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9話 なんで俺がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ……

 刹那、殺意を孕んだ根岸の剣がこちらへと突撃する。


 ガキィン!!


 としか表現しようのない効果音が薄暗い夕方の森に木霊する。


「優ちゃん……!」


 旧英雄の大盾で天使狩り(エンジェル・ハント)を受け止めた姫乃がこちらに視線を向けた。


「急いで――ッ!!!」


 姫乃は大盾のチャージで根岸を押し退け、激しい剣撃に自ら盾を押し込んで対抗する。

 タンクは一対一の近接戦に弱い。


 俺は急いで運営からの緊急連絡を受話し、外の世界との通話を開始する。


「おい! 運営か!? 一体何の用で連絡入れた!?」


「ちょ、急に叫ぶなし(笑) 鼓膜破れるかと思ったじゃ~ん(爆笑)」


 聞こえて来たのは女の声だった。

 明らかに未成年っぽい声質な上に、俺の妹がよく遊んでいる黒ギャルの佐々木と喋り方が似ている。


「あ、キミ名前なんだっけ~(笑) トッププレイヤーで繋がったのキミが最初だったから、適当にキミにしたんだけど~(笑)」


「優! 前期のロール区分なし総合ランキングで二位だった優だ!!」


「ふぅ~ん(笑) じゃ、オタクくんって呼ぶね~(笑)」


 あぁああああッッッッ!!!!!!

 なんだコイツの喋り方クッッッッッソ苛つくなぁあ~~~!!


「あ、あ~しは佐々木ね(笑) 「さっきー」って呼んで良いよ(笑)」


 俺の妹の友達の佐々木と喋り方と名前が似てるんだが……???

 俺はイライラを隠しながらもさっきーに続きを促す。


「で、外の状況はどうなんだ? もう全部解決したのか!?」


「ちょ、オタクくん喋るの早っ(笑) そんなわけないじゃ~ん? 今一緒に逃げてきたNZO運営の仲間が「ヘラの怨恨」と廊下で銃撃戦してる(笑) ちょっとやばぴだから、そろそろ本題話していい?(笑)」


「さっきから無駄口叩いてるのはお前だろ~~~!?!?」


「お前じゃなくて「さっきー」な……?」


「……さっきから無駄口叩いてるのはさっきーだろ?」


「ウケる(笑) そうそう、本題についてだけど、結論から言ってNZOの奪還は不可能だね~。第三サテラタワーの構造上、第一官制室からサーバルームまでエレベーターシャフトが直結していて、もうあーしらがNZOに直接的に手を出すのは不可能なんよ(笑)」


 笑い事じゃねえだろ。

 もう終わりや終わり!!!


「で、あーしらが出来ることは一つだけ(笑) オタクくんに強い武器をあげるから、第二ワールド最奥にある「原始なる滴」を破壊して来てくんな~い?(笑)」


「その「原始なる滴」を破壊すれば俺たちは助かるのか……?」


「さぁ? でもまあヘラの怨恨の目的は阻止出来るかな~」


「どういうことだ……?」


 俺のその問いに、さっきーは事情を話し始めた。


 東京サテラタワーは第一から第四までのビルによって構成され、中央の広場を取り囲む形状になっている。


 第一サテラタワーは国防省管轄の政府機関であり、第二サテラタワーは首相官邸、第三サテラタワーがNZO運営であり、そして第四サテラタワーはテレビ局が使用している。


 そしてこの四つのビルの形状に関する、ある一つの噂がまことしやかに囁かれていた。


「サテラタワーって超巨大なレールガンっぽくね?っていう(笑)」


 そう、この四つのビルには電磁砲の砲身としての機能が備わっている。

 もちろんこのことは最重要国家機密に指定されていて一般に知る者はいない。


 頭脳としての首相官邸と国防省、そして砲身の制御のための国内最大規模のシステムを担っているNZO運営、電磁波の調整のための電波塔である第四タワー、電磁波の発射口である中央広場……。


「つまり、サテラタワーは日本の機密兵器で、今そこがテロリストに乗っ取られたってわけか……?」


「そゆこと(笑)」


 さっきーは続ける。


 サテラタワーは反射衛星砲であり、上空へと発射した電磁パルス砲撃を軌道上の人工衛星によって地球上のあらゆる場所へと誘導・照射する非殺傷性兵器だ。


 強力な電磁波照射(EMP)により、広範囲の電力インフラストラクチャーの機能停止、情報通信機器の破壊を可能とする。


「核を持たない日本が、その代替手段として得た抑止力。人を殺さず、環境を殺さず、兵器だけを殺す超クリーンな大量破壊兵器(笑) それがサテラタワーの正体ってわけ(笑)」


「い、いや……ちょっと待ってくれ。話が突飛過ぎてついていけない……」


「いや待てないね(笑) もう廊下の仲間が持ちそうにない(笑)」


 さっきーの背後からは絶え間ない銃撃音と時折響く断末魔が聞こえてくる。


「つーわけで、第一から第四までの全てのサテラタワーが「ヘラの怨恨」に掌握されたんだけど、奴らはEMPの発射用のキーコードが必要なんよね(笑) それがないと結局撃てないから(笑)」


「それはどこに……」


「オタクくん察しわる(笑) 話の流れ的にNZOの中……それも、さっき言ってた「原始なる滴」がそれって気付くでしょ(笑)」


 そう言われ、俺は狼狽する。


 ヘラの怨恨は世界規模の大量破壊兵器のキーを捜し出すためにNZOをジャックして、俺はそれを阻止しなきゃならない……?

 あまりにも規模のデカい話過ぎる。


 昨日リナと見たダイ・ハード4の100倍くらいヤバい。


「NZOプレイヤーが原始の滴に触れた瞬間、第一官制室にデータが送られ解析されちゃうから、触れずに破壊してほしいってわけよ(笑)」


「無理無理無理無理無理だって!!!!!! 俺そんな重大な話知らない!!!」


「いま知ったっしょ(笑) それに武器はあげるからさ、まあ頑張ってよ(笑)」


 その言葉と共に、さっきーの回線の背後から扉が開かれる音がする。


「そこの女……! 今すぐその回線を切ってそこから離れな! 外の奴らは全員殺したぜ……」


「さっきーッ!!」


「ふふ、まあ心配しないでよ。武器はちゃんと送ったげるからさ(笑)」


 その言葉と共に、俺の手元にデータの結晶が現出した。

 直後、耳元に聞こえたのは無数の弾丸が弾ける音。


 俺はそれを聞き、呆然として地面に膝をついた。


「さっきー……?」

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