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「悪魔の力」

最近更新出来ず、すみません。

あなたを好きにならなきゃ良かった〜エルフに生まれ変わったお医者さんの波瀾万丈記〜


10話「悪魔の力」



魔王の配下の悪魔オリアス…ソフィーにも魔力探知でその強さはある程度、推し量る事が出来た。


(魔力量に関しては私とそこまで差はないけど…きっと私より強い…)


「おや、人間だらけの国という話でしたが、あなたはエルフですか。珍しいですね…数百年ぶりに見ましたな。えっと…エルフの…」


「ソフィーよ。」


「おぉ…ソフィー殿。初めまして…」


(なんか、変に礼儀正しいんだよね…悪魔って皆そうなのかな…)


ソフィーは、初めて見る悪魔を、以前読んだ文献と照らし合わせて、慎重に観察した。


「それで、挨拶って??もう帰ってくれるのかしら。」


「いえ、そんな訳無いでしょう。これから挨拶を始めるんですよっ!」


言い終える瞬間、オリアスは一気にソフィーとの間合いを詰めてきた。その爪でソフィーに斬り掛かる。

それをソフィーは。手に持っていた『氷柱剣(アイシクルソード)』で受け止める。

爪が氷に突き刺さり、ソフィーはそれを手放し、後ろに下がり、距離を取る。


「くっ、速い。」


間髪入れずに魔法を放つ。


死之氷結(デスフロスト)


先程、飛竜(ワイバーン)を倒した魔法をオリアスに対して放ち、彼の目の前に迫る。

しかし、オリアスは、それを片手で、あっさり防いでしまった。


「あなたの実力そんなものなんですか?先程の飛竜(ワイバーン)、そんなに弱く無かったはずなんですがね…もっと我を楽しませてくださいよ!」


そして、再びソフィーに斬り掛かる。その素早さにソフィーは反撃出来ず、防戦一方になつてしまう。オリアスの爪が肩をかする。


「いたっ…」


服を切れて、細く血が滲んだ。痛んだものの、ソフィーは直ぐに体勢を立て直して、2度目のオリアスの攻撃をかわす。


「逃げてばかりでつまらないですねぇ…」


「慎重って言葉あるの分かる?」


(そういう事なら…)


氷結槍(フロストスピア)


右手に、『氷結剣(アイシクルソード)』よりも長い、氷の槍が生成される。両端は鋭く尖っている。

そして、今度はソフィーが距離を詰める。オリアスに対して、2回突きを繰り出すが、全てかわされる。

そして、3回目突きをかわした瞬間、左手に『氷柱剣(アイシクルソード)』を生成し、槍の攻撃をかわして移動したオリアスに切りつける。

人間や、通常の魔物であったならば、簡単にかわすことは出来なかった攻撃であった。

しかし、気づいたら視界からオリアスが消えていた。


「今の攻撃は、なかなかでしたね。もし、悪魔以外の人間等の下等生物であったなら、致命傷を与えられていたかもしれません。まぁ、私には大したことありませんでしたな。」


見上げると、そこには、コウモリのような大きな翼が背中から生えたオリアスが地上10m程の高さに居た。


(当たり前か…相手は悪魔…羽なんてあって当然…)


「そろそろ、終わりにしますか…貴方1人を相手に時間を無駄にするのもあれですし。あなたには、死んでいただこうと思います。」


そう言うと、オリアスは、一気に右手に魔力を収束しだした。ソフィーは、その魔力を感じ取り、距離を取って、身構える。そして、オリアスは唱えた。


「『悪魔之嵐(デビルテンペスト)』」


その魔法を唱えると、オリアスの右手から、赤黒い凄まじい竜巻が発生した。オリアスは、その竜巻を出している右手をソフィーに向ける。周囲の草を巻き込み、土をえぐりながら彼女に迫る。


「まさか…闇属性…ってやばいこの風…強すぎる」


ソフィーは吹き飛ばされそうなのを必死に堪え、防御魔法を唱えた。


氷結壁(フロストウォール)』『聖光防御(ホーリープリベント)


竜巻に対し、自分の前に氷の壁と金色の魔法陣の防御魔法を発生させた。

複数発動で、必死に耐える。この竜巻を直接喰らったら、命に関わると、ソフィーの本能が訴えて来ていた。


「くっ…」


氷の壁に、大きくヒビが走る。そして、その周りに細いヒビが毛細血管の様に広がる。そして、壁が砕けた瞬間、


氷結壁(フロストウォール)


再び、光の魔法陣の手前に氷の壁を発生させた。


(これで流石に止まって…お願い…)


そして、『悪魔之嵐(デビルテンペスト)』に何度も防御魔法で耐え続けて、1分。

やっと、オリアスはこの魔法では倒せないと思ったのか、竜巻を出し続けるのを止めた。


「複数魔法発動とは…素晴らしい!!是非仲間に来て頂きたいものだ…」


突然オリアスは、そう言ってソフィーを褒めて、拍手をした。


「ソフィー殿の実力ならば、我らが主もきっとお認めになるはず、いかがですか?魔王ギルガゼイヤ様の部下になるのは?人間ではなく、エルフの体ならば、悪魔との魔力眼継承も出来るでしょうし…そうしたら、我をも超える力を得られますぞ。」


(え?何言ってんの、この悪魔…って魔力眼継承って何?)


「そんなの決まってる。そんな魔王の味方になんてならないわ!」


(私がそんなのになるわけない)


(ウィンド)』『氷柱剣(アイシクルソード)


「私は、とーさまとかーさま、姉さんと師匠、そして、この国の人の為に戦う!」


魔王の味方になるのを断固拒否したソフィーは、そのまま、風魔法で飛び立ち、オリアスよりも上に浮かぶ。

そして、氷の剣が、手のひらの雪の結晶の魔法陣の上に生成されて、手の上に浮かび上がる。

ソフィーは、それを野球ボールを投げつけるかの様なモーションで、魔力操作で操りながら、氷の剣をオリアスに向かって飛ばす。

オリアスは、1度はをかわしたが、剣はオリアスを追い越した後、Uターンをし、前世の追尾式のミサイルかのように再びオリアスを狙う。

オリアスはそれもかわすが、それでも剣は追いかける。

ソフィーは、『氷柱剣(アイシクルソード)』を更に追加させ、2本だったのが、3本。4本、5本とどんどん増やしていく。


(集中…硬く、鋭く…)


幼い頃、氷の剣を生成させるたけで、冷たいのを握って振り回していた頃と比べたら凄まじい成長だ。生成した剣も、昔よりも硬く、鋭くなっていた。


「素晴らしい!!なんて魔力操作だ!!まだ若いのにこんなに強いとは!是非とも味方に欲しい!」


氷の剣をかわしながら、再びソフィーを褒めちぎる。

口では褒めながら、オリアスは、どんどん増えていく氷の剣を、魔力弾のようなものを撃ち、粉々にさせていく。

しかし、ソフィーは、破壊される度に新しいのを追加し、更に本数を増やしていく。

気づいたら、オリアスの周りは氷の剣がグルグルと飛び回り、刺そうとしてくるため、飛んで逃げれる隙間も無かった。

そして、遂に、かわし損ねた1本が左肩にグサリと突き刺さった。人間と違い、赤くない黒い血が吹き出す。


「グハッ…」


肩なので、致命傷にはならないが、かなり痛そうだ。


「この我が…こんな小娘に傷を?!」


(よし、やっとダメージを与えられた!)


「とどめよ!」


「『二重発動(ダブルアクティベーション)』『氷之断罪(アイスオブジャッジメント)』」


ソフィーが魔法を唱えた途端、オリアスの足元と頭上に『氷柱剣(アイシクルソード)』よりも複雑な雪の結晶の魔法陣が現れた。そこから、20本近くの氷の剣が、出現した。

彼女は、数年前なら苦労した『死之氷結(デスフロスト)』並の上級魔法を2つ発動させたのだ。

ソフィーは、目の前に伸ばした右手を上に、左手を下に向ける。


「喰らえ!!」


右手を下にさげ、左手を上に上げる。

すると、その左右の手の動きに合わせて、上下の魔法陣の氷の剣がオリアスの体を串刺しにし、蜂の巣にした。


グガァアァァァ!!!


オリアスは、苦しみの悲鳴を上げる。

そして、氷の剣は魔法の粒子となって、消滅し、魔力で出していた背中の翼が消え、悪魔の体は、氷の剣で開いた穴から、真っ黒な血を流しながら、地面に落ちていった。

そして、土埃をあげて、着地した。

その直ぐ近くに風魔法で飛んでいたソフィーも着地し、銃を突き付けるかのように、頭に向かって手に持った『氷柱剣(アイシクルソード)』を向ける。


「まぁまぁ強かったわ。2年前なら私が負けてたわ。でも、あなたの負けよ。」


「そ…そうか…我も…た、楽しかった…ぞ…」


「そんなのどうでもいいけど、もうそろそろ、とどめ刺すね。」


オリアスは突然、うめきながら話し始める。


「うっ…ま、まぁ、待てエルフの娘よ…お、お前はまだ、この世界で亜人が生きていく事の辛さを知らぬ…そ、その苦しみに遭わない為にも、わ、我はそなたを…はぁ…こちらに誘ったのだ…お、お前のその魔力の強さ…い、いつか…きっと…お前自身に悲劇をもたら…す…かつての…わ…我が主のよう…に…」


そう言って、オリアスはこと切れた。


「今の言葉…どういうこと?」


その質問に、オリアスが答えることは無かった。

ソフィーは、連戦の疲労で、その場で座り込んだ。

死体があちこちにあるため、休憩するには少々怖い場所だが…


回復(ヒール)


ソフィーは、その場で座ったまま、先の戦闘の怪我を自分で治療を始めた。

肩や腕などの、オリアスの爪で切られた傷がまたたく間に塞がっていく。

そして、ほっと一息ついたのも束の間。


「ソフィー!!!!」


城壁の方から大分遅れてアイシャが向かってくる。後ろには、共に戦っていた魔法使いや、兵士が数人着いてきている。


「姉さん!!」


「ソフィー大丈夫?遅れてごめんね、兵士に回復魔法かけてて…そしたら、なんか、凄い魔力の奴が現れて、黒い竜巻が見えてこっちに来たんだけど……って誰その死体…」


「えっと…魔王の幹部の悪魔だって…」


「え?!あ、悪魔?飛竜(ワイバーン)だけじゃなくてそんなのまで居たの?」


「なんか、急に地面から黒い渦が発生して、そこから出てきた。本人が魔王ギルガゼイヤの配下の悪魔だって自己紹介してたよ…」


「えぇ…怖すぎそれ…てかソフィー服ボロボロじゃん!大丈夫なの?」


「うん、平気よ姉さん。何ヶ所か引っかかれたけど、回復魔法かけたから大丈夫よ。」


「はぁ…前からだけど、すぐ無茶ばっかするんだから…」


「ソフィー、無事でよかったわ。話は変わるけど、魔王とその悪魔の情報が欲しいの。はっきり言ってこれは宣戦布告に近い行為よ。」


いつの間にか、アイシャの後ろに居たアリアが、ソフィーに説明を求めた。


飛竜(ワイバーン)を倒した後、急に地面から現れて、戦闘になりました。魔王ギルガゼイヤの配下の72柱の悪魔の1人のオリアスと名乗っていました。闇属性の魔法を使っていたので、悪魔で間違いないです。苦戦しましたけど、上級魔法を使用して、何とか倒すことが出来ました。」


ソフィーは簡潔にアリアに説明した。

その言葉にアリアは考え込む…


「魔王の勢力に関しては未知数な事が多いが、72(にん)という事は、少なくとも同等或いはそれ以上の実力の悪魔が71柱居るということね…」


「あれが71人…あれよりも強いのも居る…」


悪魔の強さを実感したソフィーは、顔を引きつらせる。

そして、ふと思い出した事を師匠に伝える。


「あ、師匠。この悪魔が言ってたんですが、『兵士がほとんど出払っていると聞いていたのに』と言っていました。」


「なるほど…つまり、こちらの情報が魔王側に漏れてると。軍や王室内にスパイが居る可能性があるのね…」


「師匠、正直面倒ですね…」


アイシャが気持ちを正直に言った。

アリアは気にもとめず、話を続ける。


「そしてて、今回の討伐隊が向かった魔物の大量発生と、王都襲撃は、どちらも魔王側が企んだ物で間違い無いわね。兵士を王都の外に陽動し、そのタイミングでこっちを襲撃…正直ソフィーが居なかったら危なかったわ。よくやったわねソフィー。上級魔法も使いこなせている様だし、この数年で素晴らしい成長よ。今後も色々任せるかもしれないわ。よろしくね。」


「はい、師匠!ありがとうございます!」


(やった!これまでの成果を師匠に認めて貰えた!)


状況が状況なので、飛び跳ねたりして、思いっきり喜べないが、師匠に褒められたのはソフィー自身も非常に嬉しかった。


「師匠〜私は〜?」


アイシャが、自分はどうなのかと、アリアに尋ねる。


「あなたは…まず、遅刻しないようになりましょ?」


「うっ…はい…」


正論過ぎて言い返しようが無い。

そのリアクションに周りは笑いに包まれたが…


「アリア殿!緊急です!!」


1人の兵士が馬に乗って南門の方からこちらに叫びながらやってきた。


「何ですか?今こちらも緊急に近いのですが…」


「はぁ…はぁ…緊急です。先程、コルト殿とアレクサンダー殿下が率いる討伐隊が、魔王率いる軍隊と会敵しました!魔王軍には、10人以上の悪魔と、強力な魔物、そして…」


兵士の声が震えてつっかえてしまう…


「何ですか!続けてください!」


「そ、その軍を率いていたのが、魔王ギルガゼイヤ自身との事です。そして、既にこちらの兵士は半数弱が死亡、或いは重症をおい、戦闘不能となっています。そのため、こちらからの援軍を要請しています。以上が通信用宝玉からの連絡です。」


ちなみに、通信用宝玉というのは、占いで使う水晶玉に似た宝玉を用いた通信用の魔導具だ。宝玉の中心に、対話相手の顔が映し出される。軍務局から、今回の様な討伐隊との連絡手段として用いられる。高級のため、重要な施設や、任務でのみ使用される。


この報告を聞いて、一気にその場に居た通達に来た兵士以外の人達の表情が、一気に固くなった。


(魔王…転生する前に女神が私に倒して欲しいと頼んできた…私が転生した理由、そして、ここで生きている目的は奴を倒すこと…私が行かなきゃ、皆死んじゃう…超怖いけど、こうなったら、やる事は決まっているよね…次にいつ魔王と対峙出来るかも分からないし、チャンスよね。)


ソフィーは自身の震える手を抑えて


「し、師匠!私が援軍に行きます!!」


と右手を挙げて、叫んだ。



To Be Continued

もう少し、オリアス強めにしたら良かったかな。でも、72柱のうち、下の方だからね。この位がちょうどいいかな?元ネタはソロモンの72柱の悪魔です(オリアスは59番目)

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