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鵬、天を駈る  作者: 吉野
4章、『○○○○○○○』
52/248

第51話 子供に、歩き旅は辛い

そういえば、第2話でグッタリと車酔いを


してましたね。



………………と、いうことは?




―――――さて?





行きがあるなら、帰りもあるわけで。



「…………………」


――――もう少し、スタミナをつけないとなぁ。





歩いてバテて


荷車に乗り酔って


背負われて凹み。



嗚呼、輪廻(りんね)の如くにぐるぐると。






少なくとも高レベルの移送システムを造らないと


ちょっと話にならない。



「………………………………」







輸送システムには、


技術レベルから順に


①人力輸送


②人力荷車


③馬への直載せ


④馬車輸送もしくは牛車


⑤鉄道馬車


⑥それ以降


――――――――となる。




………現在行われているのは①と③がメインだ。


①を人足(にんそく)の荷運びが、③を馬借(ばしゃく)が担当している。


②と④については日本の『坂道と山岳』


という問題により技術が発展していない。


荷車は坂道で効率が大幅に下がるから。


⑤については、レールを敷いてその上を馬車で


走らせる物だが今実行するとレールを盗難される


というダメすぎる結果となる。


⑥については、例えば蒸気機関。


これらは現行技術では実施不可能。


冶金やきん技術が足らなさすぎる。





――――①と③については多少の改善の余地あり。


②については大八車やリヤカーを開発すれば


近距離輸送の改善となる。


④はそもそも馬車輸送の技術がない。


大陸辺りから情報と技術の獲得が必要だ。


⑤以降は現行では論外。







…………ああ、大型の牛車(ぎっしゃ)の巡回輸送で


バスや都市内輸送の真似事程度は出来るな。


ルートを決めて専用道を造れば良い。





――――――そうか。


町中に輸送車両の専用道を造るなら


別にレールを敷いても何ら問題ない。


3頭立て位の大型鉄道牛車の巡回輸送システム、


考慮に入れてみるか。




そういう意味では多頭立て貨物牛車を那古野↔️熱田


などで巡回輸送させるのも一つの手か。


――――同然、当面の間は護衛が必要となるが。










「……………………(だる)い。」



思考に埋没しても疲れるものは疲れる。


―――――何とかしないとな。





クッション性能マシマシの私専用人力車でも


開発すれば良かったな。








――――――良さそうだな。



……………早速、開発チームを組ませるか。


多少なら、姫君や公家とかに需要も有るだろう。




……ふぅ。











――――はい?


平手さま、何ですか?



『そんなに嫌なら海路で来れば良かったのに?』





可能ならば、していましたよ?



ですが……まあ、


大規模行動の陣頭指揮を任せることが可能な人材が


まだまだ出揃っては居りませんので。




今回は"研修のリーダー"として、


同行せざるを得なかったわけです。




以後に期待と言うところですかね。











――――そういえば、


安祥への物資の移送に足軽たちを使わせて頂き、


ありがとう御座いました。








人足としての給金を出したので足軽たちは


臨時の収入に喜んだかとは思いますが、


あれで少しばかり行軍が遅れたかと思います。




お詫びしますね。


……………何らかの形で。













―――――――うん?


………どうした?






………ああ、もうすぐ刈谷の城か。


貴方達の班が向かうのですね?



水野の家は織田とも松平とも繋がっている


『準仮想敵地』に当たります。



とりあえずは付け届けを送っておけば


ひとまず表だっては問題は無いかと思いますが、


くれぐれも無謀は行わないように。





人間、早死にしても肥料にしかなりません。


土塊(つちくれ)になるよりも家族と自身の幸せの為、


生きて帰って更なる貢献を成しなさい。




端金(はしたがね)と貴方の笑顔、


どちらが家族が喜ぶか良く考えてみると良い。









―――――――― 結 構 。



では那古野なり熱田なりでまた会いましょう。


…………三兵衛どの?











……………彼等ですか?



村田の"調査員"です。


―――その地の土侍や国人達の了解を得た上で、


それぞれの地域の特産品を調査させています。




良い産物が見つかれば村田で買い取ると


触れ回っておりますので、村々も協力的ですよ?



彼等自身にもそういった知識や技能がありますので


適任なのですよ。






まあ、





も と も と 、 伊 賀 者 で す し 。












―――――――?



その様に驚くことですかね?


殿も含めて。




一度、調査依頼で外注として呼んでみたのですが



―――――危険がないならと、


ちょっとアホみたいな『安値』を提示してきたので






"お前達、自分の技能を舐めているのか?"




―――と、小半時ほど説教をした上で


"郷里からの円満な離脱"を絶対条件に




①準武家の村田と同格での召し抱え。


②基本は村田屋の店員扱い。


③店からの給金以外に一族郎党を月1000貫で雇う。



という条件を提示したところ、最終的に


三つの家が飛び付いてきたのには驚きましたが。







え?



何でそんな高額で?



………あのな、藤吉郎。




()()()()()()()()()()()()()()()()()()


それは当たり前だろうが。



そうしないから情報を横流しされたり


()()()()()()するんだぞ?









………引き入れた家ですか?



――――――――確か、


町井、下拓植(しもつげ)、城戸………の三家です。




ちょっとばかり()める気配が有りましたので


茶畑の再開発と街道の敷設(ふせつ)(ついで)に宿場町用に


7000貫ほど無償投資したらえらく喜ばれましたよ。




これからも定期的に投資して、伊賀を大きな


お茶の生産拠点の一つにしていきたいですね。




―――――そうそう、


伊賀には焼き物も有った。





 ――――― 何 だ 、



 下 手 な 金 山 よ り も


余 程 に 稼 げ る で は な い か 。






 () り 甲 斐 が あ る ね え 。






忍びなぞ、やっている(ひま)はないぞ?


もっと楽しく生きようや?








1550年頃から、


伊賀は急激な発展を遂げる。

織田弾正忠家の手により膨大な資金投入が

なされたためである。


山間部に存在する伊賀は長年に渡り、

極めて貧しい暮しを強いられた。

忍びと言う傭兵業に身を落とし、(さげす)まれながら

わずかな給金を(かて)に細々と生きてきたのである。


大規模な茶畑の整備に街道の舗装(ほそう)

水源の確保まで得た伊賀の暮しは一変した。


……後に彼等はこう語ったと言われる。


『永らく畜生の如くに生きてきた我等だが、

遂に(こうべ)を垂れるべき主に出会った。』


彼等は以後、織田弾正忠家の陰日向にて

仕える事となる。




"その様に驚くことですかね?"って、


普通、驚くわ!


何で当たり前みたいに


『NINJA』使ってるんだ!?



ナチュラルにえらいことをやらかす主人公。


時々、豪速球で危険球を投げてきます。





マメ知識




『人足』



いわゆる短期雇用労働者たち全般を指す。


荷運び・労役・普請などの公共工事その他、


これらで働く短期雇用は全て『人足』と呼ぶ。




『馬借』



こちらは馬による運送業。


近畿圏近くになるとこいつらが昔ながらの


利権を持っていてその保持のために土一揆を


起こすなどの武力闘争をやったりもする。





『付け届け』




お世話になる相手に"心ばかりの謝礼"をすること。


断じて賄賂ではない。


そのため、現代では額面に悩んでしまう。





『小半時』



今回は、"おおよそ半時"


いわゆる『小一時間』の説教。





『郷里からの円満な離脱』



伊賀の人間相手にこれをさせないと大変な事になる。


ヒント:忍者モノのドラマや漫画。





『月1000貫で雇う』



年収12億~18億円。


当時の忍びにこの待遇は破格どころか


正気を疑うレベル。


本人は"超一級の特殊工作員"を雇うなら


それこそ妥当だろう?


としか思っていない。





『伊賀』




禅宗の一つ、"臨済宗"の開祖である『栄西』は


大陸からわざわざ茶種を持って帰り、日本に


広めた。"茶祖"と呼ばれるほどのお茶好き。


その弟子の"明恵上人"が13世紀初頭にお茶の


産地候補に選んだのが宇治・大和・伊勢・駿河・


武蔵・そして伊賀。


伊賀はお茶の産地のハイブランドの一つである。



また、伊賀はかなり昔からの焼き物の産地の一つ。


土が焼き物に適しており、


土鍋から茶器まで多様に使える。



また、水源さえ確保出来ればいい酒もできる。




ただし、当時の伊賀は山間部で耕作地が少なく、


土地柄のために日照りの時にドキツイ不作に


悩まされる。



主人公の行いは、彼等にとっては救世のごとく。


末代まで恩に感じるレベル。



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