表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鵬、天を駈る  作者: 吉野
4章、『○○○○○○○』
82/248

第81話 結局、"局"って何ぞ?




この話が4章の最後となります。



………が、5章のタイトルとプロットが


まだ未定。



ちょっと投稿の間隔が空くかも知れません。







屋敷の書院にて胡座(あぐら)でくつろぐ。



白湯を(すす)りながら話を思い返す。






『――――以上が詳細となります。



まだ試作段階ですし、当然に問題が起こります。


しばらくは大変でしょうが、(よろ)しくお願いします。




……………あと、一連の献策はその全てを


三郎さまの考案として広く発表致します。


"原案を(まと)めて発表した"



―――――まあ、間違いではないですよね?





この未来の功績をもって、


三郎さまの弾正忠家の継承を後押しします。』






……………………わからぬ。




(わか)っていることは、これが政治的な策であること。




弾正忠家の継承を内外で確定的にさせることで


末森で動いている"弟"の蠢動を押さえつけ、


無意味にしてしまう策であることだ。





三郎さまが家中に総じて認められてしまえば、


アレの行いは継承争いでなく謀叛(むほん)となる。



そうなれば尾張中に陰口を叩かれるタダの愚か者。



弟もアホウではない。


さすがにそこまではやるまいよ。






………………………とはいえ。



その為だけにこのような(おお)きな功績を


自分から手放すか?




まともに考えてあり得ん。



弾正忠家に対して絶対の忠義があるならまだしも、


そこまでアレに忠義が強いとはいえない。





………………読めんな。



相手の考えが、わずか数え九つの童のそれが


読めぬというのがこんなに不気味に思えるとはな。





ただ、確実なのは


弾正忠家に弓引くようなつもりの無いことだ。




主家に(そむ)く心積もりがあるならば、


むしろ継承争いを大きくする。




もう少し巧みであるなら、


教本通りの勘十郎さまを()すであろう。




…………………弟が思っているように。


読みやすく、それ故に動かしやすい。





その様な狙いがあるなら、


三郎さまの様な"動かしにくい"者を推さない。



もっと別の手を考えるはずだ。






少なくとも、尾張を狙う思惑は持ってはいまい。



………………それだけが救いか。









しかし、大した構想だな。



三郎さまの案をどこまでも


執拗(しつよう)に却下するだけのことはあるというものだ。



手元に良兵を集めることだけしか


考えていなかった我等に比べ、この案は


軍事のみでなく商いや政にも高い効果がある。




――――――――いや、そうではない。



…………逆だ。




那古野を豊かにすることで人を呼び込み、


そこから良兵を見出(みい)だす。




商いと政が先にあるのか。


結果として軍事が着いてくる。




熟熟(つくづく)(おお)きな策だ。


そして三万貫という圧倒的な銭を投入することで


成功はほぼ確約されている。



失敗しても那古野は栄えるのだ。


桁違(けたちが)いの銭によって。






末恐ろしい小僧だ。


明らかに先を見透(みとお)している。




目先の三万貫よりも、それを投入して得られる


格段の未来を選びとるか。





尾張は大きく動くな。



………………敵ながら哀れだよ。


――――坂井 大膳。



うかうかしていると先は(くら)いぞ?





―――――――しかし。



何処(どこ)へ動くか、何処へ転がるか(わか)らん小僧を


このままに放置する訳にもいかんな。




何か手を打っておくべきだな。






―――――ふむ。





……………そういえば。





三郎さまと(つる)んでいた前田家の暴れん坊らが、


アレと関わって大人しくなったと言っていたな。



むしろ書を読むなど人が変わったようだとか。





―――――――その話を使うか。



林の家から、年若い者一族の者や従者を数人


小僧の所へ送りつけよう。




…………三郎さまとその供回りを


心がわりさせた手腕、この者達にも教授願いたい。



――――――――とでもな。



後々に彼等に向こうの様子を書いた手紙を送らせて


小僧の動きを察知できるようにしておこうか。





少なくとも一歩、秀でた者だ。


その動向は(つか)んでおくべきであろう。





―――――――――"局" 。



尾張李部管理局(おわりりぶかんりきょく)…………か。





ずいぶんと、大それた策だよ。












―――――なぁんて事を、思っているのだろうな。




林さまと…それから平手さまの所から、


やれ手習いだ行儀見習いだと。



若い者達をどうかよろしく頼むと手紙が来ている。





十のうち十、完全にこちらの様子見と監視だろう。



"わからないモノ"を放置することが出来ない。


………その一言に尽きるのだろうさ。



―――――よう解る理屈だ。





ある意味、わかりやすい。








ま、戦国の常識からすれば


私の行いが異端の極みであることは承知の上だ。




西洋なら異端審問の餌食だ。


ああ、怖い怖い。



日本人でよかったよ。





―――――だがねぇ、お二人さん。




その一手は、ちょっと悪手だよ?


…………ま、考えようによっては良い手だが。






――――――若いっていうのは善し悪しだ。



前へ進む積極性に優れているのが若さだがね、


若いというのは同時に


"思想が固まりきっていない"事でもある。





そ ん な モ ノ 、 そ の 程 度 の モ ノ な ど



幾 ら で も 塗 り 替 え が 出 来 る の だ よ ?





――――とはいっても別に洗脳するわけではない。



教育の過程で高等な政治学・経済学を、


高次元の政経思考を植え込むだけだ。



せっかく送ってくれた人材だ。


内務の担い手として(きた)えさせてもらおう。





そうすれば彼らはこちらの意図を理解できる。


自分たちの家に正確な意図を伝えられよう。


その結果として


『こちらの政治改革に一番に順応』が出来、


『こちらの経済システムに便乗』も出来る。






つまり、林と平手の家はこれより


将来において確実な栄達が約束されることとなる。



他でもない若い世代の本人たちの力によって。






――――――――――まあ。


お二人の望んだ本来の意向からは、


これでもかと大きく外れることになるのだがね?






ふふふ。


残 念 無 念。



世の中なんぞ、そんなもんだよ。











『尾張李部管理局』。


そう名付けられたその組織は、

戦国時代にありながら世界的に有名な存在である。


政治・経済そして軍事に教育。

あらゆる要素を網羅(もうら)したこの制度は、

織田弾正忠家を(またた)く間に近代組織に変える。


庶民の自立、経済の健常化そして学問の自由化。

これによって、尾張は"地力"から強くなる。

この事が将来の躍進の底力となったといわれる。



近代社会において、

民主主義が発展・熟成するにつけて。

時代の変遷(へんせん)と共にこの制度は

『専制制度から民主制度への移行時の、

理想的なアプローチのひとつ』として

極めて高い評価を受けるようになる。


織田 信長のことを、『民主主義の導き手』

と呼ぶことがあるのはこのためである。







    第 4 章


 『 尾 張 李 部 管 理 局 』









うすうす気が付くとは思いますが、


(せん)だっての会合の直後の林さまの独白から


話は始まります。



時間が元に戻りました。



以後の話はこれ以降のものになります。





主人公はこの時代ではあからさまな異端。



警戒されるのが当たり前で、


老将二人の行動はそれ(ゆえ)にまるっきり筒抜け。


むしろ織田家中における内政官の補充のために


利用される。



……皮肉なことに、一部ではこのことを


『将来を見越した大英断』と評価される。



実際に繁栄のための


最良の一手となったことは間違いないため。





そしてノッブ様。


"脱け殻の計"のせいで、未来で功績が爆上がり。


『極めて高度の開明的な思想と


絶妙なまでの優れた政治バランスを持つ』


として政治的な評価が恐ろしく高い。



革命も混乱も動乱も起こさずに


極めて穏便に民主化を進めた、と見られているため。





※ フランス革命などと比較すると、


君主の側から一定の民主化を安定的に進める事。


これがどれだけの超高難易度かが分かる。






結果、某野望シリーズで"政治"がスゴく高くなる。



また"あちらの世界"の某ゲームにおいてクラスが


"アーチャー"ではなく"キャスター"になっている。




本人からしたらひどい迷惑な話。







マメ知識



『李部』



日本の律令制度における"式部省"に相当する。


唐名(からな)こと大陸での呼び名が"李部"。


李部は別に(すもも)を管理しているわけではない。


もともとは"吏部(りぶ)"と書いたが、


堅苦しいので"()"という字を"()"に変えた。


いわゆる風流をきかせた当て字。


(どちらを用いても良い)



一般的には官吏の育成や任官、


その管理にあたる部署となる。


人事と育成を(つかさど)る重要部署。




人材を育てる部署として(あやか)って名付けられた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ