第5話 後始末、神無月は14日より
第3話の後の話になります。
短めです。
日は幾日か過ぎ、神無月は18日。
いまだに安祥に居たりする。
「世の中、始めるより終らせることが大事」
いや、全くその通り。あれから大変であった。
14日
あの日……御経を諳じ1刻(2時間)ほど
………日が白んでよりのち、
改めて三郎五朗様と合流して安祥の城に
意気揚々と凱旋。
天下に誇れるほどの大勝利にわいた城内は、
『いざ、飲めや!唄えや!!』
と手がつけられぬ程の大宴会・乱痴気騒ぎとなる。
次の日の明けるまで……
15日
さて………大騒ぎも一夜明け、
大人衆が二日酔に痛む頭を振りつつふと外を観ると
『まだ燃えとるやん』
さすがにダメだろうと手の空いた者が総出で
『山火事』の火消しにまわり、
燻るまでになったのがはや夕方。
後は再び燃え広がらぬよう監視を数人置いて、
それぞれが顔まで煤にまみれて
焼け出されたような有様でようやくに城に戻り。
ひとまず身を清めて、
『まだ呑むの?』
最近の安祥の織田勢は今川に押しに押されており、
近隣から今川の影を払ったのがそれほどまでに
嬉しかったのか?
二次会(?)を始める。
各々がひとり…またひとりと
酔い潰れ、次の日が明けてよりようやくに
後始末がはじまった。
16日
『汚ねえな』
まずは宴会で散らかった城内の片付。
寝潰れた連中が昼前にゴソゴソと起き出しては
動き出す。
食い物に盃、はては酔った末の粗相まで
城の中は散らかり放題。
安祥の大人衆が総出で仕舞いをする。
結局動き出しが遅く、夕方までかかり日を越す。
17日
『戦道具は大切にせねばな』
次は戦で荒れた武具や鎧兜の整備・修繕。
放ったらかしにした事をぶつくさと
ぼやき、ぼやかれながらごそごそと整備する。
結局、これで1日が潰える。
18日
『さて、政の時間ぞ』
やることは幾らでもある。
ひとつ、近隣の村衆・国衆への挨拶(物理)
ひとつ、敵対的な国衆・城主らへの調略
ひとつ、長らくの戦で放置されていた安祥の政
―――それから
さぁ、時間が幾らでも要るぞ!
どれから手をつけてくれよう。まずは挨拶か?
「………………………………………………………」
おう、小僧! そこに居たか!!
お主も手伝え!やることは山ほどあるぞ!
「……………………」
……………何だ?
言いたいことがあるなら言ってみるが良い!
「……………………終わりましたよ?……全部。」
「ゑ?」
第3話から話の重みがスコーンと軽くなりました。
………武士と言わず、当時の人間って
こんなもんなんですよね。一部の人間を除いて…
マメ知識
『ゐ』と『ゑ』
マメ知識登場2回目。
実はこの2つ、いわゆる『"わ"の行』の
『い』・『え』に相当する言葉。
『わ、ゐ、■、ゑ、を』となる。
※わ行の"う"は『さんずいのくずし字』に『于』。
字が出て来ない。
発音は、それぞれ『うぃ』と『うぇ』になる。
なお、や行にも対応する字があるがここでは
割愛する。