「家族の愛」
魔力を使い果たして意識を失ってしまったソフィー、さぁどうなる?
あなたを好きにならなきゃ良かった〜エルフに生まれ変わったお医者さんの波瀾万丈記〜
6話「家族の愛」
“新しい友と出会い、そして、私が与えた力を正しい事に使って下さい。誰かを守るため、世界を救うために用いて下さい。”
(今のって…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん…」
ソフィーはベッドの上でゆっくりと目を覚ます。
「あれ…私何してたっけ…」
「うっ…あれ?!」
起き上がろうとしたが、体に力が入らず、ベッドに倒れ込んでしまった
(何これめっちゃ体だるい。)
女神に病気にならない体を望んだ彼女からしたら、久しぶりの体調不良だった。
「うっ…頭痛い。」
「まだ寝てた方がいいよ。」
横を見ると。近くの椅子にリーシャが座っていた。後、奥にはアリアが何かしている。
「かーさま…」
「ソフィー、自分で何をしたか覚えてる?」
「えっと、あんまり覚えてないけど、ジーク様と決闘することにて、それで…氷魔法で戦って…ごめん、かーさま。何かあんまり覚えてないや。」
「そっか、まぁ仕方ないか。私とイヴァンが叫んで呼んでも気づかなかったし。」
「えっ?!」
(えっ、どゆこと?とーさまとかーさまを無視?)
「簡単に言うと、あんたは魔力暴走を引き起こした。それで3日眠っていた。」
「え?!」
(てか待って、3日?!)
「てか、誰?」
「おっと、挨拶が遅れたね。私はアリア。王国軍の魔法使いだ。それで、あんたが寝てるここは私の部屋よ。」
「すみません。ありがとうございます…」
「いや、いいんだ。それで魔力暴走の事だが、今のお前は、はっきり言って安全とは言い難い。」
「えっ…」
「お前から寝ている間に、お母さんから色々聞いたが、ただでさえ血筋的に魔力が強いベネット家の中でも、特に魔力が強いらしいな。魔力暴走って言うのは、今のお前くらいの年齢の子が膨大な魔力を制御しきれずに、魔法使いが、魔法を操るのではなく、魔法に魔法使いが振り回されている状況なんだ。」
「魔法に振り回される。」
「幸いにもお前は、ジークフリート様とかなり激しめの戦闘をしていた最中で、魔力を使い果たして、暴走は止まった。まぁそれでぶっ倒れちまったけどな。もし仮に、そのまま暴走し続けたら、宿舎に居た人間は無事で済まなかったかもしれない。死人が出たかもな。」
「ちょっと、アリアさん!」
「いや、今の彼女には、自分が何をやらかしかけたのか自覚しておく必要がある。記憶に無いことがあるなら余計に伝えないとだ。」
(あぁ、私覚えてないけど、そんなに危険な事したんだ。)
「そうだったんですね。本当にご迷惑をおかけしました。」
ソフィーは罪悪感に押し潰されながら、ベッドの上で深々と頭を下げる。
「ちょっとやめてくれ、別に私は何かケガしたわけでも無いんだ。それに、今回は誰も怪我しなかったんだ。安心しろ。」
(そうだったのか…良かった。って待ってジークは?)
「あっ、そういえば!ジーク様は?」
「おーおー、随分仲の良さげな呼び方じゃねぇか。安心しな。特にやばい怪我とかもしてなかったし。まぁ、仮に怪我しても、回復魔法使える人に頼めばいいけど。」
「はぁ…良かった。ってそんな仲良いだなんて…」
ほっと、胸を撫で下ろす。
(私の近くに居たもんね。1番危険だったはずなのに良かった。)
「殿下にも、お前が目を覚ましたと伝えておくよ。」
「それと…」
「ん?」
「外で、心配して待ってる奴らが居るからな。」
そう言って部屋のドアの方に向かう。
「ほら!レイモンドさっさと起きろ!」
「ひぃ〜はい!!」
(あぁ、アリアさんとレイモンドさん、そんな感じの関係ね…)
「あっ!ソフィー!大丈夫か?どこか怪我してないか?体に何か後遺症が…」
イヴァンが慌てた様子で、転びそうになりながら、部屋に駆け込んで来て、ソフィーの手を握り、しきりに心配してくる。
「とーさま…もう大丈夫ですよ。」
「はぁ…良かったぁ!」
「ほらほら、感動の再開は済んだことだし、俺と話してた事をソフィーにも伝えた方が良いんじゃないか?」
(え、伝える?)
「何のこと?」
「あぁ、今からちゃんと説明するよ。」
(え、何?この国の王子を殺しかけたから投獄?処刑?)
「うん。」
「今回、ソフィー、お前はその身に宿した膨大な魔力を制御しきれなかった。」
「はい、ですから今後も、とーさまとかーさまの元で魔法の訓練を…」
「いや、もう俺と母さんがお前に教えられる事は残っていないよ。」
(え、どゆこと?)
「とーさま、それはどういう事ですか?」
「言ったまんまだ。そして、ここからが本題だ。今日からお前は…」
「私の弟子だ!!」
アリアが割って入って来た。
ソフィーは急な発表でぽかんとしている。
「それはつまり、アリアさんが里に来て下さるという事でしょうか?それとも、とーさまとかーさま3人で王都にお引越しですか?」
(もしくは、3つ目の一番嫌な可能性…)
「いや?お前は今日からこの宿舎で暮らすんだ。俺も母さんも無しでな。」
(あ〜一番嫌な可能性が的中したぁ〜)
「ある程度荷物は持ってきたが、必要な物があれば連絡してくれれば送るよ。」
(いや、そうじゃなくて…)
「いや、あのとーさま…」
「なんだ?」
「私の気持ちは無視ですか?」
「あぁ、こればっかりは従ってくれ。お前が今回やったのは非常に危険な事だった。一歩間違えたら、誰かを殺していたかもしれない。或いはソフィー、お前は生きてなかったかもしれないんだぞ?その危険が無くなるまではこっちでアリアさんの元で学ぶんだ。大丈夫になったら帰ってこい。」
「はぁ…」
(確かにとーさまの意見は正論だけど、この歳の子どもにさせる事には、少し酷じゃない?)
「大丈夫だ。時々王都にも顔は出す。これっきり会えないってわけじゃないんだ。安心しろ。」
「はぁーい、わかりましたー。」
リーシャがよしよしとソフィーの頭を撫でる。
「ごめんねソフィー、お父さんちょっと酷いこと言ったかもしれないけど、これも全部あなたのためなのよ。安全に魔法を使えるようになって欲しいのよ。私も父さんもソフィーの事が大事なのは全く変わってないのよ。忘れないで。あなたが大好きよ。」
(やばい、涙出てきた。この感じ久しぶりだ。)
優しい母親の言葉にソフィーは泣き出してしまう。
するとリーシャは、ソフィーを優しくそっと、抱きしめる。ソフィーも抱きしめ返す。
「忘れないで、誰もあなたのことを嫌いになんて思ってないわ。そして、あなたのその強さを重荷と思わないで。きっとその力は神様からあなたへの素敵な贈り物よ。いつか沢山の人がその力を必要とするかもしれない。その時が来たら正しく使いなさい。」
「がい、がぁざま…」
ソフィーは、目と鼻がぐちょぐちょになって、しゃっくりあげながら返事をした。
(やだ、私すっごいみっともないの晒してる。)
「ははは、あんな大人でも勝てなそうな戦いしたのに、やっぱり中身は子どもなんだな。」
その言葉にソフィーはキッっと、レイモンドを睨みつける。
「うおぉ、おっかね。」
「レイモンドざん、う゛るざい゛!」
「空気読め、ドアホ」
アリアにも怒られる。
「ごめんソフィー、また肉串買ってやるからさ?許してくれよ」
「考えとく。」
(肉串は食べたい。)
そう言ってソフィーは抱かれたまま母親の肩に顔を押し付けてしまった。
リーシャは少し驚いた様子だ。
「あらあら、ソフィーちゃん、甘えん坊さんなの?」
「ちがうもん。」
恥ずかしいからか、即座に否定する。
「まぁ、たまには良いじゃないか。」
(そうだよね、たまには良いよね。これからは時々しか会えないんだしさ。)
「はぁ…今後の事話したかったんだがな…」
アリアはこの親子愛を見てて少し困り気味だ。
しばらくソフィーが落ち着くのを待って、話を続ける。
「はい!じゃあとりあえず、ソフィーさんがここで寝泊まりする手続きは済ましてあります。後、部屋は私の隣の部屋にしてもらいました。何かあったら頼れるようにとの事です。」
「色々とありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
(これから、この人にいっぱいお世話になりそうだな。)
「里ではどんな魔法の勉強してたのか知らないけど、私は手加減なんてしないからね?覚悟しておきなさい!」
(おーこわ。)
「はい!!」
「はい、じゃあとりあえず隣の部屋に行こうか。あ、もう動ける?」
(どうだろ、立てるかな)
起き上がってみて、そのまま立ち上がろうとする。
(あ、まって…やばい。)
目眩がしてフラフラとし、立ち上がったその場で倒れかけてしまう。そこをイヴァンに支えられる。
「ほらほら、無理すんなー。こんなじゃこっちでの生活も心配だな。」
「はい、とりあえずこれ飲みなさい。」
そうしてアリアは、細長い透明の容器を私に差し出してきた。中には水色の綺麗な液体が入っている。
(え、これって試験管?こんなのこっちにあるんだ。)
「私が作った、魔力回復のポーションよ。それ飲めば少しはマシになるはずよ。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言ってアリアからポーションを受け取る。
(本で読んだからどんなのかは知ってるけど、これ美味しいのかな?里じゃそんなに魔力使って無理しなかったし。回復は薬草だったからな…)
「はい、じゃあ飲ませてあげるよ〜甘えんぼのソフィーちゃん♡」
そう言ってリーシャは、一方的にソフィーの手からポーションを奪い、
「ちょっ、待って!」
(流石に恥ずかしい!)
「はいはい、大人しくしててね〜」
ソフィーは抵抗を試みるも魔力がほとんど残ってない体では無力に等しく、抑え込まれて、そのままゴクゴクと飲ませられてしまった。
(何この何とも言えない味。不味くはないけど、美味しくもない。でも、なんか体が内側から暖かくなって、元気が出てきた。これがポーションの効果ね。)
「なんか、少し元気になったかも。」
「そうじゃあ、隣の部屋に移動しましょうか。もう今日はゆっくり休んだ方が良いわ。勉強は明後日くらいからにしよう。後で、食堂から何か貰ってきますね。」
(この人、レイモンドさんにはすごい当たりキツかったけど、本当はすごい優しい人なんじゃないかな。)
「何から何までありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
アリアはすこし恥ずかしそうだ。
「良いのよ、このくらい。師匠としては当然の事よ。」
「そんな事言って、内心はこんな可愛いらしい弟子が増えて嬉しいんだろ?」
「はぁ?うるさいレイモンド!」
「へいへい、黙りますよ。もう口聞かねーから。」
「あんたって奴わー!!」
アリアがレイモンドを引っぱたく。
「いってぇよ!」
「ばっかじゃねーの。」
その様子をベネット家の3人は楽しげに笑うのだった。
(なんか、この2人お似合いかも…)
それからソフィーは、アリアの隣の部屋に移動し、ベッドの上に寝転ぶ。床には里から持ってきた沢山の服や本等の荷物が広げられている。
(荷解きした方が良いんだろうけど、流石に今の体調でやるのは良くないよね。また倒れたら師匠に怒られそう。)
「はぁ…王都に来て色々あったな。まぁ、こんな事で音を上げてちゃ、これからやってけないよね。てか、さっき弟子が増えたって言っていたけど…他にも居るって事だよね。仲良くなれるかな…。まぁ、これからがんばろっと。」
(女神様とも努力するって約束したし。)
(それより、これ慣れないベッドだけど、寝れるかな。家のより少し固いな。)
そんな心配をよそに、気づいたら、ソフィーは夢の世界へと行くのであった。
To Be Continued
次の日午前中特に何かがある訳じゃないですけど、日付変わる時間に書くの眠いですね。まぁこの時間が1番1人で集中できるんですけどね。