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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第11章 自由都市連合
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第233話 後始末は大変

 町に着くまでだって、ただでさえ人通りが多い道。馬車で飛ばせる訳じゃない。でも、とりあえずヘタったアドリアの姿をひと目から隠せることになった。

 アドリアは人気者だけど、怨みや嫉妬を買う機会も多い。弱みは見せないに限るのだそうだ。

 町に入ってからは、モルガーナはケンタの背に乗って、どけどけーいと叫んで道を開けさした。だが、それでも馬車に飛びついて中を覗こうとする者が絶えないので大いに困った。

 幾らあちらから動いている馬車に飛びついてきたとは言っても、子供を怪我させる訳にもいかない。

 アドリアも人気者なのは良いがこうした時には困る。

 だが下町を抜けると、そうした子どもたちも追いかけてこなくなる。パーティホームのある区域は金持ちの大邸宅が並ぶ一角なので、馬車のまま行き来出来るように道も整備されているし、パーティホームも門構え自体が馬車での出入りに対応している。


「パメラさん、パメラさん!!」


 中庭に入って、使用人頭を呼ぶと


「あらあら、どうしたんだい、町中で馬車なんか使って」


「姐さんが河のところで全力の雷撃を使ったんだ。とにかく大物の水龍が相手でさ、久々に本気の姐さんを見たよ」


「そりゃ確かに大変だ。さっきから町も騒がしいのはその所為か。ともあれ、すぐに部屋に運び込むよ」


 パメラはそう言うと、近くにいた使用人達にアドリアを私室に運ばせる。

 門を守る警備用ゴーレムに、本日は顔見知り以外は敷地内に入れてはいけない、と改めて命令し、フロリアとモルガーナに「あんたたちも疲れただろう。一休みしておいで」とねぎらうのだった。


 馬車は勝手にアドリアの収納に戻せないので、中庭の一角に寄せて置くと、ケンタとケンジをしまう。

 アドリアの様子を見に行くと、服を脱ぐのもそこそこにベッドに入って熟睡していた。

 それで、フロリアも一休みすることにして、自室に引っ込み、服を脱ぐ。今日一日の汗や泥や水はねに返り血に……。割りとお気に入りの服だったが、ちゃんと染みは落ちるだろうか。

 なんだか立ちくらみに似た症状が出て、フラフラする。魔法切れということは無いのだが、精神的な疲労がピークに達しているらしい。

 肌着のまま亜空間に入ると、ブラウニーに服を渡して、そのまま風呂場に行って全裸になってお湯に浸かる。

 風呂に入ったまま寝てしまいそうになり、ハッと目を覚ますと、上がって体を拭いて、真新しい肌着と比較的リラックスした普段着に着替える。

 このまま亜空間のベッドで寝てしまいそうだが、外と接点が途切れて何かが起こってもわからなくなると困る。

 亜空間を出て、自室に戻ると、そのまま自室のベッドに倒れ込んだのだった……。


 フロリアは魔法切れの熟睡では無かったので、数時間程度の熟睡ですっかり疲れはとれた。

 目を覚ますと、ベッドの脇の床にトパーズが長く寝そべって、フロリアの番をしていた。

 

「トパーズ、ありがとう。……今日はトパーズも疲れたね」


 そういえば、この子も一緒に風呂に入れて体を洗ってやればよかったと思った。今晩荷でもそうしようか。


「ふむ。ちょうど良い運動だ。先程、モルガーナが様子を見に、部屋を覗いていったぞ。食事ができておるそうだ」


 それでホールの反対側の食堂に行くと、ちょうどモルガーナとパメラがいて、すぐに暖かい食事を出してくれた。


「フィオ、やっと人心地が付いたって顔になったね。ここに戻ってきた時には、あんたも疲れ切った顔をしてたよ」


「大物狩りだったんです」


「ああ、町に買い物に出た使用人が聞いてきたよ。空を飛んで、龍と対決したって大騒ぎになっていたみたいだよ」


「空を飛んだのはフィオの従魔の大鷲に乗ったんだ。ねえ、フィオ。次は私も乗せてよ」


 モルガーナがそう言って笑うと、それを聞いていた男の子が、「俺も乗りたーい」と言い出して騒ぎ、母親に叩かれる。


「それにしてもこれから、あんたも大変だよ。これまではマジックレディスの新しいメンバーなんだからそれなりに注目はされてただろうけど、こっから先は違うよ。

 何しろ、背に乗って空を飛ぶ従魔を使役出来るんだからね。それだけであんたを喉から手が出るぐらい欲しがる奴らがいっぱいいるよ」


「もうすでにフィオと接触するためにこの屋敷に潜り込もうとした、どっかの国の貴族の手先みたいな奴を追っ払ったよ。

 大鷲だけじゃなくて、乗れないけど相当に大きな鷲や鷹の魔物も使役してたしね。あれは強いよ。空を飛ぶ魔物なんて、後は昆虫系の魔物が少しいるけど、そんなもんだしね。あ、飛龍は別だけど、そもそも飛龍なんか滅多にいないんだから……。

 森の中ならともかく、平地で地面から離れられない相手なら無双できるだろうね。スタンピードだって相手取れそうなぐらいだ」


 ああ、そうか。そういえば、ビルネンベルクのときにはまだモンブランに出会う前で、苦労したんだっけ。

 フロリアはそんなことを思い出しながら、食事をするのだった。


***


 ルイーザとソーニャが戻ったのは、日が暮れてちょっと経ってからだった。

 彼女たち2人だけではなく、貨客船に乗っていたオーギュストとカーヤとロッテも一緒にいた。

 船が座礁した後、ルイーザ達の報告を受けた冒険者ギルドが緊急依頼を掛けて、その場にいた冒険者を動員。さらに町の傭兵隊まで繰り出してきて、小舟を出してきて生き延びた水棲魔物の討伐と乗客の救助を行ったのだそうだ。


 フロリアの顔を見るなり、カーヤとロッテの2人は自分よりも年少の少女に抱きついて泣き出し、「もうほんとに死ぬのかと思った」と言うのだった。


 オーギュストはフロリアに頼んでトパーズを呼び出すと、お陰で助かったと礼を言い、お主がそんなに素直になるなぞ気味が悪いと返されていた。


「ともあれ、出発はできなくなったので、連れ帰って来ました。オーギュストさんも今晩はこちらに泊まってください」


「い、いや。俺はやっぱり手頃な宿を探して……」


「おそらく、宿は無くて野宿になりますよ。それで衛士に詰め所に引っ張られるのが落ちです」


 ルイーザはバッサリと切る。水龍の出現は大事件だし、確かに大型船一隻の損失は大きいが、すでに討伐は済んでいる。これ以上の損害はもう出ない、出るのは素材だ。

 商売の時間が来るのだ。


 宿を埋めるのは出発できなかった乗客だけではない。近くに散らばっていた冒険者達が稼ぎ場を逃すものかとあっという間に集まってきている。

 さらに大動脈の河運は停止していても、近隣の自由都市連合を共に構成する町へは急報が飛んでいる。今頃は魔導具の町ジューコーやその他の近隣の町の主だった工房から多くの職人やら、その工房の依頼をうけた商人やらが今でも続々と入城してきてるだろう。何しろ水龍の素材である。ウロコ一枚あれば軽くて強靭な盾が出来る。工房の名誉に掛けて、素材の取り合いになるであろう。

 内蔵だって、例えば肝臓などは不老不死薬の原料と伝えられていて(これは多分にインチキ臭いのだけど)、注目している薬師も少なくない。


 もちろん、衛士隊も全員体制で警備を強化しているが、船乗り連中や港湾で働く人々は一種の狂騒状態になっていて、今日は酒場の賑わいもまたひとしおだろう。

 そんな時に宿など簡単にとれるものではない、というのだ。

 

「男子禁制ですが、こういう事態です。きっとアドリアも許してくれるでしょう。空いた部屋に泊まるのが良いと思いますよ」


という訳で、オーギュストは頭を掻きながら、パーティホームにお世話になる事となったのだった。


「あ、それからフィオ。明日、皆で冒険者ギルドに行きますが、特にあなたにはギルド側から聞きたいことがあるとのことです」


 ルイーザがそう言ってから、「ああ、大丈夫ですよ。事情をちょっと聞く程度でしょう。それと頼みたい事があるみたいですよ」とフォローを加える。

 どうやら緊張を顔に浮かべたらしい。

いつも読んでくださってありがとうございます。



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