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「VSベレト&ゼパル」

2人分の別の戦闘を無理矢理載せたら今までで1番長くなってしまいました…

14話「VSベレト&ゼパル」



「あなた達の相手は私達よ!」


そう言ってベレトとゼパルの注意を、ソフィー達から自分達にに引き付けたアイシャとレイモンドは、走り出し、そのままの勢いで、それぞれベレトとゼパルに斬りかかった。

しかし、その攻撃はあっさり回避されてしまった。


「ちっ、」


(そんな簡単に倒せるわけないよね。)


「俺があのガキの相手をする。あんたはその女を殺ってくれ。他の兵士にも援護させる。」


「了解!」


そう言ってレイモンドは、走ってアイシャの元を離れて行った。


『身体強化・改』


付与魔法によって。アイシャの体を光が包み、全身の身体能力が向上する。


「くっ、こいつらぁ!」


ベレトと、ゼパルはソフィーを取り逃し、思い通りに行かない事にご立腹の様だ。


ベレトは怒りに任せてアイシャに向かって、魔力弾を放つ。


聖光防御(ホーリープリベント)


ベレトの攻撃を金色の魔法陣の防御魔法で防ぐ。魔法陣の脇から、魔力弾のエネルギーがこぼれ、地面や、木々を抉る。後ろに居た数人の兵士が巻き込まれて吹き飛ばされてしまう。

その重い威力でアイシャの腕が痺れる。


ゼパルは、言った通りレイモンドが引きつけてくれている。


(くっ、何この威力、一撃が重い!)


魔力弾を防ぎ切ると、アイシャは、魔法陣の横にジャンプし、そのまま反撃に出た。


手始めにベレトに向かって左手をかざし、『火焔弾(フレイムバレット)』を放つ。

高熱の焔で出来た弾丸が、ベレトに向かって飛んでいく。


それをベレトは、金色の魔法陣の『聖光防御(ホーリープリベント)』とは対照的に、紫色の魔法陣で難なく防御した。


「あっさり止めるんじゃ無いわよ!」


愚痴を吐きながら、素早く体勢を立て直し、今度はミスリル製の剣を構える。


「『魔法付与火焔(エンチャント・フレイム)』」


魔法付与(エンチャント)。普段から、『氷柱剣(アイシクルソード)』を使用するソフィーはあまり使わない、元は何も付与させていない剣や弓矢に、選択した属性の魔法を付与して威力を上げる魔法だ。


アイシャが手にしていた剣に高熱の焔が纏う。焔が真っ直ぐ伸び、元のミスリルの刀身と比べ2倍近くの長さになった。


「喰らえ!」


そのまま剣でベレトに斬りかかる。


(こんな所で時間を無駄にしたくない!早く、ソフィーの所に行きたい!)


それをなんと、ベレトは防御魔法を出すわけでもなく、そのまま素手で受け止めたのだ。


(え?なんで、どういうこと?)


「わーあったかーい。」


数百度の高温をベレトは、全く痛がらない。


「は?」


(悪魔ってそんなに防御力高いの?)


アイシャは、慌てて後ろに下がり、ベレトと距離を取る。


(悪魔に対して知らない事が多すぎる。)


「そのくらいなの?じゃあ私の番ね。」


「『悪鬼火焔弾デビルフレアバレット』」


ベレトは、アイシャが使用した『火焔弾』に闇魔法を合わせた魔法を彼女に向かって放った。

しかも、アイシャと違い、1発ではなく、


「『岩塊防御(ストーンプリベント)』」


アイシャの目の前に、巨大な岩が地面からそびえ立った。

そして、その岩で『悪鬼火焔弾デビルフレアバレット』を防ぐ。

だが、そのベレトの魔法の威力で毛細血管かのようにヒビが広がる。


修復(リペア)


アイシャは、自身の魔法に修復魔法をかけ、岩のヒビを直す。

ひとまず、『悪鬼火焔弾デビルフレアバレット』を防ぐことは出来た。

だが…


(やばい!)


「伏せて!」


直ぐに、岩の向こう側から攻撃してくるのを魔力探知で感じ取り、周りの兵士達に警告する。

アイシャ達が伏せた瞬間、岩が一気に横に斬られ、上の岩は砕け散った。

ベレトが剣で岩を斬り裂いたのだ。


そして、アイシャの目の前でベレトは魔法を唱える。


魔法付与獄焔(エンチャント・ヘルフレア)


ベレトの右手にあった。黒い剣から、高熱の漆黒の炎が顕現する。

そして、瞬時にベレトの背中からコウモリに似た羽が生え、20m程の高さに飛び立った。そして、そのまま急降下し、その勢いで地上に居るアイシャに、斬りつける。

その攻撃は、今までのどの攻撃よりも重かった。


(速い!)


アイシャは、防御魔法を発動する暇が無かったので、既に『魔法付与火焔(フレイム・エンチャント)』してあった剣で受け止めるが、その衝撃に耐えきれず、後方に吹き飛ばされてしまう。

そして、30m程離れた岩にぶつかり、後頭部を打ち付けてしまう。

剣も手から離れてしまった。


「ぐはぁっ!」


「「アイシャ殿!」」


数人の王国軍の兵士が援護をしようと、彼女の前に立つ。


「さ…下がって…うっ」


兵士達の攻撃はあっさり薙ぎ払われてしまう。


額から顔に真っ赤な血が流れ、顎から滴り落ちる。


意識が飛びそうなのを堪えながら、彼女は思った。


どうしてなんだ

自分の実力はこんなものだったのかと。

今までの努力は一体なんだったのかと。

ソフィーよりも前からアリアの元で師事していたのに何故なんだと。

魔法の訓練を受けていた時は、使いこなせる手応えは存在していた。

何属性もの魔法が使えるようにもなった。

着実に強くなってる…そのはずだった。

しかし、悪魔の前には歯が立たなかった。


(どれだけ鍛えても、やっぱり、手の届かない領域というのは存在するのね…)


「でも…!」


彼女は、ソフィーの強さが妬ましかったのだ。体内に有り余るその魔力が。その魔法操作の技術が。

どこかで本当の妹の様に可愛がっていた女の子のことを羨ましく思っていたのだ。


(あんなに努力して、あんな大きな竜を倒せるようになったとは言え、ソフィーにばっか危ない目に遭わせなくない。)


「確かに、今はまだ、私はソフィーには追いつけない。あの子のような事は出来ない。それでも…それでも、いつか超えてみせる!」


腕で顔の血を拭いながら、剣を拾い、ゆっくりと立ち上がる。

彼女の足は、足がガクガクと震えている。


(朝は弱いし、授業は毎日の様に遅刻しちゃう頼りないかもしれないけど、それでも、お姉ちゃんとして、気合い入れないとなの!自分から、ここは任せてもらう様に言ったんでしょアイシャ!)


そう自分に言い聞かせ、自身を奮い立たせた。


「大丈夫ですか?」


王国軍の副隊長がアイシャの事を気にして、ベレトを警戒しながら、近づいてきた。


「ええ、大丈夫です。」


「アイシャ殿にはあいつを倒せる何か決め手はありますか?」


「あるにはあるけど…軍の皆さんの協力が必要です。」


そうして、アイシャは副隊長に自身の考えを伝え始める。


「え…大丈夫なんですかそれ…」


「問題ないわ、それに師匠から頂いた魔導具があるから大丈夫です。じゃあ合図したらお願いします。」


そう言ってアイシャはベレトの方へと歩き出す。


ベレトは、兵士の1人を蹴り飛ばしながらアイシャの方に向いた。


「あら、生きてたの?てっきり死んだかと…それがダメなら意識でも飛んで欲しかったわ。」


「ごめんね、私、運命の相手に出会えるまでは死ねないって自分で決めてるのよ。」


そして、両手を左右に広げ、再度魔法を唱えた。


「『複数発動(マルチアクティベーション)』『火焔弾(フレイムバレット)』『旋風刃(サイクロンカッター)』」


右手の魔法陣からは、先程と同じ焔の弾丸が現れ、左手の魔法陣からは、円形に回転する風の刃が現れた。


「だから、せいぜいそれまで、苦しみながらでも足掻いてみせるわ。」


そして、広げていた両手をベレトに向けて放つ。


ベレトはその2つの魔法を難なくかわしたが…

次の瞬間、彼女の左腕の、肘から下が、切断された。肘から、真っ黒の血がボタボタと滴り落ちる。


「ちっ!」


傷口を抑えたままベレトは後ろにジャンプしながら下がって、アイシャから距離を取る。


「今のは何だ?」


アイシャはゆっくりと歩み寄る。


「何って?魔法を放って、その時に出来た一瞬の隙を突いただけよ。」


そう言ってアイシャは右手に持った剣を血振りをして、黒い血を振り払った。


「お前、魔法使いの癖に何剣なんか使ってるんだ。」


「何でって、教わったから使ってるのよ。おかけで、多少は弱点を克服出来たわ。」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



魔法使いの弱点、それは近距離戦闘だ。

魔法使いは主に、前衛を騎士や、剣士に任せ、魔法による中遠距離攻撃がメインとなる後衛の立ち位置に居る事が多い。

しかし、その立ち位置が成立するのは、常に誰かしらとパーティーを組んでいるのが前提の動きとなる。

しかし、1人、あるいは一緒に居るのが魔法使いだけだった場合はどうだろう。

中遠距離で全ての敵を排除出来るのならば良いが、絶対に出来る保証は存在しない。

大量の魔物が押し寄せた時、非常に危険だ。


そう考えると、ソフィーの『氷柱剣(アイシクルソード)』は、その短所を補っている魔法と言える。


ソフィー程氷魔法が得意では無かったアイシャは、そこを実物の剣を使用する事でカバーする事にした。

アリアの元で魔法を習うのと同時並行で、レイモンドに頼み込み、剣の手ほどきを受けたのだ。

そうして、剣技一筋の人には敵わないかもしれないが、ある程度の実力は付けることが出来た。

更には、剣自体に『付与魔法(エンチャント)』をする事も可能となった。


ソフィーは直接『氷柱剣(アイシクルソード)』を操る、近遠距離両方に対応した戦法を取る。

しかし、アイシャの場合は、射撃系の魔法を撃ち、それをかわす、あるいは防御をした時に出来た隙を付いて、剣で近距離攻撃を仕掛ける戦法を取るようになったのだ。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「やーっと、あなたの辛そうな顔を拝む事が出来たわね。」


「くっ、こんな傷、時間が経てば、元に戻るわ。」


事実、最初は出血したが、既にその傷口は塞がり、少しずつ腕が生えてきていた。


「あら、その時まで私は待たないわよ?」


すると、アイシャは、腰に付けていたアイテムボックスをゴソゴソと漁り始めた。

そして、もう一振りの剣を取り出した。


「『複数発動(マルチアクティベーション)』『付与魔法火焔(エンチャント・フレイム)』」


両手に握られた剣が一気に燃え出す。

そして、その剣を二刀流の構えを取る。


ベレトは『魔法付与獄焔(ヘルフレア・エンチャント)』を付与した剣で斬り掛かる。

それをアイシャは受け流しつつ反撃に出るが、それはベレトに防がれてしまう。

それから、2人の剣による戦いが始まった。

二刀流のアイシャに対し、左腕がまだ治りきっていないベレトの方が不利に見えるが、それでも片腕で十分アイシャと渡り合った。

2人の剣が近距離でぶつかり、それぞれの焔が混ざる。

ベレトは、つばぜり合いで、そのままアイシャを押し込もうとする。

アイシャの顔に剣の焔が近づく。


「かっこつけて色々言っていたけど、決めてはあるのかしら?」


「えぇ、あるわよ。この勝負貰ったわ。」


そう言ってアイシャは、ベレトの右腕を掴んだ。

女性らしいほっそりとした腕だった。

が、それでもアイシャには、掴んでその場に抑えるので精一杯だった。


「今だ!やれ!」


「何だ?」


気づくと、アイシャとベレト周りには彼女達を中心に10数人の兵士や魔法使い達が円形に立っていた。


「撃て!!」


そして、彼らは、アイシャとベレトに向かって『火球(ファイアボール)』や『風刃(ウィンドブレード)』等、様々な魔法を放った。

一つひとつの魔法は火力は高くないが、それを人数で補った。


「くっ、その手を放せ!」


「やだね、私と一緒にあの世に行きましょ?」


「このガキがァ!!」


ベレトがアイシャを罵った瞬間、2人を巻き込んだまま爆発した。周囲に衝撃波と煙が広がる。


「アイシャ殿!」


心配した副隊長がアイシャの名を呼ぶ。

魔力を使い切ったのか、腰を地面に落としてしまっている魔法使いも数人居た。

副隊長は、自分より10歳以上も歳下の女の子に危険な事をさせた事に後悔の念しか無かった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「私が上手いこと腕を掴んだり、羽交い締めにしたり何かしらで相手の動きを封じます。そして、私が合図したら、私の事なんて構わずに魔法が使える人を総動員して、魔法をあの悪魔に向かって撃って下さい。」


「ですが、流石にそれは危険では?」


「大丈夫よ、怪我は自分で、回復魔法をかけるわ。」


「え…大丈夫なんですかそれ…」


「問題ないわ、それに師匠から頂いた魔導具があるから大丈夫です。じゃあ合図したらお願いします。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



10秒程して、煙が晴れた。

そこには、苦しそうにするベレトと、攻撃に耐えきれず、膝を着いたアイシャが居た。2人とも肌は黒ずみ。服は焦げてボロボロになっていた。


魔導具を使用したとはいえ、


「あはは、馬鹿みたい、自分を巻き込んでまで味方に魔法を撃たせて…そんなにボロボロなって…一体何がしたかったの?」


アイシャは弱々しく、少しだけ腕を持ち上げ、人差し指を空に向ける


「何がしたかったって…これ。」


そう言って、アイシャは、人差し指をくいっと、自分の方に向けた。


「待て!」


それが何を意味するかベレトは気づいたが、間に合わなかった。

気づいた時には、既にベレトの胸には一振りの氷の剣が背中から突き刺さり、貫通していた。

傷口から黒い血が流れ落ちる。


「ぐはぁっ」


ベレトは苦しそうに呻き、口か血を吐く。

そのまま地面に倒れた。

倒れた事で、血が地面に楕円に広がる。


「いつの間に…」


「爆発で視界が曇っている時に、こっそり出しておいたのよ。魔法があちこちで放たれているんじゃ、簡単には魔力探知でも気づけないだろうしね。」


(ソフィーに頼んで教えて貰ってて良かった…)


「なるほどね…じゃあ、私は逃げさせて貰うわ。」


すると、ベレトの肉体が、動かなくなり、目から活力が消えた。

そして、体の上には、霊体となった、ベレトの姿があった。

禍々しい黒い霊体だ。

肉体を捨てて、魂だけでも逃げようという算段だ。

精神生命体の悪魔だからこそ出来る芸当だ。


「ちょっ!逃げるな!」


「またね、嬢ちゃん。」


そう言って霊体は段々と、薄くなって消えていった。


「ちっ…」


アイシャは、自身に『回復(ヒール)』をかけながら、ベレトの事の死体を観察した。


(肉体は見た感じだと、私たちと同じ。ただ、傷を負った時に出た血が真っ黒だったという事は、既に人間では無い…悪魔の霊が宿る事によって、肉体にも様々な変化が起きると考えるのが自然かしら…この死体は持ち帰る必要があるわね…って今はそれより…)


アイシャは、振り返って後ろを見る。そこでは、まだレイモンドや他の兵士がもう1人の悪魔と交戦していた。100m程離れた所で土煙を上げながら戦いを繰り広げている。


「さてと、援護に行きますか。」


そう言って走り出した。


しかし、その頭の中では、魔王を倒しに行ったソフィーの事で埋まっていた。


(ソフィー無茶しないでよ…)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



レイモンドは初めて対峙する敵に、慎重にだが、的確に指示を飛ばしながら、自分も攻撃をしかけていた。

だが、致命傷には至らずに居た。

何より、ゼパルは速かった。

魔法による攻撃をしてくるベレトに対し、ゼパルは獣人が元から持っている鋭い爪を用いた攻撃をメインとしている。

そして、その爪は自在に伸ばす事が出来た。

自身に『身体強化』を施し、その速さで、レイモンド達を翻弄する。

そして、翼で、距離をとる、一撃離脱戦法に近い戦い方をしてくる。

その速度にレイモンド以外の兵士は目で追うのが精一杯で、攻撃所ではなかった。


「こいつ…速い…」


レイモンド達は、素早い攻撃に防戦一方だ。

その鋭い爪を手に持っていた剣で受け止め、火花が散る


「剣と同じ硬さの爪って…どんだけ硬いんだよ!」


一度レイモンドから距離を取ったゼパルは、再び、レイモンドに斬りかかった。

今度は剣で防ぐ事が出来ず、彼の鎧を切り裂いた。


「はははっ、おじさん、もっと楽しませてよ!」


その時、レイモンドの心の中で、何かが、ピキっと音を立て、怒りが湧き出した。


「おい、クソガキ、今なんて言った?」


「もっと楽しませてよ!」


「ちげーよ!その前だ!」


「あ!おじさん?え?まさかそんな事で怒ってるの?あははっ、いや、でも事実じゃん!」


ゼパルの挑発にレイモンドの堪忍袋の緒がプツンと切れた。


「相手をおちょくるのは自由だ。俺だってした事はある。だがな…」


(こいつを再び使うつもりは無かったがな…仕方ない相手が相手だ。)


そう言って、レイモンドは、手に持っていた片手剣を地面に放って、腰に付けていたアイテムボックスから、今度は自身の身長並の大剣を引っ張り出して、構えた。


「かつて、『紅の狂戦士(バーサーカー)』と呼ばれた、元Sランク冒険者の俺を挑発するのは自殺行為なんだよ!」


(それにな、まだ40なんだから、おじさんとは呼ばせねーよ、それ言っていいのは可愛い姪っ子だけだわ。)


そう言って、片手で大剣を持ってゼパルに距離を詰めて、一気に振り下ろす。

それをゼパルは、すんでのところで避ける。


「なんだよ、さっきまでのは本気じゃ無かったのかよ!」


「いや、決して手を抜いたわけじゃねぇよ。こっちの方がやり易いだけだ。」


冒険者時代、彼は現在の様な片手剣ではなく、『狂戦士(バーサーカー)』として、大剣を使って活動し、Sランクまで上り詰めた。

その後、王国軍に入るが、その時に、王国軍兵士が『狂戦士(バーサーカー)』というのは、印象が悪いと言われてしまった。

そのため、正式装備の片手剣に持ち替え、ずっと相棒だった大剣を封印したのだった。

それ以来、この大剣を握るのは、自分の隊が全滅する可能性がある時のみと、自分に決めてこれまで生きてきた。


そして、今がその時だ。


レイモンドは、かつての相棒をまるで、小さなナイフを振り回すかのような動きで、ゼパルに攻撃をしかける。

先程までとは変わって、レイモンドが押し始めた。


「うぜぇな、おじさん!」


ゼパルに焦りの表情が浮かぶ。


「なんだガキ?死にてぇのか?」


左手を大剣の刀身にかざして魔法を唱えた。


「『付与魔法火焔(エンチャント・フレイム)』」


大剣が一気に燃え上がる。


「俺だって、魔法使えるんだよ!」


(付与魔法くらいだけど…)


「喰らえ!!」


焔を纏った剣で一気に斬り掛かる。

ゼパルはそれをかわせないと判断し、爪で受け止める。

が、その力にゼパルは押され気味だ。

悪魔と渡り合える腕力だ。

ゼパルは、他に比べかなり小柄だが、それでも人より身体能力は高いはずだと自覚していた。


「ぐっ…おじさん本当に人間?バケモノじゃないの?」


「あ?バケモノ?お前にだけは言われたくねぇよ。」


悪魔とも渡り合えるレイモンドの腕力。

それは、冒険者時代から毎日腕立て伏せと腹筋をそれぞれ1000回継続して行ってきた努力によって得た、強靭な肉体のおかげだ。


(そろそろ倒して、アイシャの方に行きたいが…)


切り結びながら、ベレトの相手をしているアイシャの事が頭に浮かぶ。


(さっさと殺らないとな。)


「おらぁぁあ!」


燃えている大剣を空高く振り上げ、一気に、ゼパルに向かって振り下ろす。

それを、ゼパルは余裕を持ってかわす。


大剣が地面を切り裂いた事で、土煙を上げ、凄まじい衝撃音が鳴り響く。

土煙が消えると、先程までゼパルが居た地面が、真っ二つに切り裂かれていた。


「うっわ、なんだよその威力。」


そして、ゼパルは、素早くレイモンドの左に移動し、翼で数メートル飛び上がりそのまま加速し、一気に伸ばした鋭い爪で斬りかかった。


「へっ、横がガラ空きだよ!」


ゼパルは大剣の弱点の、剣自体の重さによる、連続攻撃の遅さを理解していた。

が、それは普通の冒険者や兵士の場合だ。

レイモンドには、大剣で瞬時に防御するなど、造作もない。


レイモンドは大剣を盾の様に側面をゼパルに向けて防御をした。

ゼパルの爪が大剣に当たる。

レイモンドの予定では、防御から一気にゼパルに斬り掛かるつもりでいた。

だが…


「なっ…」


大剣は、ゼパルの鋭い爪で、丸太を斬り裂くかのように、真っ二つになってしまった。


大剣の上半分が、高い金属音を立てて、地面に落ちる。


ゼパルの爪は、伸ばす事や、鋭さ、強度等、様々な事を魔法も使い自身で調節出来る。

鋭利にさせれば、人間の皮膚どころか、金属すら切り裂ける。


「あははっ!ざまぁねぇな!お気に入りの剣が無ければ、Sランク冒険者もただの一般人だろ!」


レイモンドを罵倒して、ゼパルは背中の翼で素早く飛翔し、一気に急降下を始めた。


「これで死んじまえ!」


両手の限界まで伸ばし、先を鋭くさせた、真っ黒な爪でレイモンドに斬り掛かった!


が、気づくと、ゼパルの右腕は、肩から下が切断されていた。

黒い血がドバドバと噴き出した。


「え…どゆこと」


下を見下ろすと、なんと、レイモンドの左手には2本目の大剣が握られていた。

最初の銀色のミスリル製の剣と違い、今度のは、暗い灰色と黒い片刃の大剣だ。

柄は金色の豪華な装飾が施されている。


ゼパルは、大剣の届かない距離に、ゆっくりと地面に着地する。


「何だよ…2本目とかせこいな…おらぁ!」


右腕を切り落とされた怒りに任せて今度は左腕の爪でレイモンドに斬り掛かる。

それを先程と同じやり方でレイモンドは防御する。


「はっ!その剣もまた真っ二つにしてやるよ!」


ゼパルも同じやり方で大剣に斬り掛かる。

だが…


「なっ!」


今度は、斬り裂くどころか、刃こぼれを作る事すらも出来なかった。

驚きながらも、反撃を恐れて、ジャンプをして後ろにさがる。


「なんだよ、その剣!おかしいだろ!」


「おかしい?何がだ?こんなのただの大剣だよ。さっきのと違ってこっちが本当のお気に入りだがな…こいつを使うのは冒険者を辞めて以来だよ。」


大剣を持ち上げ、ゼパルに向ける。


「この剣も斬られないか不安だったんだが、良かった。流石、純オリハルコン製だ。当時は借金してまで買ったんだが、その甲斐あったな。」


「なっ…オリハルコンだと…」


オリハルコンとは、この世界で最も頑丈な鉱石と言われている。

長い年月をかけて魔力を含む事で他の金属が変化してオリハルコンとなる事から、魔鉱石とも言われ、石自体に魔力が含まれている。

だが、その分希少かつ、高価で、ミスリル等他の金属と合わせた合金として使用されるのが一般的だ。

合金ですら高価なのに、純オリハルコンとなれば、豪邸が買えてしまう。

そんなオリハルコン100%の大剣。当時のレイモンドは、その魅力に囚われ、借金して購入し、返済の為に、大型の竜を討ち取ったとか。


その希少さは悪魔ですらも驚く程だ。


「オリハルコンか…そりゃ、俺の爪でも斬れねぇわ…だがな!」


瞳がキラリと光り、左手をレイモンドに突き出す。


「大剣が壊せずともあんた自身を殺せてしまえば俺の勝ちなんだよ!」


「『悪魔之嵐(デビルテンペスト)』!!!」


オリアスが使用した魔法の1.5倍もの大きさの竜巻が手から発生する。

レイモンドは再び防御の姿勢を取ろうとしたが、何かを目の端でチラリと見て、瞬時に動きを変え、竜巻に向かって走り出した。


それには、ゼパルも驚いた様子だ。


「あははっ、気でも狂ったのか?それとも諦めた?」


「いいや、そのどちらでも無いぞ。」


「『付与魔法火焔・聖光・旋風(エンチャント・フレイム・ホーリー・サイクロン)』」


「さっさとくたばれ!」


そう言って、レイモンドは、左の腰に柄を当て、そこから時計回りに180°程横向きで大きく大剣を振った。

ただの剣では、竜巻を斬るなど出来ない。

だが、大剣の先から、赤と、白と、緑の混ざった色の魔法が放たれ、それが、竜巻を上下に真っ二つにした。

ついでに周囲の森林の木々も数本巻き込んでしまった。

そして、それはそのままゼパルの上半身と下半身を繋いでいる腰を切断させた。


「うっ…」


上半身は後ろに、下半身は前に倒れた。


「なんで…俺が…こ、こんな下等種族なんかに…次は勝ってやる…」


そう言うとベレトと同様霊体になって、逃亡を図った。


「なっ、なんだこいつ、これが本体か!」


レイモンドは大剣で霊体を斬り裂こうとするが、スカすだけで、当たるわけが無い。

このままだと逃げられる。

レイモンドが焦った時だった。


「これ喰らって本当に死になさい!『死之火焔(デスフレイム)』!!」


声の正体は、ベレトの肉体を倒し、応援に来たアイシャだった。

彼女の手から火炎放射器かのごとく、凄まじい高温の炎が放たれ、霊体のゼパルに襲いかかる。


(一かバチかだけど、お願い!)


「ぐわぁあぁぁあああぁあぁぁあぁぁあぁあぁぁ」


「おっしゃ、ブレス系の魔法なら効いてるぞ!」


「何故だたぁぁぁあ!くそがぁぁあぁ!」


そう言ってゼパルの霊体はゆっくりと燃えながら焼失した。


後には、レイモンドの大剣によって切り裂かれ、ズタボロにされた地面と、切り倒された木々と、真っ二つになった子どもの獣人の肉体が残された。


「ありがとなアイシャ、助かった。あの状況じゃ、あいつを逃していた。」


その場で腰を落ち着けながら、アイシャに礼を言った。


「いえ、こちらは霊体を逃してしまったので、ブレス系が効くかは確証は無かったですが、良かったです。」


だが、ほっとしたのも束の間、レイモンドは周りの兵士に指示を出す。


「まだ、戦いは終わっていないぞ!回復魔法が使える物は、怪我人の治療を最優先に行え!悪魔の霊体が憑依していた肉体は2つとも馬車に載せろ、王都に戻ったら調べる。忘れるな、まだ近くに悪魔が居る可能性がある。警戒を怠るな!」


「「「了解!!!」」」


あちこちで返事がした。


「さてと…俺たちはどうするか?」


「そんなの決まってますよ。ソフィーとジーク様の援護に行きましょう。」


「だな…」


そう言ってレイモンドは、膝に手を当ててゆっくりと立ち上がる。


その時だった。

5、600メートル離れた場所で大爆発が起きた。

轟音が鳴り響き、地面を揺らし、森林の中から真っ黒の煙が立ち上る。


「あれって…」


「あぁ、急ごう。」


そう言って、2人は悪魔と戦い疲弊した体に鞭を打ち、走り出した。



To be continued

自分の頭の中では戦闘している2人のイメージが浮かんでるんですが、果たしてそのイメージが読者にも伝わっているのかが難問ですよね。

とりあえず、次回、遂にギルガゼイヤとの戦いです。

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