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鵬、天を駈る  作者: 吉野
4章、『○○○○○○○』
67/248

第66話 ○○、○○



いや、滅法に長くなりました。


一般的には普通のサイズですが。



取りあえず、お楽しみ頂ければ幸いですね。


今回、伏せ字なのは


出してしまうと面白味が減りそうだからです。



………主観ですがね。








「何でオレを兵として雇おうとする?


他に声をかける者が居ると思うのだがね?」


その辺りがよく分からん。



何が目的だ?



まったく。









「さて、それについては私から話そう。」





その小僧が入って来ると"局"の気配が変わった。



反応は二つに分かれる。




特に反応を示さないもの。


もしくは、ガキが入ってくることに頭を捻る者。




もうひとつが、『身を固くする』者である。


危険だからではない。あるはずがない。




―――――――コイツが上位の存在だからだ。


少なくとも反応した連中にとっては。




『知っている』か『そうでない』かの違いだ。






…………こいつぁ、どこかの御曹司か。


しかも"局"にかなりの影響力が有るな。




「…………それで、何を教えてくれるんだ?


――――――坊?」




小さい体でのんびりと歩いてくるそいつを見ながら


(しゃ)に構えて言ってやる。



どこのお坊っちゃんか知らないが、


そんなもんに(ひる)んでなんぞやるものか。




「――――――ふぅむ?



…………言葉で語るのも野暮というものか。



ならば、"こいつ"で語ろうか。」



"のっし"と目の前に座り込むと、


先程まで遊んでいた碁盤と石を持ってくる。



碁笥(ごけ)の中に無造作に手を入れ、


白の石をひとつ取り出し(もてあそ)び始めた。




……………先手を譲ると?


――――――とことんなめやがって。



ああ、上等だ。



上手く乗せられてやるぜ。





「―――――――そういえば、


先程はずいぶん大きなことを言っていたな。



………ならば()えてこう返そうか。


『吾敢殺你!』…………とな。」




小僧にそんな風に()()()()()


………………………………へっ。


ま、せいぜい食い付いてやるさ。



―――――油断するなよ?






ぱしり、びしりと白と黒の軍勢が陣を巡って


相打ち競り合う音のみが響く。



ははっ、



戦は右へ左へ揺れ動き、


押し合い圧し合いしながら、時折に犠牲を払う。




ははははは、



有利に始まった筈の戦は、


ミシミシと各地で押し込められ、圧迫される。




おもしれえ、おもしれえぞ!



どこかで小僧と侮りが有ったのだろう。


連戦連勝で(おご)りもあったか?


バカな話だ。馬鹿なオレだ。



所詮は素人相手に(いき)がっていただけ。


強者に(まみ)えればこのザマだ。




"初心、忘るべからず"だ!


"勝って兜の緒を締めよ"だよ!!




盤から見上げて坊主を見る。


笑って目尻が下がっている筈なのに、


(やいば)のようなえらく剣呑な光を放つ(まなこ)


三日月の如くにつり上がった口の端。




―――――オレもこんな顔をしているのだろう。



久々に(たの)しくてならない。


……………最後まで喰いついてみせるさ。








―――――――ぱちり。



最後の黒の足掻きが終わる。




長かったか?


短かったか?



…………(ようや)く終わったと言うべきか。


―――もう、終わってしまったと言うべきか。




「案外に、諦めが悪いのだな。


最後まで打つとは思わなかったぞ?」



――――――自分でも驚いているさ。


思ったよりも往生際の悪い(たち)らしい。




ま、喰いついてやると言ったからな。


諦めて早々に終えるのが惜しかった、


―――――というのもある。





あーっ!


()けた()けた!



ここまでスッキリする程に負けたのは


ガキの頃以来だぜ。




―――痛い目を見せられたのはオレの方か。



………………で、"語った"結果とやらは?





()ずは、見物していた皆に聴いてみようか。



……我らがしつこい程にこの者を誘っていた理由、


―――――理解できましたか?」



はあ?


何でこいつらに?


何を言って…………



「まあ、あんなモノを魅せられたらな。」


「スゲエとは思っていたが…………」


「お前ら、何やってたか分かったか?」


「何が何やらサッパリわからん。


…………何となくわかったのは、


理解できん雲の上の方での(いくさ)だという事だけだ。」




――――――――おおう?



何かえらく集まっているな。


妙に評価が高いし………



途中から夢中に、必死になってたからなあ。


そんな事いわれてもな。




「少なくとも、お前さん以上に


お前さんのことを理解されたと言うことだな。」



カラカラと笑いながらそんな風に言われた。


なんだかなあ、


全然うれしくないぞ?



そんな感じにぼやいたら、皆に大笑いされた。










小部屋に案内され、白湯を渡される。


摘まみながら聞け、と香の物も。




皆に聴かせられないような話をするのか、


皆に聴かせられないオレの話をするのか。



―――――どっちだろうね。



目の前に坊主が座り込む。



「先ずは、キッパリ言っておこう。


…………少なくとも一度、


面と向かって言われた事があろうがな。



"お前さんは将兵として、大成できん。"」




―――――――胃の腑のあたりが、キシリと(ひず)む。



……もう、諦めきっていたと思っていたのだがな。


まだ、未練があったか。嫌になるな。





「―――――まあ、そう凹むな。


正直な所な、そのままでは埋没していただろう。



何せ、お前さんの才能は…………



 () () () () () ()



今のまま足軽なんぞやっている限り


未来永劫、絶対に開花出来ないのだよ。」




"先にくたばるからな"、と軽く追加された。






いや。


いやいや?


いやいやいや?!



 将 帥 ?


それって『全軍を率いる大将』だろ?!



何でそんなことに?!


混乱するオレを尻目に話は続く。




「実の話、"局"で囲碁をわざと流行らせたのは


お前さんみたいな頭の回転の良いのを探すためだ。



探していたんだがな………


仕事の達成割合と囲碁の勝敗の情報とをみた場合、


お前さんの異常性が浮かび上がってきた。」





……………異常性ぇ?



なんだそりゃ?


オレのどこがおかしいんだ?


そんなに異常なつもりはないぞ。




「そういう意味ではない。


お前さんがおかしいのは、


仕事の達成割合と囲碁の勝率が()()()()()


――――――――――と、言うことだ。」






そうは言うがな。


………………仕事や任務ってヤツは、


万全にやり遂げるのが当たり前だろ。



信用や銭にも関わるんだから。


世の中、出来ないでは済まねえのだから。




「―――――当たり前だな。


だがな、


本来はそういう当たり前が万全には出来んぞ。


()()()()()()()()()()()




――――詳しくは()かんし掘り下げる気もないが、


お前さんはどこぞの名門の武家の出だろう?」




………………何故(なぜ)、そのように?


オレにそんな素振りは見せなかった筈だがね?






「なんだかんだといって、お前さんには


"教養"の匂いがする。



余程に勉学に励んだのだろうだろうさ。


自覚の無いところでボロが出ているぞ。



決定的だったのは、『"演義"の"魏延"の(くだり)』だ。



ずいぶんと物語が気に入ったのだろうが、


アレはちょっと致命的だったな。」





―――――――……あぁー。


成程(なるほど)、それは確かに致命的だ。



思わず頭を抱えた。









「全く、どこの御高名な名家かは知らないが。


ずいぶんと深い井戸の中で暮らしていたのだな。



………目先の将兵の器に(とら)われて、


万人(ばんにん)の欲しがる将帥の器を見捨てるとは。



その見識のなさ、愚劣の極みだ。





………むしろ(かわず)の器ゆえに、無意識に(おそ)れたか?


――――――(みずち)の子を。」





ふふふ……と、おっそろしい顔・肝の冷える笑みで


()()の事をこれでもかと()き下ろされる。



――――とはいうものの、今さら何とも思わない。


(えん)が完全に切れてしまっているからな。




そういえば、実家のことを想うこともなくなった。


ははは、


もう完全に"他人事"か。




どうでもいいや。




「―――――さて?


将来的にどうするかね?


元の苗字を名乗り慌てさせるかね?


新しい苗字で、後々に度肝を抜かせるかね?」





いやいや?


勝手に事を進めないでくださいな?


何で雇われること前提なんですかねぇ?





誰も返事なんてしてないですよねえ?






「二度と無い好機を見逃せるかね?


このままでは先が無いことなど気付いているだろう?



……………それとも、


そのワクワクを抑えられるのかな?」




―――――うるせえな!



ニヤニヤするな!!


………………畜生めぇ。






村田 源三 貞宗は、


ほとんど戦をしない村井家の中では

例外的に高い将器をもつ武将です。


彼は村井家に仕えるまでは、

ゆくえも知れぬ流れ者だったといいます。

主に直に見いだされて後………

彼は終生変わらず、主に仕えます。


表に現れた彼の人生は華々しいものが多く、


確実に賊を捕えると有名な見廻り時代の前半生。

高名な、主と"局"での囲碁の名勝負。

将帥・軍師としての華麗な後半生。


その全てが講談や歌舞伎で有名です。


一説では、彼が名家の出であったと言われますが

定かではありません。


傾き者でもあったと言われ彼の人生は

華麗で勇壮、常に派手でありました。


その用兵、戦場に碁石を打つが如く。

『鬼士源三』の名は

今でも多くの人々に恐れられ、

また愛されています。




途中で切るとビミョーだったため、長文化。


本当にヒジョーに長くなった。




源三は、本来は世の中に出ることのなかった人物。


無名の人間が将まで達するのは限りなく不可能で、


(秀吉は例外中の例外。)


主人公がいなければ傭兵足軽として


名もなき戦場で朽ちていた。



史実でも存在していた可能性は微レ存。


武力は低いが統率と知力がかなり高いという、


名もなきモブキャラとしては明らかに


異常なまでのステータスをもつ。



ちなみに、どこの出身かは明かす予定はない。



…………三太といい、源三といい。


何で典型的な『ざまあ系主人公』になっているんだ?


そんな予定は全然無かったんだが………。



次のキャラは"ざまあ"でない筈です。


………………たぶん、おそらく。





マメ知識




『囲碁』



原型は古代中国からある。


ルールは日本式、大陸式など色々。


某"本因坊"なマンガで流行(はや)りに火がつく。



碁笥は、碁石を入れる入れ物。


碁石は黒が181・白が180あり、


原則として黒が先行。


囲碁では先行が絶対的に有利とされる。


そういう意味では、


主人公のやった煽りはかなりヒドイ。



なお作者は囲碁の技術がないので、


この名勝負の描写を描くことは不可能です。






『将兵として、大成できん。』




当時の武将は、基本的に最前線に出る。


そのため、源三は将兵の適性がない。



源三は本陣の最奥で指揮だけをするのがベスト。





『依頼達成率と囲碁の勝率が100%近い』



流れ者がこれを達成するのは


とんでもない高難易度となる。


知力が絶望的に足りないため。



そのため、ひどく目立った。




『演義の魏延の件』


三国志演義は元の時代に書かれた娯楽書。


(今の王朝、"明"は元の次のもの。)


その中に、


『誰敢殺我!


吾敢殺汝!』


という一説がある。



いわゆる魏延が孔明の死後に、


『わしを殺せるものはおるか!!』と三回言って


直後に馬岱に斬られたシーン。



このエピソードは漢の時代の三国志正史にはなく、


三国志演義のオリジナルエピソード(創作)。



しかも演義が日本に到来したのは、


結構に最近のことであるため、


このエピソードを知るためには


①三国志演義を取り寄せるだけの強い財力がある。


②当時の中国語が読めるだけの高い教養がある。


の両方を満たしてなければならない。



つまり、権勢のある名門の出身であることが


確定する。



源三が"武力がない"ために追放されたことを見ると、


武家の出身である筈、となる。



なお、わざと"中国語の原文"で確認をしたのは


源三が『転生者』かどうかを確認するため。


そうであった場合、原文のままでは逆にわからない。


中国語がわからず首をひねることとなる。



反応したため、違うことが分かる。





『深い井戸の中で暮らしていた名家』



"井の中の蛙大海を知らず"をもじっている。


大概にバカにしています。



蛟は、龍の成長過程のひとつ。


もしくは水龍系の龍神として扱われる。



カエルなら本能レベルでびびる相手。





『元の苗字、新しい苗字』



ざまあの典型のひとつ。



「元の苗字で実家の無能を(わら)うか?」


「新しい苗字で縁切りの事実を世に刻むか?」



よくある話。





『鬼士』



棋士をもじっている。


鬼の如く"この世のものとは思えない"ような、


恐るべき指し手……というニュアンス。

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