表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鵬、天を駈る  作者: 吉野
4章、『○○○○○○○』
76/248

第75話 ✕✕村、六兵衛の場合



いまだに続いている"局"のレポート。


すみませんね。



何故か結構に、


ポロポロとアイデアが出るもので。




………もう少しで終わる予定です。



新案が出なければ…………ですが。








今日は、市場調査の仕事。


どうやら村田の店から"局"の方に


口入れが定期的に出されているみたいだ。




この仕事は親切なもので、


"局"のほうから専用の羽織が貸し出される。



背中に大きく『調査中』と書かれているため、


どう考えても胡散臭(うさんくさ)い行いをしていても


『ああ、調査中か。』と納得してもらえる。




初期の方で怪しいと疑われることが多かったために


対策として態態(わざわざ)作ったらしい。




ずいぶんと手際のいい話だねえ。






飯屋はどこも大盛況。


それどころかいまだに客を(さば)ききれていないため、


軽食の屋台がこれの受け皿となっている。



なんとなくだがまだ客の方が多い感じかな?



(ころも)関係はひととおり潤っているが、


中心はやはり古着屋。



着物を新調できる者はまだまだ少ないようだ。


とはいえ、最近では新調するものも


ぼちぼち出始めている様子。



それなりに贅沢ができる者が増えつつある。




あとは那古野の町は急激にひとが増えたため、


住むところが慢性的(まんせいてき)にたりない。




村田屋の商いで町の外の方にて


"木枠のみで組み立てた壁"を持ってきて


"決まった寸法の柱や(はり)"で造る骨組みに差し込み、


"運べるだけの形で組み上げた屋根"を()め込む。


それに土壁や、杉皮などの屋根材を取り付ける


という超高速建築による棟続きの家が


えらく恐ろしい勢いで建ってはいるが、


どうもそれも間に合っていないようだ。




ひとまずは仮の建物を建てて


暮らしてもらっているようだが。





急激に増えた人のせいで一時は悪くなった治安も


最近では収まりつつある。




軽い罪をやらかす代表である傾き者や牢人たちが、


良くわからない見せ物にハマって


悪さを控える様になったのだ。




町全体の騒ぎの発生が低くなったことで


大きな騒ぎも起きづらくなっている。



那古野の町そのものが安定をしているのだ。


一気に繁栄して集まった富が、商人どころか


牢人にまで届きつつある。




誰もが罪など犯さなくても


過ごせる町になってきているのだ。




それゆえにこそ、さらに人が集まる。


集まった人は働いて銭と(かて)を得て、


那古野の町に少しずつ銭を落とす。




さらに決定的なのが、弾正忠家が


『那古野から兵を集めない』と宣言していること。



無論……傭兵は集めるが、これによって


町衆は完全に戦場から離れることとなる。




それにより、さらに人が集まる。


戦を嫌がる者が(つど)い、更に那古野を栄えさせる。





誰もが銭を得ることが出来る。


誰もが富を成す機会を得る。



戦に出ることも巻き込まれることもなし。




『那古野の町は常春の如し』


この流れはもはや留めようがない。












おおよそ調査が終わったので、内容をまとめてから


"局"へ報告を上げに行く。





「おお、六兵衛さん。


ちょっと話が出来ないだろうか?」




ひととおり報告を出してから帰ろうとすると、


奥の方からひとりの恰幅(かっぷく)のいい商人に


呼び止められた。




了承の返事をして部屋の方へ案内される。


二人で座り込み、渡された白湯をすする。




「―――――さてと、


……では失礼して。」



商人が手拭いで顔をぬぐうと


()()()()()()()()が落ちる。



口の中に手を入れると、(ほほ)の中から綿(ワタ)を出した。



最後にキツく(まと)められていた髪を緩めると


引っ張られていた顔の緊張が取れて


目元の印象が変わる。








「――――――馬鹿な。」



不覚にも絶句する。


なんということだ。



まるで気が付かなかったとは。






「久しいな、鵜飼(うかい)どの。」




―――――――――いえ、よもやこちらも


ここで会うとは思いませんでした。






藤林(ふじばやし)さま。






何で市場調査の様子を描写しているのかと思いきや。



最後に"どんでん返しトラップ"を用意するのが


どうやら自分の作風らしい。





…………なお、展開がわからない方が居ましたら


『鵜飼 藤林 戦国時代』で検索してみて下さい。


絶対にわかります。




正直、かなりとんでもない事態が起きています。





マメ知識




『古着屋』



江戸時代においても、庶民の服は大体が古着屋。


古着屋といってもボロを売っているわけではない。



上層の人間が、着物を使い(つぶ)さずにすぐ売るから、


古着屋の業界はまだキレイな着物が結構に集まる。


これをリメイクしたりして売られる。



これを買った庶民はこれらを着潰すまで着る。


潰れた着物は浴衣から子供着を経て、


(傷んだ所を切るからだんだん小さくなっている)


最終的に手拭(てぬぐ)いなどへ。


どこまでも最後まで使い尽くす。




なんてサスティナブル。





『超高速建築による棟続きの家』




これは、


"パネル工法"を利用した"長屋"の建築。



長屋そのものは昔からある。


城の設備で"多聞櫓(たもんやぐら)"というのがあるが、


これが長屋であると共に防衛施設でもあった。



壁の数が減らせるために重宝される。




パネル工法は、戦国時代に転生・転移した主人公が


主に"中洲の真ん中に城を建てる話"で使われる。




ここの主人公は、そんなもの関係なしと


普通に内政で使っているが。



そもそもの事として、


"この逸話"が先の話すぎて待ってられない。





『良くわからない見せ物』




要は三大新芸能のどれか。


本人達の名誉のためにどれかは明言しませんが。


つまり、この話は1555年以降の話。


今までの話の中でも最も未来の話。





『那古野から兵を集めない』



明確な兵農分離の一環。


まずは抵抗のなさそうな、


一番受け入れやすい町衆から実行している。



当時としては"徴兵(募兵)されない"というのは


結構に画期的。経済が大幅に安定する。



また一部の村衆などが流入することになる。




『常春』



暑いわけでもなく寒いわけでもない、


常にふんわり暖かい様子をさすたとえ。


イメージ的に、"ユートピア"や"理想郷"など。



つまり、"現世の浄土"と言っているのに近い。


"彼"にとっては誰もが救われる町に見えた。





『顔に厚化粧、頬に綿』



古典的な"変装"の手段のひとつ。


腹の"恰幅"については、


綿の上から(さら)しを巻いている。





※"恰幅が良い"とは、


胴回りがちょっとメタボな事。


主に"金持ちで"メタボなことを指す。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ