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少女と黒豹の異世界放浪記  作者: 小太郎
第2章 ニアデスヴァルト
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第13話 冒険者登録

 フロリアは、魔道具をいくつかクレマンに預け、5日後の来訪を約束して、商業ギルドを出た。

 それから、どうするか少し考えていたが、やはり新鮮な野菜や小麦が欲しい、とフロリアは思った。

 安宿に泊まるよりもずっと安く買えるのだが、そのわずかなお金がない。


 お金を手っ取り早く稼ぐ方法を考えながら、市場を歩いていて、冒険者ギルドの支部の看板が目に入った。


 そうだ。冒険者登録をしよう!


 フロリアの年齢では見習い冒険者にしかなれないが、冒険者ギルドは無料で登録出来る。

 見習い冒険者になれば、町の外に出て採取した薬草の買い取りをしてくれるし、町の中での雑用の仕事も張り出されるので、日銭稼ぎができるのだ、とフロリアはアシュレイや、レソト村でたまたま居合わせた行商人に聞いたことがある(フロリアの理解に多少の誤解があって、実は登録しなくても買い取りだけなら2割引きになるがやってもらえるのだったが、登録料が無料なので実害は無かった)。


 薬草採取ならば、探知魔法を使いドライアドを使役出来るフロリアは同じ年代の誰が相手でも負ける気はしないし、そもそも収納の中には大量の薬草が新鮮なまま眠っているので、それを出せば良いだけの話である。


 冒険者ギルドへの登録と錬金術ギルドへの登録はダブっても問題なく、実際、普段は魔道具づくりに精を出しているけど、その素材採取も兼ねて、森に入って魔物退治もしている魔法使いも居るほどである。

 

 それで、フロリアは冒険者ギルドの建物の中に入る。冒険者ギルドは、ドアが西部劇の酒場にあるような上と下が大きく開いている、スイングドアになっていた。中が見えないとちょっと怖いので、ありがたい。

 一歩入ると、正面に受付で、脇の方は酒場のようになっているが、ガラガラである。お昼ちょっと前ぐらいなので、既に仕事に出かけていないのだろうな、とフロリアは思った。

 受付に座っているのは、20歳ぐらいの女性だった。

 おじさんだと緊張するので、ありがたい。


「あの、スミマセン」


「どうしました? お嬢さん」


「冒険者登録をしたいのですが、どうすれば良いですか?」


 お姉さんはこの場で登録ができると言って、申込書を書かせる。


「うん、ちゃんと読み書きはできそうね。見かけない顔だけど、どこから来たの?」


「ここから南の森のなかです。面倒を見てくれていたおばさんが亡くなって、この町に出てきたのだけど、お金を稼ぎたいと思って……。

 薬草採取なら田舎でずっとやっていたから、割りと上手かなと思うんです」


 お姉さんは納得した表情になって、申込書を出してくる。それに記載して、所定の位置に拇印を押すと、お姉さんはその書類をなにか道具を出して確認する。書類自体が一種の魔道具で虚偽の記載を弾く仕様になっているのだそうだ。問題なく申込書は通過して、すぐにギルド証が出来上がる。


「それじゃあ、いくつか注意事項があるから、キチンと守ってね。

 まず、冒険者のランクはSから始まって、A,B,C,D,E,Fまであって、未成年はEかFね。ええと、フロリアさんはFランクから始まります。

 EかFの間は受けられる依頼に制限があって、町中での雑用や簡単な荷役といったところね。その他には町の外に出て森の中で薬草採取。あなたが考えているのはこれね。

 この町では、大門を出て街道を右に少し歩くと、チカモリと呼ばれる森があって、慣れない間はそこで薬草採取するのがおすすめね。

 採取した薬草は、この建物を出て、右隣に買い取り窓口があるから、そちらに持っていってね。ただ、夕方になるとけっこう混むし、魔物や動物を狩ってきた冒険者も獲物を持ち込むから、そうしたのを見ても大丈夫じゃないなら、早めに来たほうが良いわね」


 そして、他にも細々としたことを説明してくれた。


 未成年の間は魔物の討伐や交易隊の護衛任務は受けられない。魔物の方が襲ってきて返り討ちにした場合は素材買い取りをするがそれを抜け道に魔物討伐をしているのが判ったら、資格停止もあり得る。

 但し、ツノウサギだけは未成年であっても狩っても良い魔物になっている。でも、ツノウサギに腹を突かれて大怪我をする新人というのは毎年、必ず居るぐらいなので油断しないこと。

 薬草買い取りは常時依頼なので、受注は不要で朝はそのまま森に行って、帰りにギルドの買い取り窓口に立ち寄れば良い。

 買取価格は、薬草の状態や需給状況によって変わる。現在の標準的な買い取り価格は、窓口の隣の掲示ボードに張り出してあるので、時々、それを確認して高い種類の薬草を狙うのが利口。

 それに、ギルドから冒険者に周知したい事柄も張り出すので定期的に確認すべきである。

 また、掲示ボードの隣のもっと大きなボードは依頼ボードで、そこには通常の依頼が張り出してある。

 E、Fランク向けの依頼は、一番右端にまとめて張り出してある。中央のボードはDランク以上になる。

 大人の冒険者やその他の町の人間に絡まれたら、すぐにギルドに報告すること。

 また、こちらから他の人間にむやみに喧嘩を売ったり、不行跡があれば、調査して罰を加えることになるので注意すること。

 冒険者ギルドに登録すると、口座が作られて、そこにお金を貯めることができる。お金は他の町のギルド支部でも下ろせるし、商業ギルドとも提携しているのでそちらでも下ろせる。逆に商業ギルドで貯めたお金も冒険者ギルドで下ろせる。

 最初は現金で報酬を受取ることになるだろうが、口座に貯める場合でも現金で受け取る場合でも、最初に税金分は差し引かれている。この町では25%が税金になっていて、王国の直轄地ではこれが標準。

 将来、領地貴族の領地内に行くことがあれば、その貴族の方針によって税率は変わる。 

 3年間活動が無かった場合は、事情の如何を問わず、資格抹消になる。その場合は口座の現金も没収になり、いかなる理由があっても返金はしないので、十分に気をつけること。

 また、犯罪行為を行ったと、領地貴族や国王の代官所から通知があった場合はただちに資格停止、口座凍結になる。

 冒険者ギルドは国際組織で、一度登録するとヴェスタ-ランド王国外でも有効であるが、同時にそれぞれの国の法律に従っていて、協力関係にあることを忘れてはいけない。

 一度、どこかで資格停止、口座凍結になると、外国に行っても、別に解除はされない。 などなど……。


「まあ、常識的に行動していれば、犯罪なんてことにならないから大丈夫よ。むしろ、誰でもなれる職業だから、割りと危なげな人も冒険者になっているので、そうした輩に狙われないように注意するほうが大切かな。

 特にあなたは美人になりそうだから、だれか信用できる人を早く見つけて、その保護を受けた方が良いと思うわ」


 こうして無事に冒険者登録を終えると、フロリアはすぐに買い取り窓口に行って、収納から適当な量の薬草を出して買い取りを頼んだ。

 自分では怪しまれないように十分に量を抑え、種類も珍しいものは避けたつもりであったが、それでも窓口のおじさんは目を剥くことになった。

 薬草の量も、フロリア本人が大した量じゃないと思っているだけで、相当な分量であるし、保存状態も採取したてと言っても過言では無いレベル。

 それよりも、手ぶらに思えたフロリアがいきなり、それだけの量の薬草を出す――つまりは収納スキルか収納袋を持っているということ――ことに驚いたのだ。

 

 まだ空いた時間帯であったが、数人の冒険者は居て、フロリアがいきなり多くの薬草を出したのに気がつきざわついたが、フロリアは気が付かない。

 思ったよりも多額のお金を得たフロリアは、自然と頬を緩ませながら、市場に出て、早速買い物をする。

 時間を掛けて、ほとんどの露店を見て回って、ようやく品質の割りには安い小麦を見つけて、一袋買って、代金を支払うと収納に仕舞う。

 それを見た商人はやっぱり驚くが、声に上げたりはしない

 店を離れて、なおも根菜類でも見ようかと思っていたら、


「フロリア、気がついているか? つけられているぞ。多分、5人はいる」


 トパーズがささやいてきた。

 

「え、わからないよ。人が多くて、探知魔法じゃ探知しすぎるから」


「アシュレイならば、人混みの中でも自分に悪意のある人間だけを選り出す魔法が使えたぞ」


「そういえば、お師匠様から探知魔法を町の中で使い続けると自然にできるようになるって聞いたことあったっけ。すぐには無理。そのうちできるようになると思うよ」


「そのうちじゃあ、今日は間に合わないな。何かあったら、私が出るぞ。人間相手に暴れるな、とは言われているが、それにも限度があるからな」


「わかったよ。買い物が終わったら、町の外に出て、まいちゃおう」


 大門を出る時に、朝とは違う門番に「今頃から採取か? あまり遅くなるなよ。日暮れには門を閉めるぞ」と言われる。


「大丈夫です」


と言って、フロリアは門をでて、森に向かう。


 ひとけが無くなったことで、フロリアを尾行していたのが2グループあって、互いに相手に気がついていなかったのが判明した。

 そのうち1グループは町でも札付きのチンピラで、もう1グループはたまたまフロリアの収納スキルを見て声を掛けて仲間に出来ないか、と思って付いてきただけの登録したての冒険者パーティであったので、チンピラに睨まれて逃げてしまった。


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