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13話 俺の気のせい……だよな……

「そういえばリナ、町で一体何があったんだ? 俺は姫乃と一緒に森に入っていたから事情が全然分からなくて……」


「……姫乃って誰?」


「ああ、こっちの狐耳のことだよ。昔からのゲーム仲間で、第一ワールドではタンクで有名だったんだ」


 俺の紹介にリナは少し目を細め、姫乃はおずおずと一歩退く。


「ふぅ~ん。ま、別に一ミリも興味ないけどさ……私の優くんに手出さないでよね?」


「のじゃ……」


「リナ、姫乃はそんなんじゃないよ。そうだ! これからは三人パーティで行動しよう! 前線の俺にタンクの姫乃、ヒラのリナで結構バランスも取れてるし!! 原始なる滴まで到達するためには戦力も必要だしな!!」


「別に私と優くんがいればいいけどさ。嫌になったらすぐに抜けていいからね?」


「分かったのじゃ……」


 俺とリナと姫乃の三人パーティを組み、俺は早速リナから町での出来事について教えてもらった。


 どうやらこちらでは特殊クエストが発生していたそうで、レアアイテムの争奪戦が起こっていたらしい。

 中にはアイテムのためにプレイヤーをキルする輩まで現れ、町での騒ぎはついさっきまで続いていた……というわけだ。


「で、結局そのアイテムってのは何で、誰が手に入れたんだ?」


「アイテムはこのワールドで最強の槍"ケラウノス"。手に入れたのが誰かは分からないかな~」


「そうか……その槍の効果は?」


「遠隔攻撃が出来るみたい。雷みたいなエフェクトの攻撃を出してたから」


「なるほど……」


 まあ、別に俺は原始なる滴を破壊したいだけだから今回の件とはあまり関わりは無さそうだ。


「それにしてもリナが無事で本当に良かったよ……」


「えへへ、優くんがそう言ってくれて嬉しい!」


 リナの笑顔を見て、俺は嬉しくなってしまう。

 はぁ~……リナは本当に可愛いなぁ……。


 そんなことを考えていると、隣の姫乃が疑問を口にだす。


「プレイヤーの名前は秘匿情報化出来ないはずじゃ。お主は今、そのプレイヤーが雷を出すのを見たといったが、それが本当じゃったらお主はケラウノスの持ち主の名を見ているはずじゃが?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 鑑定しなければ分からない装備性能や能力値とは違い、プレイヤーネームは誰にでも常時開示されているはずだし、リナがその場に立ち会っていたなら、プレイヤー名くらいは見えていたはずだ。


「リナ……相手の名前、本当に分からないのか?」


「チッ……。うん、見えた気もするけど忘れちゃったみたいで……」


「痛っ!?」


 話していると急に姫乃が声を上げた。

 足を抱え、青あざを摩っている。


「お、オイ! 姫乃どうしたんだ!?」


「今リナ嬢がわっちの足を蹴って……」


「はぁ!? なにこの子!! 私が何でそんなことしなくちゃいけないの!?」


「だ、だって本当に……」


 姫乃はリナに怯え、リナは姫乃の胸倉を掴み寄せる。


「優くんの気を惹こうとしてるのか知らないけど、私に訳分からない因縁付けないでよね……」


「おい待て待て待て! ちょっと待て二人とも!」


 俺は二人の間に割って入り、とりあえず二人に落ち着いて座ってもらう。


「まず姫乃、何かものにぶつけたわけじゃないのか?」


「わっちは足は動かしてなかったからぶつけようがないのじゃ」


「じゃあリナ、本当に姫乃を蹴ってないのか……?」


「優くんは私を疑うの……?」


「いや、そういうわけじゃなくて……」


「う、ぅうう……酷いよ、優くん……私を疑うなんて…………」


 そう言って泣き出すリナに俺はあわあわと立ち上がり、リナの肩を抱く。


「違うんだリナ。ごめん。姫乃……リナもこう言ってるし、たぶん違うと思う。ちゃんと俺が手当するから、それでいいかな……?」


「……分かったのじゃ」


 俺は姫乃に回復薬を与え、痛みを取ってやる。

 リナは蹴っていないと言うし、姫乃が何かにぶつけたわけでもないし……。


「とりあえず今日は宿を取って夜を明かそう。出発は明日の朝でいいかな?」


「うん、そうしよ!」


「それでいいのじゃ」


 そういうわけで俺は酒場の会計を済ませ、リナと姫乃と共に店を出る。

 宿のほうへと向かおうとすると、背後から大きな音が聞こえた。

 俺が振り返ると、姫乃が転んで、足と手にかすり傷を作っていた。


「姫乃!?」


「な、なんでもないのじゃ……なんでも……」


「それにしたってお前、さっきから様子が変だぞ……」


「夜で道が暗かったから転んだだけじゃ! 気にするでない!! ほら、早く行こう?」


「それならいいんだけど……」


 俺は姫乃に回復薬をかけてやり、気付かれないように視線だけ彼女の顔へと向けた。

 姫乃はリナのほうを見て何か怯えたような様子だったが、たぶん、俺の勘違いのはずだ。

 リナが、初めてあった姫乃に何かをするはずがない。


「あ~あ、ドジなパーティメンバーがいると回復薬の消耗が早いなぁ~」


「のじゃ……」


「リナ!」


「別に、本当のこと言っただけでしょ? それとも、優くんは私のこと嫌いなの……?」


「そういうわけじゃ……」


「い、いいのじゃ! ほら、わっちには気にせず! はよ行こうではないか!!」


 姫乃に促され、消化不良のまま俺は宿屋へと向かう。

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