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鵬、天を駈る  作者: 吉野
4章、『○○○○○○○』
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第76話 "六兵衛"の対面、○○の対面



なにやらおかしな雰囲気ですが。


ところで皆さん、"鵜飼"さんと"藤林"さんを


ご存知ですか?



わかっている方には、


ちょっとビックリの展開ですよね。



内容は今回で明らかになります。









「………」




(しば)し無言で向かい合う。


この者とここで会うなど、完全に予想外だ。




数年前から"彼ら"が尾張で活動していたのは


私たちには周知の事実だったが。






「――――――どうして気が付かれましたか?」



一応、確認はしておく。


答えてくれるかは別として、


過ちは以後に活かさなくてはならない。




…………………以後が、あればだが。





「――――ふむ。


もともと、我等の一部は"局"を監視しておる。


騒ぎや騒乱を起こされないようにな。



"そうである"として()ていると、


…………貴殿のように時折やって来る"者達"は


案外に解りやすいものでな?




まず貴殿の場合は、"いつもの(くせ)"が出すぎた。


素人があの様な緻密(ちみつ)な報告が出せる訳があるまい。



………もう少し、手を抜くべきであったな。」







――――――――そういうことか、参ったな。


思わず天を仰ぐ。




そういえば、『出稼ぎに来た村衆』という設定だ。


()()()()()を出せるワケがない。


『調査』ということで、


"いつも"の依頼と混同してしまったか。


………初歩的な失策だな。





「それにな、最近"観る目"を研究していてな。



…………目から(ウロコ)であったよ。


農民・商人・海賊・武家に"我等"。


"生業(なりわい)"によって歩みも仕草も違うものだ。


思ったより簡単に見分けが付く。」





―――――――それは思うよりも深刻だな。


観ただけで生業まで突き止められるか。



………困った話だ、これからがやりにくくなる。






――――さて。


上手い事、抜け出せるか?





「……ああ、別に貴殿を取って喰うつもりは無い。


貴殿には"甲賀の里"の方に伝言を頼みたいのだ。



『織田家を交えてそちらと交渉がしたい』とな。



……………よろしいか?


"鵜飼 孫六"どの。」





―――――交渉、と?


どう言うことか?




……………それに、


「一応、話を伺おう。



――――――ところで、


あなたがここに居られるということは、


"伊賀"はいよいよ独立を辞めて


織田に降ったということで(よろ)しいか?



…………"藤林 長門守(ながとのかみ)"。」





――――それとなく流れるウワサ。


伊賀が織田に降ったというもの。




かの地は長年に渡り、


今まで支配者階級を追い出してまで保ち守ってきた


伊賀の独立を()てたというのか?






「………………その辺りも、交渉の場で話そうか。


一先(ひとま)ずは此方(こちら)からの(フミ)を持って里に戻って欲しい。



急いでいるところを悪いが、


一度……伊賀を通ることをお願いしたい。


特例として通行し、見回ることを許可しよう。


この書状を一緒に持って行くといい。」



(わず)かな苦笑と共に、そう返される。





―――――――特例として。



現在、甲賀と伊賀は(いさか)いが続いている。


国境(くにざかい)が緊張しており、通行が(とどこお)っているのだ。




…………とは言うものの、


牙をむいているのはあくまで甲賀のみ。


伊賀はどこまでも丸く納めようという姿勢だ。




―――――それが、その対応が


甲賀の長老たちにとって余計に(しゃく)に触るらしい。



さらに(こじ)れているとか。





「―――――(うけたまわ)った。


では伊賀を通らせてもらおう。


………他に伝言は?」



(いず)れにせよ、話を受けなければ出られまい。


どんな魂胆(こんたん)があるかは知らんがやむを得んか。


ひとまず甲賀への戻り時ということか。




こちらの報告もそろそろだしな。






「―――――ああ、そうそう。


折角の里帰りということならば、


せめて家の者に土産を買って帰るといい。



………無事のみを持ち帰るのではなく、


たまには母や妻を喜ばせてやるといい。」




そう言われて、10貫ほど渡された。


―――――本当に軽くポンと渡された。





「………………………………(かたじけ)ない。」



借りを作るのは避けたいが、


孝行せよと題目を立てられては断りづらい。



………………ありがたいやら、腹立たしいやら。





それとも、


10貫を軽く出すこの御仁を(いぶか)しむべきか。









前回、調べた方。


そして最初から知っている方。


結構な大事だとわかったはずです。



甲賀の上忍と伊賀の上忍三家のひとつとの対面。




"似たような境遇であった"ため、


裏では協調路線が在りましたが表では微妙な関係。


しかも現在は対立の最中。



正直、六兵衛こと孫六は結構決死の覚悟です。




実は、前回の✕✕村という表現。


架空の経歴という隠し設定があり。



そのために✕を使っています。





マメ知識




『局を監視』



織田の急激な発展。


その秘密を探るとなると


訪れるのは必然的に特異点たる"局"となる。



その入り口さえ監視していれば、


侵入者の特定は楽なもの。




なお、秘密を手に入れても簡単には真似できないし


やっても確実に大失敗する。



政経的に高度すぎるほか、多重要素が重なりすぎて


戦国時代の人間には模倣(もほう)が不可能なため。






『観る目』



教えられたのは、職種による筋肉の付き方。


商人は筋肉などほとんどないし、あっても下半身。


農民は全体的に筋肉はあるが痩せ気味。


海賊は上半身の筋肉と極めて高い体幹。


武家は全体的にゴリマッチョ気味に。


忍びは筋肉の構成が機動性特化になる。



これだけでも結構見分けが付くが、


これに加えて職種によって歩き方や身のこなしに


どうしても違いが出てくる。



特に"忍びとそれ以外"は仕草が完全に別物で。


客観的に見せられた伊賀の者達は愕然(がくぜん)



今度は"調練を感じさせない歩き方"


の研究と会得に躍起(やっき)になる。





『伊賀の独立』




当時の伊賀は、"伊賀惣国一揆"といって、


名目上の守護は存在していたが、実際には


地元の地侍による合議制の自治体制にあった。



"伊賀の国"が、"一国が総出"で


"一揆をして独立"しているという状態であり。



現在はどこの支配も受け入れてない。


そのために史実では織田の支配要求を拒絶し、


後に天正伊賀の乱という大争乱・悲劇に繋がる。


その中でも特に有力な三家が、


服部(はっとり)百地(ももち)そして"藤林"。




『10貫を軽くポンと』



上忍とはいえ極貧の伊賀者が、


100万円以上を簡単に関係のない他人に(ゆず)る。



数年前の伊賀の人間なら絶対にあり得ない光景。


正直、偽物と疑うレベル。



孫六としても、


"滅多に出来ない孝行をしてやれ"と言われると


とんでもなく断りづらい。



向けられるのが100%の善意であるため余計に。






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