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3話 リナ、俺はお前のこと今でも好きだよ。でも、そのせいで俺の胸は張り裂けそうだ。

 ベッドに腰掛けたその刹那、俺の頭の中には10年ぶんの思い出が一瞬でフラッシュバックしていた。

 閃光が爆ぜ、ハムスターが駆ける。


 クルクルクルクルクルクルクルクルクルクル


 へけ。


「なあ、ハム次郎……俺、自分の人生が信じられなくなったよ」


「大丈夫なのだ! メイジくんなんて自分の弟に嫁を寝取られたのだ! それに、日本の託卵率は10%前後、不倫率は40%前後と言われているのだ! だから全然珍しいことじゃないのだ!」


 そういうことじゃねえだろ。


 俺はハム次郎を鷲掴みにしてその顔を覗き込む。

 なるほど、どうやらコイツも獣の一種のようだ。


 黒い瞳の奥に何考えてんのかわかんねー部分が見え隠れしている。


 俺はハム次郎を放し、ベッドの上で天井を見上げた。


「知らない天井だ……」


 隣に寝ていたシンジロウがそう呟いた。


「お前もリナと寝たのか?」


「分からないよそんなこと!!」


 絶叫が鼓膜をつんざく。


「僕は父さんに無理矢理ここに連れて来られただけなんだ!! それでリナに乗れなんて言われても……出来るわけないよッ!!」


 最低だ……俺。

 そうとだけ呟き、シンジロウは部屋を出て行った。


「山岸……お前俺に何か言うことねえのか?」


「あっす……。……した」


「は?」


「いや……ッスゥー。はい、……っす」


「いやなにそれ。そのッスゥーて。Vtuverか? あ?」


「いや……」


「……はぁ。もういいよ、出てけよ。早く」


「いや……。いや、……す」


「いや出てけよ。このやり取りがすでにやる気のない生徒と部活の顧問みてえになってんだよ。ほら、早く出てけ」


「した……。ありがとうございます」


 そう言って出ていく山岸。


 いやいやいや何の「ありがとうございます」やね~~~~ん(笑)

 一体何に感謝しとんねんお前は。


 まあいい、問題なのはリナのほうだ。


「寂しかったの……」


「異議あり!!」


 そりゃ言うだろ。

 だって浮気のテンプレみたいな文言だったぜ、今の?


「どこが寂しいんだよ……。ついさっきまであんだけイチャイチャしてただろ……」


「山岸は……違うの……」


「何がどこがどのように、山岸の何が違うってんだ……?」


 リナは怯えたような目でこちらを見てくる。


「山岸は……十年前に死んでるの……」


 ………………あ?


「だから、山岸なんているはずがないのよ……。あなた、今一体誰と話してたの……?」


「…………なにこれ? 洒落にならない怖い話?」


 尋常じゃない恐がり方でこちらを見つめてくるリナ。


 分かった、

 俺馬鹿にされてるわ。


 リナの作戦はこうだ。

 俺を幻覚か何かを見ている異常者に仕立て上げて、自分の潔白を示そうってわけだ。


「んな手に乗るかオイ。ログに証拠が残ってんだよ」


「だよね……。はぁ……はいはい、白状します。浮気、してました……」


 白状じゃねえんだよ白状じゃ。

 お前は薄情だろ!なーんつって(笑)


「で、それで?」


「?」


「いや、他に言うことは?」


「……ごめん」


 まあ、反省してるならいいか。


「もう二度としないって約束出来る?」


「うん……」


「じゃあ、仲直り」


 俺が出した小指に、リナが自分の小指を絡める。


「じゃあ、俺部屋の掃除しとくから」


「私がやります……」


「いや、俺も頭冷やしたいから。一人で作業したほうが落ち着く」


「……分かった」


 そう言ってリナは部屋の外へ出て行った。

 俺は扉の外を見てリナがいなくなったのを確認すると、部屋に戻って絶叫した。


「ったく最悪だぜェエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」


 ベッドを蹴り棚を叩き割りテーブルを投げ飛ばす。

 あらゆる破壊、あらゆる暴虐を働き、俺は冷静を取り戻した。


「つれえ」


 そらそうだろ。

 最愛の恋人なんだぜ?

 しかも10年来の幼馴染み。


 少しくらい情緒不安定になっても仕方がないだろ。


「ん……?」


 床にリナのスマホが落ちている。


「……」


「……」


「……」


 俺は興味本位でそれを拾い、さっき稼いだ経験値をメンヘラに極振りし、ロック解除のスキルを取得する。


 携帯を開くと、まずはアルバムを開く。

 ずらっと並ぶ写真の数々。


 俺3:山岸5:その他2


「……俺本命じゃねえじゃん。本命山岸じゃん」


 イヤイヤイヤイヤ

 オイオイオイオイ


 ……。


 うっせやろ。

 まじなの?これ?


 アルバムを遡り、一通り写真を見ていく。

 そして俺は呟いた。


「三股じゃん。……リナ、三股じゃん」


 猫又みたいにゆな-ーーー!!


 にゃん(笑)


「え? ……は?」


 写真は見終わったので動画を見ていく。


「山岸……山岸……!」


「リナ……リナ……!」


 はいはい、さっきのパターンね。


 じゃあこっちは?

 二人目のほう。


「根岸……根岸……!」


「リナ……リナ……!」


「いや名前似すぎな!!?!?!?!?」


 山岸と根岸てwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 なにこれ?


 もしかしてネタ?

 どっきり?


 どこかにカメラ隠してあったりする?


「いや、いや、いや……あの女やべー………………」


 なんかもう10年ぶんの思い出とか、NZOのパートナー設定とか、幼馴染みとか恋人とか、


 どぉおおおおおおでもよくなってきたな。


「あー、頭おかしくなりそ」


 アルバムを眺め、小さい頃の写真がふと視界に映る。


「……これ小学生のころの写真か。こっちは中学の入学式……はは、なっつかしいなぁー」


 昔の写真を見てると色々思い出して泣けてしまう。


「なんだかんだ好きなんだな、俺。リナのこと……」


 ……ん?


 アルバムの過去の写真をスクロールする。

 適当に選んだ写真を選び拡大。

 また別の写真を選び拡大。


「……え、こわ」


 山岸。


 そうだ、小学生の頃の写真にも、中学の写真にも、高校にも、大学にも……


「え、なに……え?」


 もちろん映っていないものもある。

 だけど、拡大するとほんの小さく陰が映っているのだ。


 画面に向けて、笑顔でピースしている山岸の姿が……。


「……ッスゥー」


 きっっっっっっっつ……。


「俺もう無理やわ。こえぇー……何もわからん。なんっっっっも分からん」


 ストーカー?

 10年も前から?


 リナの友達……なのか?

 たしかに笑顔でピースしてはいるけど……。

 でも明らかに小さすぎるし……。

 会ったことも見たこともないし……。


「これ絶対山岸だけじゃねえだろ……。根岸のほうも掘ったら絶対なんか出てくるわ。うわー、すっげえ嫌になってきた。やっぱ俺リナ怖いわ……」


 それから俺はアルバムを一通り確認し、放心状態に陥っていた。

 しばらくして正気を取り戻し、このスマホでまだ確認していないことがあることに思い至る。


 メッセージアプリ。

 つまりLIMEだ。

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