ってソフィーに頼んで、薬草の在庫を見せてもらった。続いて、商業ギルドにも行ったが、どちらにも必要な薬草が無かった。それほど珍しい薬草ではないし、このビルネンベルクのチカモリにも自生しているのだが、ポーション作成以外では使わない種類なので、誰も採取しないのだ。

 こうしたポーション作成にしか使わず、それでいてさほど珍しくもない薬草というものは、薬師が居る町のチカモリで採取可能なので、居ない町で採取して輸送費を掛けて、高くて鮮度が落ちたものを運ぶということをしない。したがって、売れないので誰も採取しないのだ。

 

 なお、ハンスの商会を通してポーションを納入しているが、出来るだけ秘密にしたいというフロリアの意向を尊重し、この町でポーションが納品されているという事実は隠されていた。納品したポーションのほとんどは他の町に出されていたし、町で販売する分についても、他の町から来た体で売られていた。


***


 雨の日のさらに翌日は、朝から晴天であった。まだ、森に行くときの同行者は決まったとは聞いてないが、その方が都合が良い。


「良い日和だな、フロリア」


「うん。やろう」


 今日はカイを森の中までおびき出して、叩きのめすつもりだった。

 大門を出る時に、門番のデレクは「話は聞いてるぞ。気をつけろよ」と言ってくれた。


「いっそ、この後、カイの奴が来たら、門から出さねえでおくか」と同僚のフランクに言っているので、


「いや、そんなことをする正当な理由が無いです。デレクさんが処分されちゃいますから、そのまま普通にしていてください。森の奥にいかなきゃ大丈夫です」


「ああ、分かった」


 デレクはフロリアが大門から出て、数分程度でカイが出ていったので、制止はしなかったが、すぐに衛士の詰め所に報告に走り、そこから冒険者ギルドにも知らせが行った。

 ここまでの連絡体制を敷かれているとはフロリアは予測していなかった。

 自分が如何に町の首脳陣から注目されていたか、彼女は分かっていなかったのだ。せいぜい、初級ポーションを売っている程度のことだと思っていたが、この田舎町では、初級ポーションを作れる、というのはとても大きなことだったのだ。

 

「来たぞ」


「うん。もう少し、森の奥まで行こう」


 まだ、このあたりだと他の見習い冒険者が近い。巻き添えにする危険性がある。

 

 それにしても……とフロリアはげんなりする思いだ。カイがこちらをちょっと威嚇する程度で済ませるのであれば、こちらも本気になるつもりは無かったのだが……。

 日にちを置いて、2回続けて尾行してくるとなると、カイもかなり本気だ。さすがにこちらを殺すつもりだとは思いたくはないが、怪我でもさせて町を追い出したいのだろうか?

  

 実はカイが考えていたのは、フロリアを自分の手下の魔法使いにして、下働きをさせることであった。

 未成年のフロリアと一緒のパーティを組むのではない。そんなことをすれば、討伐依頼や護衛依頼などが大幅に制限される。あくまで、冒険者カイが個人的に追い使う下働きの少女だ。

 冒険者の中には(特に貴族出で金銭的な余裕のある冒険者の中には)、荷担ぎや雑用や、戦闘時の盾役や囮役などに、見習い冒険者を消耗品か奴隷のように追い使う者がいる。

 まともな冒険者はそうした荷担ぎを使うような連中を軽蔑しているが、完全にギルドの規約違反とも言えないのであった。

 

 カイはそろそろ自分の限界が見えてきて、かと言って今更、パーティを組んで活動するつもりはないし、自分を迎えてくれるパーティも無い。それが密かな焦りに繋がっていた。

 そうした時に、この身寄りの無い少女が魔法使いだと知った。しかも、エッカルトの話だとどうも収納持ちらしい。

 小娘に持たしておくにゃ惜しいスキルだ。そういうのは、魔法使いであるこの俺さまがうまく使ってこそ、生きるってものだ。

いつも読んでくださってありがとうございます。



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