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6話 蛙は友達



 異世界に転移してから5日がたった。予定通りなら今日着く予定である。未だ森の中を歩いている。森から抜けて町に続いている道にも出ていない。本当に今日着くのだろうか。


 もしかして迷っているんじゃないのか?そう思えてしまう。だが後ろからアニムの歩いている後ろ姿を見ていると、迷いなく目的地に向かっているような、自信あるように歩いている。


 普通に考えてみると、目的地が徒歩で5日もかかる距離があるなら、方角が1度でもずれたらかなり変わってくるのではないだろうか。






 当たり前だが、方向が分かる手段なしというのは大変なことなのかもしれない。




 森や山で遭難した人の気持ちがわかる。本来なら、食料や飲み物に限りがあるから更に大変だ。どこに行けば良いか分からない不安な感じ……はしないな。今までも何回も迷子になってきたしな。だがやはりそろそろ町に行きたくなってきた。


 迷子には迷子の楽しみ方がある。人の顔を観察しながら歩く、複雑な脇道に入る、どんな店があるのか見ながら歩く。特に全く知らない景色を見るのは物珍しさや、なんか面白いものがある。全く知らない人について行くのもあまり良くないが楽しい。




 兎に角、何が言いたいかというと、とてもとてもつまらないと言うことだ。


 全く変わらない景色、ずっと森の中だ。飽きたとても飽きた。




 異世界と言えばの、獣人・エルフ・剣・中世ヨーロッパ風の町並みや服、そういうのが見たい!!!!!!ずっと森の中は味気ない。


 アニムは誰がどう見ても美人だ。銀色の艶めき輝く長い髪、白い肌、170cmほどありそうなすらっとした体型。高めの鼻にややつり目がちのキリッとした目。胸はそうでもな__


 ……………ゾッとした……殺気を感じた…………これが殺気か、初めて感じた………女の勘は恐ろしい………




 と、兎に角、アニムは文句のつけようがない美人だ。そのアニムと2人でいたとしても、あんまり変化のない森歩きは飽きる。







 「なぁアニムぅ…………ただただ魔法の練習しながら歩くの飽きたしさぁ、まだつかない?」


 「ん~~~~もうすぐ道に出ると思うけどねぇ~~~」


 「歩いてきた方向がずれているとかはないの?」


 「大丈夫大丈夫」


 「え~~~ほんとかよ」


 「ほんとほんと。大丈夫だから私についてきて。

  あと、あんまり変なこと考えるなよ」


 ひぃぃ…………と、鳥肌が………………





 もうアニムの胸のこと考えるのはやめよう……………別に絶壁という訳では無い。ただ慎み深いくらい……だ………………………………………………………







 今なら、蛇に睨まれた蛙と友達になれそうだ。マブダチかもしれない。





 危険な冒険はするもんではない。

 ピロリン。ソーマは一つ賢くなった。




 「あ、あーー、えー、えーっとー」


 「……なに?」


 こ、怖い……死神っていうオーラがにじみ出てる……………これなら生き物が寄ってこないのもうなずける。心臓をなでられているみたいな感じがする。ゾワゾワする。もしかしたら好きな人は好きかもしれない。


 ん?意外と余裕がある??結界のおかげかもな。気持ちなんか、結界魔法の魔力消費が増えた気がするし…………結界なかったら泣いてたかも。

 

 結界魔法貰っていてよかった~~~~~ナイス!自分褒めてやりたい。




 「あ、あはは、大丈夫ってのはわかったけどさ、その大丈夫の根拠が知りたいかな」


 「…はぁ。根拠って言っても何もないんだから、勘に決まってるじゃん」


 「それって大丈夫って言わなくない?」


 「大丈夫だよ。これでも勘は良いしね。確実に近づいているよ」


 「わかった。もう何も言わない」


 もう何も言わない。どうせ言ったところで何も変わらないしな。結局は勘を頼りにするしかない。


 「あ、そうだ」


 「ん?」


 「ソーマさぁ、ひまならさぁ、薬草とかキノコとか取ったら?」


 ああ、それはありかもしれない。俺には区別もつかんし知らないが、アニムには鑑定魔法がある。一時的な暇つぶしにはなるかもしれない。


 「でもさ、採取をしていると時間かかるし、町に着くのが遅くならない?」


 「まぁいいんじゃない?急いでないし。そもそもソーマが歩くの遅くて遅れているし」


 な!?ま、まさか、道がずれてるんじゃなくて歩くペースが遅い?


 そうならそこら辺の物拾っていっても遅れるのは変わらないか。


 むしろメリットしかないかもしれない。町に着くのは更に遅くなるが、薬草とかなら取っておいて無駄にはならない。他にも珍しいのがあれば、売ることができる。


 何で今まで思いつかなかったんだろう。言っちゃえば草拾いとかで面白くはないだろう。だが異世界っぽさはある。若干億劫だが今の暇つぶしにはなるだろう。


 「じゃあそうしようかな。なんか良さそうなのがあったら言ってよ」


 「えーいやだよ。めんどくさいし」


 む、確かに歩きながら鑑定魔法を目についた草などに使いながら行くのはダルいな。俺ならやらないな。やりたいなら自分でやれと言うな。それをやらせるのは、流石にかわいそうか…


 「わかった。じゃあ、なんか目についたやつを俺がとるから、それが何か教えて。適当に取っていくから」


 「それならオッケー。はぐれないように気をつけてね。あと、あんまり横にそれて取りに行かないで、近くのにしてね。それと、もう少ししたらお昼にしよ」


 本当に適当に取るしかないけどね。異世界の草木なんて何も知らんし。


 はぐれるのは大丈夫だろう。アニムは気配探るのが得意って言っていたからな。しかも取ったやつが何か聞くつもりだしな。アニムから見える範囲外に行くつもりもない。採取は町に向かう途中のおまけみたいなもんだし、なにかを見つけるまではアニスについて行くだけだ。



 ……アニスは引率の先生かなにかかな…………









 あれから2時間くらい経っただろうか。


 今のところの成果としては、売れそうなものは採れていない。ただの雑草や、薬とかにも使えない草花なら採った。まだたったの2時間だが薬草とか見つけられる気がしない。



 アニム曰く、薬草などの売り買いされているようなものはそう簡単に出てこないらしい。当たり前だが生息に適したところにあることが多く、しかも今いる所は、もうすでに森の浅いところだから残ってはいないそうだ。

 キノコも群生地やもっと鬱蒼とした所にあるらしい。一応キノコはいくつか見つけたが、全然美味しくないどこにでもあるやつだった。



 アニムは全く探していなかった。少しくらい手伝ってくれても良いだろうと思ったが、もしかしてここら辺には特に何も無いことを知っていて、無駄だと分かっていたんじゃないだろうか……………………


 …そんなことないか…………それなら、なにも無いと分かっていて採取の提案したことになる…そうなら性格が悪すぎるな………………………もしかして胸のことが原因か?


















 「あのさぁアニム」


 「ん?」


 「流石にもうカップラーメンは飽きないか?」


 そう今は5日目だ。転移してから5日目だ。ここまでずっとアニムはカップラーメンだ。もちろん味は同じのではなく変えている。

 だが、俺にはずっとカップラーメンていうのは耐えられない。何が悲しくて、何でも知っているのは生み出せるのにカップラーメンを食べなくちゃいけないんだ。


 俺はパンを間に入れたりしているが、流石に別の物も食べたくなってきた。しっかりとした食事がしたい。


 「全然飽きないよ。こんなにも美味しいのが、いろんな味あって、しかもメーカー?によって麺の食感とか具材が違ったりしているじゃん」


 「いや、でもさ、ラーメンはラーメンじゃん。しかもカップの」


 「え?ラーメンってカップラーメン以外にもあるの!?あるならそれをちょうだい!」


 あ~~~これはラーメン中毒者かな??


 俺もラーメンは好きだ。麺類で一番かもしれない。でもずっと、3食ラーメンは勘弁したい……


 「はい、どうぞ」


 本格的な店のラーメンを出す。もちろん食べたことのあるやつなので作れた。しかも器やレンゲもつけれた。


 「うまぁぁぁぁぁーーーーーい。何これ美味しい。めっちゃ美味しい。全然違うじゃん。なんでもっと早く出してくれなかったのさ。

  ああ、麺のこし、スープの深み、乗っている具材、一つ一つがカップラーメンと違う。特にこの______」


 スープの深みとは何だろうか?しかもものすごい勢いで食べて、なんか語り始めたし………ラーメン評論家か何かかな?…………君はラーメン歴5日だろうに……


 


 ……ものすごく美味しそうに食べているのを見ると食べたくなる…


 今日だけはラーメンで許してやろう。仕方ない。


 



 「おかわりーーー」





 スープも飲み干して偉いなアニムは………………………






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