「星空の下で」
最近サボり癖がつきつつあるのやばい
あなたを好きにならなきゃ良かった〜エルフに生まれ変わったお医者さんの波瀾万丈記〜
12話「星空の下で」
「ソフィー!早くしてー!」
宿舎の部屋で準備をするソフィーを1階の玄関の方からアイシャが呼んでいる。
(くっ…いつもは逆なのに…)
「姉さん!そんな急かさないで。慌てて階段で転んだらどうするのよ。」
「えっと、回復魔法かければ大丈夫よ。」
「いや、でも、最初転んだ時は痛いじゃん。後で治せるから、平気って思うと、傷つく事に対して恐れを抱かなくなるから、私は怖いな。」
「ソフィーったら、そういう所、変に慎重なんだから。」
「別にいいでしょ。」
そんな話をしながら、早歩きで2人は軍務局の中へと入っていった。
しかし、軍務局の中はいつもとは全く違う雰囲気だった。
“慌ただしい”この言葉が1番似合うかもしれない。
剣や槍、鎧等を運ぶ者。体力や、魔力を回復するポーションを運ぶ者が、ソフィーとアイシャとすれ違った。
着ている鎧がぶつかり合って鳴る金属音、急いで走る足音、周りに指示や命令を飛ばす声。
様々な音や声で軍務局はごった返していた。
そして、なにより、兵士や魔法使いの表情が普段と全く違っていた。ほとんどが、暗く、険しい表情をしていた。
当然だろう。これから戦いに向かうのは、ただのゴブリンやオーク等の魔物だけでは無いのだ。
今回の敵は、知性があり、強力な魔法を簡単に撃ってくる。身体能力も人間とは比べ物にならないくらい強いのもいるだろう。
カップルか、夫婦だろうか、端の方で抱き合う男女が居た。男の方は魔法使いのローブを着ていた。
その気まずさに2人は目を背けた。
(私も覚悟決めないとな。)
「ソフィー、とりあえず師匠の部屋へ。」
そう言って、ソフィーとアイシャは、2階のアリアの研究室の部屋へと向かった。
ノックをして、部屋に入る。
部屋ではアリアが普段研究に使用している机に何やら色々並べていた。
2人が来ると、手を止めて振り返った。
「あら、やっと来たわね。早速準備しましょ。」
「師匠、それは?」
ソフィーは早速アリアが机に並べていた物を気にしだした。
「この子達は、帰り道に言ってた魔導具達よ。流石に今回丸腰なのは危険すぎるから。私の持っているのをいくつか貸してあげるわ。」
「ありがとうございます、師匠。それでどんなのがあるんですか?」
「そうね。時間も無いし、説明しながら2人に装備して行っちゃうね。」
「「お願いします、師匠。」」
そうして、アリアは2人に説明しながら着け始めた。
「基本的に魔導具は、魔石が取り付けてあって、それに魔力を流すと、付与してあった効果を発動させてくれるの。普通の魔法と違うのは、詠唱とかイメージは全く必要無いのよ。」
そう言いながら、アリアは2人の首にネックレスをした。その茶色い紐には、血のような赤い色の綺麗な魔石がぶら下がっている。
「これは、物理攻撃半減が付与された魔石のネックレスよ。剣を始め、色々な物理攻撃のダメージを減らしてくれるわ。それで、これが魔法操作補助の腕輪。ソフィーには特に必要かもね。」
そう言ってネックレスの次にアリアは、2人の右腕に銀色の腕輪を付けた。その腕輪にはエメラルドに似た魔石が、埋め込んであった。
「そして、最後にこれ。」
そう言って、アリアは手に持った2つの指輪を見せた。綺麗な空の様なサファイアに似た水色の魔石が付いていた。
「魔法攻撃半減の指輪よ。これで、物理攻撃も魔法攻撃も両方ともダメージをある程度は減らせるわ。ただし!」
「「ただし?」」
「魔王が、どれだけの力を持っているのかは分からないわ。とてつもない魔法を放たれては、半減させた所で意味は全くないのよ。だから、喰らっても平気と思わずに、まず避けるか、自ら防御魔法を使うかするのが大前提よ。魔導具に頼るのは最終手段。いいわね?」
「「はい!師匠!」」
「はいじゃあ、後これ、着てきなさい。」
そう言って、アリアは2人に暗い灰色の畳まれた布を差し出した。広げてみると、フードの付いた丈の長いローブだった。
「もう少し後になってから渡す気だったんだけどね…緊急事態だし仕方ないわ。ブレス系の魔法を防いでくれるわ。活用しなさい。そして、最後にこれ。」
そう言ってソフィーとアイシャに差し出したのは、小学校で使うくらいの大きさの茶色い巾着袋だった。
「えっ、これって…」
「ええ、アイテムボックスよ。」
アイテムボックスとは、亜空間の中に、武器や、魔導具、倒した魔物の素材等を収納出来る魔導具だ。その容量は、持ち主の魔力に左右される。
「えぇ?これ絶対高かったですよね…」
アイシャが、おっかなびっくりアリアからそれを受け取る。
「うーん…いくらくらいだったのかしら…代々師匠から弟子に受け継がれて来たものらしいから分からないわ。でもね、一つだけ私の師匠から、言われた事があるの、」
「『いつか、あなたにも弟子が出来て、その子が成長して、1人前になった時、魔導具とこの袋を譲りなさい。』と」
「えっ…?」
(つまり?)
2人にもある程度は、理解が出来た。2人にとって、師匠であり、この数年間、数え切れない事を指導してくれた、大切な人が何を言おうとしているのか。
「本当は最終試験の様な事をやるつもりでいたけど、もう大丈夫ね。2人とも。ある意味、この戦いが最終試験の様なものなのかも。少なくとも、私の目には、あなた達は1人前の魔法使いよ。安心しなさい。」
「師匠…」
アリアは、2人の肩を叩きながら手を置いた。
「2人ともまだ、頼りない所はあるかもしれないけど、魔法に関しては充分よ。ちゃんと足りない所を補い合い。無事に帰ってきなさい。」
「「はい!師匠!」」
2人を見つめるアリアの目には微かにキラリと光る水滴が見えた。だが、ソフィーはそれに気づいたが、何も言わなかった。
「えっと…道中読んだら便利そうな魔法の本や、食糧、ポーションはアイテムボックスの中に入れて置いたから、上手く使いなさい。じゃあ、外の馬車に行きましょ。」
そう言うとアリアは、見送る為に、2人に付き添って軍務局の外に出た。
外に出ると、雲一つない青空が広がり、日差しが照りつけ、乾いた風が吹いていた。
そこには、何台もの馬車が並んでいた。何頭か、馬車ではなく、鞍が付けられている馬もいる。
「えっと…あのバカは…あっ、いたいた」
アリアは誰かを探してキョロキョロしていたが、見つけて手を振って呼んだ。
「おーい、レイモンドのばかやろー!」
呼んだ先には、鎧を着た金髪の男が居た。他の兵士に何やら指示をしていたが、アリアの暴言に一気に振り返って顔をしかめた。
(えっ、師匠…その呼び方で良いんですか…)
「おいごら、なんつー呼び方してんだよ、このクソアマが!」
(あっ…この2人は相変わらずだ…)
「それで、援軍の準備は?」
「あぁ、とりあえずもう大丈夫だ。ただ…」
段々とレイモンドの顔が俯いていく。
「ただ?」
「約1名、一緒に行きたいと言って聞かない奴が居るんだよ…そこの嬢ちゃん達が行くと知ったら尚更でよ…」
ソフィーには1人心当たりがあった。
「えっと、それってもしかして…」
「だーかーらーレイモンド!俺も連れてけ!!」
大声で喚きながら、1人の美青年がこちらに歩いてきた。
「おいごら、王子!あんたにはまだ早いんだよ。」
(やっぱり、ジーク様だったぁー!どうしよぉ)
そう言って頭の中で大騒ぎしながら、現実で赤くなる両頬を手で抑えた。
「いや、おかしいだろ!なんで同年代の2人が行っていいのに俺はダメなんだ?それに兄上だって…」
ソフィー達の方を指差しながらジークは、レイモンドに喚く。
「2人は、アリアが良いって言ってるんだよ。」
「じゃあ、レイモンド、俺に剣を教えているお前が許可してくれ。頼む!」
「いや、でもな〜」
レイモンドは、後頭部を掻きながら、悩んでいる。
その後もジークとレイモンドが言い争っていると、ソフィーの隣のニヤニヤした顔のアイシャが、肘で小突いて来た。そして、小声で話しかけてくる。
「ねぇねぇ、これチャンスじゃない?普段、向こうも王子としてやる事あって中々会えないんだし、仲良くなるチャンスかもよ?」
「えっ?!まって…それは流石に…」
(でも…これで距離を縮められたら…)
「とりあえず、何とか一緒に行く口実を作らないとね。」
「姉さん、お願い出来ない?」
「はぁ、ありえないでしょ、こういう時は自分から行かないと、ほら!」
そう言って、アイシャはソフィーの背中を1発叩いて、ジークの前に押し出した。
「ちょっ、姉さん!」
「ん?どうしたんだソフィー?」
「えっと…レイモンドさん、ジーク様も一緒に行くことは出来ませんか?私たちとしても、同年代の人が居るのは心強いですし、気が楽にもなります。
それに、殿下の剣も決して弱い物ではありません。それは、何度も相手をしているレイモンドさんならご存知と思います。この緊急時、戦える人は1人でも居た方が良いと私は思いますが、どうでしょうか?」
「そうだよなぁ…俺も別に反対ってわけじゃないんだけど…王子の身に何かあった場合、責任は俺の方に来るんだよなぁ…」
「そこは、私と姉さんもジーク様のサポートに回ります。私達は、2人とも魔法使い、前衛に向いてるとは言えません。そこをジーク様に補って頂きたいんです。」
「なるほどね、ただ、仲良しこよししたいわけじゃなくて、そこもちゃんと考えていたわけね。良いでしょう。責任はそれぞれの師匠の私と、このバカが持ちますわ。」
「ちょっ、バカってなんだよ。まぁ、そういう事だ。こいつは万が一に備えてこっちに残るが、俺は同伴するから、多少は頼ってくれ。」
「よし、じゃあ決まりね。今回の目的は、まずは、生きて帰って来ること。新米兵士と一緒。生きて帰って1人前よ。無茶しないでね。お願いよ。」
「「はい、師匠!」」
そうして、3人は同じ馬車に乗り込んだ。
馬車は、よくある幌馬車で、中には3人以外に、御者と、衛兵が2人が、既に居た。
3人は床の木を軋ませながら、馬車の両サイドの長椅子の1つにジークが、それに向き合う形でソフィーとアイシャが座った。
外では、馬車の直ぐ隣の馬にレイモンドは跨った。馬車を守るために、随伴する形だ。乗り込んだら、直ぐ先頭の馬車が動き始め、3人の馬車も進み始めた。
「師匠!行ってきます!」
ソフィーは元気よくアリアに手を振った。
「えぇ、気をつけてね。2人とも絶対無茶しないでね。」
2人は、アリアの姿が、見えなくなるまで、馬車の後ろから手を振り続けた。
アリアは、自身の弟子を見送りながら、その姿が見えなくなると、1人、震える両手を組んでそれを顔の前に合わせた。
「ソフィーをこの世に送ってくださった女神様…どうか、2人の事を守ってください…どうか、お願いします…」
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馬車は、順調に進んだ。途中、数匹のオオカミの魔物が出たが、レイモンドや王国軍の兵士が瞬殺した。
そうして、日が暮れて、その日は森の開けた場所で野営する事なった。
「明後日には、討伐隊に追いつく事が出来ると思うぜ。ちゃんと休めよ王子様。こっちが、俺と王子のテント、そっちが嬢ちゃん達のテントだ。じゃあ、また明日。」
そう言ってレイモンドは、半ば押し込み気味にジークとテントに入って行った。
「ソフィー、お姉ちゃんもう眠いなぁ〜」
アイシャがあくびをしながら、眠気を訴えた。
「じゃあ、私達も寝ましょ。」
「はぁ〜い」
そう言って2人も休むことにした。
飛竜や悪魔と戦ってからずっと忙しかったソフィーは、直ぐに眠りについた。
【数時間後】
ソフィーは目を覚ましてしまった。
理由は簡単だ。背中が痛いのだ。
地べたに、大きい布を敷いて、そこに寝転んで、毛布を被って寝ている。
背中は痛くなって、当然だ。
以前、今回の様な事があった時のために、アリアの特訓で数日間魔物が生息する森で野営をした時も同じ寝方をしたが、その時もこの痛みに非常に悩まされた。地形にもよるが、ゴツゴツした地面が、背中に当たって痛くて休もうにも一苦労なのだ。
(よく、兵士とか冒険者ってこれで寝れるよね…)
寝返りうって隣を見ると、アイシャが、気持ちよさそうに眠っている。
その後も30分程、寝ようと、目を瞑っていたり、もぞもぞ動いて体に噛み合う場所を探したが寝ることが出来ず、少し外の空気を吸おうと外に出た。
テントの外は、夜というのもあり、少し冷え込んでいた。
外には、魔物を警戒して数人の兵士が見張りとしてまだ眠らずにあちこちに居た。焚き火もいくつか焚かれている。
「こんな遅くまで大変だな…」
(まぁ、時計無いし、具体的な時間分からないけど。)
王都では、日中は日時計で1時間事に鐘を鳴らして時刻を都民に知らせているが、今は夜なので1度寝てからどのくらい経ったのかは、ソフィー自身にも分かってはいなかった。
近くを見渡すと、座れそうな岩場があったので、ソフィーはそこに腰を下ろした。
そして、上を見上げると…
「え、うそ…」
雲一つない満点の星空が広がっていた。
まるで、宇宙に居るかの様な壮麗な空だった。
「こんなの初めて…」
ソフィーはぽつりと呟いた。
王都だと、周りの光や煙等が邪魔をしてしまい、ここまで綺麗なのは見れない。また、以前、アリアの元で野営をした時は曇りで星空を眺めることは出来なかった。
(オリオン座とか無いや…知らない並びの星ばかり…やっぱりここは私の知らない世界なんだな…)
ソフィーはしみじみとした思いでいると、急に冷たい風が辺りを吹き付けた。
「うーさっむ。」
ソフィーは両手をさする。
それでも、気にせずに滅多に見れない綺麗な星空を眺めていると…
「何してんだ?」
ジークだ。彼も眠れない様だ。
「そんなで居たら風邪ひくぞ。これでも羽織っとけ」
そう言ってソフィーの肩に毛布をかけてくれた。
「あっ、ありがとうございます、ジーク様。」
その言葉にジークは少し困った様子だ。
「いや、あのさ、2人なんだし、敬語とかやめてくれよ。俺達それなりに仲良いだろ?」
「えっと...ごめんなさい。ジークが敬語じゃなくても良いのは分かってるんだけど、周りの目が気になっちゃうんだ。」
(って、待ってジーク様と…2人?!)
ソフィーの顔の温度が上がっていき、心臓の鼓動が早くなっていく。
「まぁ、ちゃんと気にしてるのは良いと思うけど、ちょっと距離感を感じるのは嫌なんだよなって、どうした?具合でも悪い?」
ジークは、ソフィーが少し変なのに気づき、気にしてきた。
「ううん、こうして2人で話すのなんて、久しぶりだなって…しかもこんな大絶景の下でなんて贅沢よね。」
(ドキドキする…どうしよう)
「確かにな、お互い忙しかったのもあったし。」
「そうだよね...ジークさま...じゃなくて、ジークは最近どうなの?相変わらず剣の特訓ばかり?」
「そうだな…それもあるし、最近は政治の事なんかも勉強してるんだけど、これがまた本当に難しくてな?俺は次の王様じゃないのによ。」
「でも、きっと、そこで、学んだ事は決して無駄にはならないと思うよ。お兄さん...アレク様を助ける立場になっても良いだろうしね。」
「そうだったら良いけどなぁ。ソフィーは?」
「私も、前と変わらず魔法の勉強だよ。でもね、今回の遠征に行く前にね、師匠が、私と姉さんはもう1人前の魔法使いだって言ってくれたんだ。」
「え?それって凄いじゃないか。」
「うん、凄い事だとは自分でも思うけど、やっぱりまだ不安かな?今回の事が無ければ、まだ研究室で勉強してたと思うな。」
そう言ってソフィーは苦笑いをした。
「そういえば、ソフィーはどうしてこの遠征に一緒に行こうと思ったんだ?ただの魔物狩りとかじゃないんだよ?魔王だよ?怖くないのか?」
「そんな、怖いに決まってるよ。王都を出てからずっと怖かったよ。もう、帰ってこれないんじゃないかって。とーさまとかーさまに二度と会えない気がして…本当に怖かった…」
「でもね、魔王を倒してくれってある人に頼まれちゃってね。その人のおかげで今生きてる様なものだから、断るわけにもいかなくてね…怖くてもやるしかないんだ。怖くても…」
いつの間にか、ソフィーの膝に置いていた手は、小刻みに震えていた。
すると、ジークがその手に自分の手をそっと優しく覆ってくれた。
「大丈夫。お前のことはちゃんと俺が守る。俺だって怖い、めちゃくちゃ怖い。でも、ソフィーを1人では戦わせない。約束だ。戦う時は一緒にやろう。」
(ジークの手…あったかいな…落ち着く…)
「ねぇ、ジーク。もう1つ約束してくれない?」
「なんだ?」
「えっ、えっと…」
ソフィーは緊張して、ゴクリと唾を飲み込んでから口を開く。
「こ、この戦いで、無事に帰ることが出来たら、い...一緒に食事に行っていただけませんか?」
遂にソフィーは言い切った。周囲の静けさが、ソフィーの恥ずかしさをより引き立たせた。
彼女の顔は先程よりも更に赤くなっていた。
夜で暗かったのが非常にありがたかった。
「良いぞ。そしたら、アイシャや君らの師匠も…」
「ち、違う!」
「え?」
「えっと…私とジーク…2人でご飯行きたい…だめ?」
ソフィーは、恥ずかしさで目を合わせられず、俯き気味で言い切った。
ジーク自身も言われた事の意味が分からず、会話に数秒間の空白が空いた。
そして…
「俺なんかで良いなら、行こう。ただ、許可を貰うのは面倒だから、こっそりお忍びで行かないとかもしれないな。」
と、ジークは快諾してニカッと笑った。
「それでいいよ、楽しければいい!」
「そっか、じゃあ約束だな。帰ったら2人で食事に行こう。」
(てか、これって前世だったらデートの誘いなの?そんなの1度もしなかったから、分からないけど…)
ドキドキが止まらないが、ソフィーは無邪気に微笑んで
「はい!」
とだけ言った。
そうして、2人は再び星空を眺めた。
すると、その時だった。目の前の絶景を切り裂くかのごとく、真っ白な光るものが右から左に横切って消えた。
ソフィーは実際にそれを見るのははじめてだったが、本や、テレビで見たことがあった。
「あっ!待って、流れ星!」
「あっ、本当だ。綺麗だな。」
「お願い事何にしよう…」
「お願い?」
(そっか、こっちじゃ流れ星に願い事をする文化無いのか。)
「えっとね、私の故郷では、流れ星に願い事をしたら、その願い事が叶うって言われてるの。」
「あ、そうなのか、じやあ何をお願いしようかな…そうだな、魔王に勝てるように!どうだ?分かりやすくて良いだろう?ソフィーは?」
「あはは、なんかジークっぽくていいや。えっとね、私はね、ジーク、アイシャ姉さん、レイモンドさん、アレク様、コルトさん、一緒に戦うみんなが無事に帰れます様にってお願いしたよ。」
「そうだよな…みんなで揃って帰りたいよな…」
(まぁ、本当に私がしたお願い事は全く違うけど…)
「んーーそろそろ寝ようかな…ソフィー、おやすみー!」
(ごめんね、ジーク、私が本当は… “ジークといつまでも一緒に居られますように!” ってお願いしたんだ...きっと叶うよね...?)
そう言って、見えない、ふたしかな未来への期待と希望を、一瞬しか輝かない夜空の細長い一筋の星に願うのだった。
To Be Continued
Twitterの方でソフィーをイメージして描いたイラストを載っけました。良ければ見てみてください!




