第32話 うつけ、襲来
いつも通りのショートサイズ。
ここで一区切りをつけます。
さて、
皆々様に御挨拶を
此方に御座すは
尾張は弾正忠が家の、嫡子
織田 三郎 信長 様に候。
そう、
かの有名な…………
戦 国 D Q N の ひ と り 、
『 尾 張 の う つ け 』 だ。
――――――やれやれ、
『考えを顔に出すな』
………と常日頃から言っているのに
『ナニ?こいつ?』
………という考えが丸見えだぞ?
―――――藤吉郎。
ナニと言われると、
お前がこことは異なる世界線で、
イヌのように付き従う殿様だ。
今のお前さんには理解出来ないだろうがな。
「さて……
突然のご訪問ですので、
大したもてなしはできませんが………」
……………とりあえず、
『今のこの御仁』と『今の藤吉郎』とは
深刻なレベルで相性が悪そうなので、
藤吉郎くんにはひとまず柿の葉茶と
軽く摘まむ物でも人数分持ってきてもらう。
コイツ、
アポも許可も取らずにに乱入してきたくせに、
何処の武家のクソジャリどもを
供回りとして六人ほど引き連れて来やがった。
引き連れるのなら、主の責任として
マトモな格好をさせるのならともかく
………お前ら、下手したら
その辺の牢人より酷いぞ?
何だ?
その山奥の地侍丸出しの格好は。
どこの山賊だ?
――――――――あー……、そうか。
コイツら、まさかとは思うが………
暴力と織田の権威を使って
強盗ギリギリの恐喝で商人たちから
金を巻き上げておるのではあるまいな?
もしそうだとしたら、
こちらも扱いを考えるぞ?
このデタラメっぷりに藤吉郎の機嫌は急降下。
一応笑ってはいるものの、
コメカミがピキピキし始めたので
さっさと追い出した。
ダメだこいつら…………
はやくなんとかしないと、
「それで、
どの様なご用で?」
いちいちこの程度で気配を乱すなよ、
側仕えども。
程度が知れるぞ?
全く…………
めんどくせぇな。
手下の躾くらいはしてくださいよ?
若 君 ?
「ふむ、
どこぞで聞いたウワサでな……
村井家の『数寄者』が何やら
商人のマネゴトをしておるときいたのでな?
見物に来たのよ。」
織田の家の三郎さまが、上座で片膝立てに座って
面白そうな顔でこちらを見る。
ソーデスカ。
「いえいえ、商いをしておるのはあくまで
分家の村田でございます。
私は本家の誼でお邪魔しておるだけですよ。」
―――――――いや……
見た目がアレ過ぎで騙されそうだが、
コイツ……子供みたいに好奇心で目が
キラッキラしてるぞ?
まるで遊園地に初めて連れてこられた
コドモみたいだ。
そういえばココは、
『大手総合商社』が計画立案・建造した、
『大規模総合物流ターミナル』に隣接した
『大型ショッピングモール』と
『大型卸売市場』の併合施設。
この時代には類のない
――――それどころかその全てが
『概念すらもない』という、
『超大型複合商業施設』であるから―――な。
…………まあ、
『そのつもり』で来たものの………
目新しいモノに心を奪われて、
ワクワクがとまらないのかもな。
………後ろのクソジャリ共との温度差を見る限り。
実際、『この時点』での信長は
ただの荒くれヤンキー御曹司。
主人公は現在の彼を評価する気もない。
そして商売・内政特化型に育成中の藤吉郎くん、
実は『今の』彼らとの相性はほぼ最悪。
マメ知識
『DQN』
いわゆる"ドキュン"。
以前あったテレビ番組『目撃!ドキュン』
が語源……らしい。
見たことないので知らないが。
見た目が『派手で空気読まない』格好をして、
行動が『非常識で軽薄な』行いをする者のこと。
要は『見た目も行動も迷惑な人々』の事を
示すことが多い。
余り縁のない言葉なので何とも言えない。
『藤吉郎には理解出来ない。』
藤吉郎が信長に仕えたのは平行世界のこと。
彼らの関係エピソードも、
そこに至るまでの鬱屈した日々もないため
二人の関係性はゼロ。
しかも今の藤吉郎は文官特化型、
つまり『石田三成』に近い思考パターンに
なりつつあるため、
『福島正則』型の彼らとの第一印象は
……かなり悪い。
『牢人』
簡単に言うと
『武装したフリーターや浮浪者』。
こいつらがいわゆる『織田の傭兵』の正体。
戦時には役に立つが、
平時にはクソ迷惑になる。
後に、『浪人』と呼び方が変わる。
………聞いたイメージが悪いからだろうな。
『地侍』
こちらは武装した土豪。
もしくは武装した村長。
たいていは小さな村々の有力者で、
国人や武将が兵の供出(有料)を願い出る相手。
こちらが『一般的な農民足軽』となる。




