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鵬、天を駈る  作者: 吉野
3章、『○○○○○○○』
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第43話 ご老人と、……お茶?

予期せぬ来客の多い主人公。


今度はどなた?

「御免。」




その御仁が来たのは、確か7月の始めあたり


"仕込み"の期間も終わりが見え始め、


そろそろ暑さが気になり始める頃だった。


年の頃、およそ五十代後半。








よくよく苦労したのであろう。


髪は胡麻塩、黒よりも白いものが多く、



目尻や口元の笑みの(しわ)とともに


眉間(みけん)周りにも(しか)めた後の皺がある。




武家としての着物をキッチリと着こなし、


その上で小物に僅かな風情を飾り立てる。


洒落ている、と言うよりは『(いき)』な感じだ。




未だ歳を感じさせぬしっかりとした歩みで、


こちらに面会を願った。








―――――――らしい。


なにぶん、人伝(ひとづて)に聞いたことなので




よそに居たので知らないんだよ。










相手を待たせている部屋へと出向く。



()()()()()()()……ということは




『村田の主たる私』では無く、


『村井の家の一人』の私として


 会いに来た……………ということか。









「お待たせいたしました。


…急な訪れでしたので手間取ってしまった様で。」







出来れば先触は欲しかったですな?


貴方に分相応な準備をすることに


手間取ってしまいましたよ。



(ある)いはそろそろ来るのではないかとは


思ってはいたのですが、ね。







平手 五郎左衛門 さま。










平手 五郎左衛門 政秀




織田弾正忠家に仕える現在、齢58の老将。


どちらかと言うと外交畑の人間で


茶道や和歌に通じた文化人でもある。



天文12年には織田信秀の名代として上洛し、


朝廷に内裏築地修理料として


4000貫を献上するなど公家衆への伝手もある。





有名なのはこの人物が信長の傅役であったこと。


―――そして、約4年後に"腹を切る"ことである。














「―――これは、茶では無いのだな。」






座り込んで茶碗を手にしたまま、


――――――物珍しそうに平手様が言われる。








最近では評価を高めるためにあちこちで


"柿の葉茶"を出している。




茶や食物は長く口にして効果が解るものであるため


飲んだ者に自覚は無いだろうが、



健康にも良いので


"良く分からない茶の一種"という評判を


変えるために日夜努力しておるのですよ。









茶よりも安価で、好評?発売中です。












一方で"タンポポ茶"も作ってみたのだが


なんせ『健康』というのは理解されづらい。




まずは店の者から評価を取っている段階だ。


長期データが必要になってくるため、


時間がかかってしまっている。



こちらは柿の葉っぱよりも手近に得られるから


流通以上に原料の秘匿が大変だったりする。


―――まだまだ、先の心配だが。









茶を出さない理由は、流通が薄すぎて


品物の確保が面倒だからですよ。






何せ今の世の中


米、米……米さらに米。


戦略物資として米ばかりを優先するせいで


嗜好品の類がすぐに品薄になる。



ホント世の中が貧しい証拠だ。


…………つまらないことよ。








商業規模と周辺地域が安定してゆけば、


その辺りも改善するつもりだがな。












そもそも、あの()()()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()


今のこんな苦労をしなくても済んだのだ。






そもそも駿府の町はなかなか優秀な


交易相手なのに、今では全面敵対に近い状況だ。



対今川で共栄戦略を放棄せざるを得ないのは、


世俗に染まり執拗(しつよう)に織田を乱す








あ の 極 道 坊 主 の せ い だ 。




――――坊 主 が 殺 生 を す る な よ !











  絶   許  。



坊主ならば悪業でなく功徳(くどく)を積みやがれ。












コホン、


失礼。取り乱したか?











「それで、平手様。


若君………三郎さまのお話


――――――ということでよろしかったですか?」










このクソ微妙な時期に死に逃げなぞ





 許  す  も  の  か  。



なんで、柿の葉茶とタンポポ茶の


セールストークをしてるのやら?


主人公?


そして、1章で『雪斎つぶし』


をした理由が語られる。





マメ知識




『仕込み』



第1章のタイムスケジュールを思い出して下さい。


ヒントは"秘薬"



『柿の葉茶』



今更な説明。


ビタミン、ミネラル、ポリフェノール。


現代でもてはやされている物質がそろい踏み。


しかもお茶のはずなのにノンカフェイン。


そう考えるとスゴいでしょ?


ヘタなサプリメントより優秀。





『タンポポ茶』


蒲公英(たんぽぽ)の根っこを(せん)じたもの。


そもそも漢方薬の一種で、


こちらはポリフェノールのかわりに


鉄分があるために女性への効能が高いとされる。


むくみや冷え性などに効くそうですよ。


あと便秘にも。


乾燥や焙煎などを変えることで、


『コーヒーみたいなもの』に変わる。


(タンポポコーヒーのこと。成分は同じ。)





『茶の流通をなんとかする』



尾張・名古屋の近隣で、


茶の生産地と言えば?





『絶許』



絶(対に)(さん)


以上。



主人公的には坊主が殺生系の策謀を練ることが


心底に気にいらない。


仏道に反しているなんてものではない。


罰当たりの極みだ。




※殺生は当然、仏道で厳禁です。


むしろ最大の禁忌のひとつ。




そもそも、なんでこいつ仏門に入ったんだ?


いっそ還俗(げんぞく)して坊主やめろよ。



極 道 坊 主 よばわりはそのため。

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[気になる点] 還俗は「げんぞく」と読みます
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